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各国の人魚伝説から読み取る伝承や特色の考察

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日本に伝わる民間伝承に登場する存在が、海外各国の伝承にも同じまたは類似した存在が登場する・・・というケースは探せば結構多い。
そういった存在達の類似点や相違点を見ていくと中々に興味深いものが見えるので興味の赴くままに調べるのだが、今回はその中から『人魚』に焦点を当て、各国の伝承の中の人魚が持つ類似点と相違点を整理・比較していく。

目次

人魚とは

前提として各国各地での目撃情報などを加味した『人魚=ジュゴンなどの海洋生物説』も念頭に置きながら伝承上の人魚像を見ていく。一般的に『人魚』と聞くと身体の魚の下半身をもつ女性のイメージが先行するだろうが、認識は大体合っている。

厳密には『半魚人』という「(比率は任意として)身体の一部が魚の人間」という存在のうち、下半身が魚で上半身が人間の存在を人魚と呼ぶようだ。日本語だと人魚は性別問わず人魚表記だが、海外では女性の人魚を『マーメイド』と呼ぶのに対し男性の人魚は『マーマン』と呼ぶ。

魚の胴体に人間の手足が生えているパターンも含む半魚人という括りで比較していくのも面白かったのだが、今回は身体の下部分が魚・上部分が人間の人魚に分類される存在に絞り、まとめていく。

欧州の伝承 人魚伝説

後世の創作作品に登場する人魚はヨーロッパの伝承に基づいたフォルムをしたものが多い。
1836年に発行されたハンス・クリスチャン・アンデルセン著の童話『人魚姫』もその1つで、作中の人魚は陸にいる好いた男の為に美しい歌声と引き換えに魚の下半身を人間の足にする健気な一面を持つのだが、伝承の中の人魚は美しい歌声を持ち船乗りたちを魅了し海に引きずりこんでしまう、海にまつわる脅威の象徴として捉えられている。

この印象は西欧に伝わる同じく歌声で人間を惑わす海の怪異『セイレーン』のイメージも混ざっているといわれる。セイレーンは元々は半人半鳥の姿で描かれていたが、中世を過ぎた頃には下半身は魚の姿で定着している。美しく蠱惑的、しかし迂闊に魅了されてはならず畏怖の念を忘れてはいけない。現地の船乗りたちにとっては人魚はそんな存在であるといえる。

アジアの人魚とは

アジア大陸の人魚の伝承の中の姿は欧州に伝わるものと共通している。厳密には、半身というよりは顔面が人間のソレという人面魚として描かれていたが、18世紀の後半…江戸時代の終盤辺りに諸外国の人魚の『下半身が魚で上半身が人』のイメージが伝わり定着したようだ。

人魚という存在がもたらす兆しが良いものか悪いものかは地方によって分かれているが、中国や日本といった地方だと人魚は『不老不死の妙薬の元』として記されている場合もある。日本でも、八尾比丘尼(やおびくに)伝説といえばピンとくる者もいるかもしれない。これらは人間の肝から作る万能薬や不老不死の仙人になるための薬である仙薬にまつわる文献が残る大陸ならではの要素ともいえる。

疫病の流行を予言し自身の似顔絵を描いて広めろと言ってまわった『アマビエ』は昨今でも注目を集めたので聞き覚えがある者もいるかもしれない。このように、日本や周辺諸国では人魚は未来予知をする『予言獣』としての一面も持つ。

アフリカや中南米の人魚

日本や欧州だけでなく、アフリカや中南米地方にも人魚伝説は伝わっている。ブラジルの『イアーラ』は海ではなく河川に住む人魚で男の船乗りを誘惑し水底に引きずり込む。ジャマイカの『リバーマンマ』は全ての魚の母で、乱暴をしたりぞんざいに扱うと引きずり込まれたり川が干上がってしまう。
アフリカの人魚は魔法に似た不思議な力を持っていて、人間の男と所帯を持ち魔法で夫を裕福にするが、正体がバラされると家を去り、魔法も解けて夫の家は没落したという民話も残っている。

世界随所に伝わる人魚伝説

昨今では創作作品の全国公開の影響もあり、各国の人魚の姿かたちのイメージはアンデルセン童話の人魚のソレにほぼ統一されている。しかし細かいディテールや住んでいる場所などは各地域の土地やその地に伝わる神の特色を、人魚が持つ力や特徴は各地域に伝わる伝承や文化の特色を汲んでいることがわかる。

ではこの特色ごとに地域を分類した時・・・例えば人魚を幸運の象徴とする地域と不幸の前兆とする地域に分けた時、それぞれの地域の文化や慣習に共通する項目はあるのか。
ここで紹介されなかった地域には人魚はいるのか、いるとすればどんな特色を持っているのか、あるいはいなければその理由は何か。この紙面で浅層を知り、次の段階に興味を抱けたならぜひ更に深く調べてみて欲しい。

※画像はイメージです。

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