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山麓の村落、身体が欠けた地蔵をすべて巡ると祟りが起きる「七体の欠け地蔵」

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私は北陸の集落で生まれ育ちました。
その村には七体の地蔵が存在し、決まった順番で全てを回ると何か恐ろしい事が起きると信じられていました。しかしどんなに大人にせがんでも具体的な内容は教えてもらえません。そして小4の夏休み、肝試しを兼ねて友人たちと地蔵を全部巡ることになりました。

ちなみに決まった順番とは逆時計回りです。

目次

壱の地蔵

まずは一体目の地蔵です。この地蔵は集落の東の外れに位置し、七体の中で最も小柄でした。他の特徴は右目が潰れていることです。地蔵の右目はごっそり抉られて、もとは安らかな顔立ちが凄惨な形相に変化しています。
地蔵の祠にはビー玉やガラスの破片、おはじきなど、何故かきらきら光る透明なものがたくさん供えられていました。

弐の地蔵

二体目の地蔵は一体目よりひと回り大きく左目が抉れており、さらに凄惨な形相をしています。
こちらの祠にもビー玉やおはじきがお供えされていました。

参の地蔵

三体目は右腕がない地蔵です。私たちが祠に赴くと先客の老婆がおり、地蔵のもげた腕の付け根を一心にさすっていました。何をしているのか聞くと「厄を被ってもらってるんじゃ」と答え、毛糸の手袋を置いて帰っていきました。後から確かめた所右手用の手袋でした。

肆の地蔵

四体目の地蔵は左腕を消失しています。七地蔵は一からひと回りごと大きくなっていき、表情も恐ろしく歪んでいきます。「こんなおっかない顔だっけ?」と疑問を呈す友人に、私は静かに首を振りました。

何を馬鹿なと言われるかもしれませんが、逆時計回りにお参りを始めてから地蔵の顔は明らかな変貌を遂げ始めたのです。私が見慣れた七地蔵はもっと穏やかで親しみやすい顔をしていました。地蔵の足元には左手用の手袋や軍手が供えられています。

伍の地蔵

何故肆の地蔵で引き返さなかったのか悔やんでも後の祭りです。子ども特有の見栄の張り合いで、内心怯えきっていても逃げ帰れなかったというのが正直な所です。伍の地蔵は右足を削られていました。この地蔵の祠には靴や足袋が捧げられています。

陸の地蔵

六体目の地蔵には左足がありません。
七地蔵のうち、五体満足な地蔵は一体もないのです。「なんでみんな身体のどこかが欠けてるんだろうな?」「さあ……」一様に首を傾げるしかない私達。この祠には左足用の靴や足袋が供えられていました。

漆の地蔵

そして最後、七体目の地蔵です。この地蔵は最も体長が大きく五歳児と同寸大でした。削られているのは両目と両手足、無傷な部位の方が少ない有様です。さらには石の表面が夥しいキズで覆われており、なかなかどうして迫力がありました。七体全てを逆時計回りに制覇した私達は、村の禁忌を犯した後ろめたさに震え上がりました。すると漆の地蔵がコトコト、とかすかに動いたのです。

「いってえ!」
「なんだ、急に腕が痺れて……」
「足が石みてえに固くなった!」
「痛いよぉお母さん!」

次の瞬間、友人たちがその場に崩れ落ちました。皆それぞれ右腕や左腕、右足や左足、右目や左目を押さえて悶絶しています。激しい苦痛を訴える友人たちの真ん中で、ただ一人霊障が起きてない私は立ち尽くしました。友人たちは全部で6人、私が7人目です。最後に残った私は一体何を持っていかれるというのでしょうか?

「うわあああああ!」

気も狂いそうな恐怖に駆り立てられ、卑劣にも友人たちを見捨てて逃げ出した私の前に車が突っ込んできました。刹那視界は白い光に包まれ、目が覚めた時には全治3か月の重態で入院していました。両親の話では田舎道を猛スピードで走行していた車に轢かれたそうです。

欠け地蔵の正体とは

その後多少手足が痺れる後遺症が残ったものの無事退院し、私は大人になりました。故郷を出て働くようになってからは、子供の頃の恐ろしい体験を思い出す機会もめっきり減りました。幸い肝試しに参加した友人たちも回復したそうです。
20年以上経ったある日、故郷の母と電話中にあの七地蔵の話がでました。村に新しい道路を敷く計画が立ち上がり、地蔵を移そうとした業者が祟りに遭ったというのです。

母曰く、あの地蔵は村人の厄災を肩代わりしてくれるのだそうです。各地蔵の部位が欠損しているのは村人たちが厄を移しに来たからです。故に目がない地蔵には目玉の代わりとなる光り物を、手がない地蔵には手袋を、足がない地蔵には足袋を捧げてきました。

しかし地蔵が吸い取れる厄にも限界があります。長い間村人が負うべき障りを被ってきた地蔵たちには恨みが蓄積し、顔は苦痛に歪み始めます。
私たちが肝試し気分で行った逆時計回りは呪術的な儀式であり、地蔵を挑発する愚かな行為だったのだろうと反省しています。

※画像はイメージです。

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