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ニュージーランド、エストニア軍の主力アサルトライフル「MARS-L」とは?

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2021年現在、日本の陸上自衛隊の主力小銃と言えば1989年に正式採用された89式5.56mm小銃だが、これ以前の64式小銃と同様に国内の豊和工業が製造している小銃を採用している。一応日本の場合は国内での銃火器の製造技術・能力の維持のため、敢えて国外の小銃を正式採用とせず、これを自国産で賄うことで万が一の場合のリスクを担保している側面もあると言える。

しかし日本よりも遙かに人口規模の小さい国々ではこうした自国内での銃火器の製造が困難なケースも多く、今回取り上げるニュージーランドやエストニアも正にそうした小国のひとつである。
このオセアニアに位置するニュージーランドと、ヨーロッパのバルト3国の1国であるエストニアとは、小国で且つ近年採用した小銃とが同じアメリカ・ LMT社製のMARS-Lと言う点が共通している。

目次

銃火器及びその周辺機器を製造するアメリカのLMT社とは

日本では聞き馴染みの薄い感もあるLMT社とは、1980年にアメリカのアイオワ州エルドリッジに設立された軍事用の銃火器とその周辺機器を製造している、謂わば比較的新しい軍需関連企業である。
LMT社とは創業者であるカール・ルイス氏の名を冠したルイス・マシン&ツール・カンパニーの略称で、アメリカ軍向けにM4カービン・AR15系のコピー小銃やその備品のM203グレネード・ランチャー開発に端を発する。

M4カービン・AR15系小銃を元とするその発展・改良型と言えばドイツH&K社のHK416がつとに良く知られているが、LMT社ではモノリシック・レール・プラットフォームと呼ばれる特許技術を有している。
これは小銃本体の基幹部であるレシーバーやレール、ハンドガード等を1枚のアルミニュウムから削り出して成型する手法であり、堅牢性・メンテナンス性の向上と銃身交換の容易さを兼ね備えたものだ。

こうした特徴からLMT社の小銃は本国であるアメリカを始めイギリス、そして今回紹介するニュージーランドやエストニアで採用されており、オリジナルを上回る強度が評価されたともと言えるだろう。

LMT社の小銃・MARS-Lの特徴

前述のようにLMT社は同社の代名詞的な製造方法で且つ特許も取得しているモノリシック・レール・プラットフォームを用いて、機構的にはM4カービン・AR15系のコピー小銃・MARS-Lを完成させた。
この構造によりMARS-Lは高い堅牢性を保持しつつも、レシーバー部の僅か2本のボルトで銃身は固定されており、これを外し銃身を回転させるだけでその交換作業が現場で行える特性を備えている。

これによって10.5インチ~20インチまでの全14種類に上る複数の口径に対応した銃身の交換が可能であり、現代の銃火器でよくみられるモジュラー性による多用途対応を実現したものとなっている。
無論、近代の小銃にとって必須の拡張性であるスコープやレーザー等の聞きの取り付けにも対応しており、これらの装備装着による重量の増加や負荷にも高い強度が確保されている。

そもそもMARS-Lとは「Modular Ambidextrous Rifle System」の頭文字の力略称であり、Lは「Light」となり、先のモジュラー式と左右どちらが利き手でも対応可能な仕様を表わしている。
MARS-の仕様は、口径5.56mm、重量3.22kg(マガジン空時)、全長914mm、銃身長406mm(16インチ時)、弾丸5.56x45mm弾、装弾数30発が標準となっている

ニュージーランド軍におけるLMT社のMARS-L

ニュージーランド軍では、2015年8月にMARS-Lの正式採用を決定し、総数で凡そ9,000丁、金額にして凡そ5,900万ドル(63億円・1丁あたり約70,000円)で調達する契約を締結した。
従来ニュージーランド軍はこのMARS-L以前には、オーストラリア製のステアーAUGを正式小銃としていたが、ブルパップ方式で強化樹脂を取り入れ一世を風靡した同銃を退けた形となった。

ニュージーランドの陸軍は総員約4,500名前後で、2個大隊と一部の特殊部隊が存在しており、凡そ9,000丁のMARS-Lで兵員全体に配備が行き渡る数だと言える。

エストニア軍におけるLMT社のMARS-L

エストニア軍では、2019年5月にMARS-Lの正式採用を決定し、総数で凡そ18,000丁、金額にして凡そ7,500万ユーロ(98億円・1丁あたり約55,000円)で調達する契約を締結した。
従来エストニア軍はこのMARS-L以前には、スウェーデン製のAk4およびイスラエル製のIMIガリルを正式小銃としていたが、前者がドイツH&K G3、後者はロシアのAKシリーズの系譜の小銃だった。

エストニア軍は陸・海・空の3軍による国防軍約6,000名前後と民間の防衛連盟約26,000名を有しており、凡そ18,000丁のMARS-Lならば国防軍全てに行き渡る事が予想される。
因みにエストニア軍ではMARS-Lを自軍の正式名としてR20Raheと呼称しており、通常の5.56mm口径以外にも7.62mm口径の採用も実施、2022年迄に全ての小銃を置き換える予定で進められている。

LMT社のMARS-Lの評価と感想

LMT社のMARS-Lは、数多くのM4カービン・AR15系コピー小銃が市場に溢れる中で、モノリシック・レール・プラットフォームと呼ぶ特許技術による堅牢性とモジュラー構造が特徴である。
MARS-Lを主力小銃として採用した軍隊は未だニュージーランド及びエストニア等の少数の国に留まるが、両国ともM4カービン・AR15系以外の主力小銃からの代替であり先見性が見て取れる。

公表されている調達価格から1丁あたりの金額を見た場合、ニュージーランドが約70,000円、エストニアが約55,000円だが、実は日本の89式5.56mm小銃は約30~40万円前後と高額である。
いざと言う状況に備えて可能であれば自国内での兵器製造を行うべきかは悩ましいところだが、コスト的・性能的にもLMT社のMARS-Lは優れた小銃だと見て間違い無いだろう。

eyecatch source:Estonian Defence Forces, Public domain, via Wikimedia Commons

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