私は九州のとある田舎で育ったのですが、その田舎のごく一部に伝わる話です。
怖いもぐらじいさん
聞き分けの無い子供に言うことを聞かせるために「〇〇がやってくるよ」と、実在しないモンスターの名前を言って脅したりしますが、私の田舎ではそれが「もぐらじいさん」でした。
実際には違う呼び名になっていますが、特定を避けるため仮の名前で表記します。
私が小学生だった昭和50年代の頃、よく母から「もぐらじい さんが来るから早く勉強しなさい。」などと言われたものでした。
「もぐらじいさん」と聞けば可愛らしい感じがしますが、実際には
- 地面の下や床下に潜んでいて、みんなが寝静まった頃に上に這い出てくる。
- 見た目は小柄で、土に汚れ真っ黒。眼だけがギラギラと光っている。
- 夜道に出会うと奇声を上げながら追いかけてくる。
- 背中にカゴを背負っていて中に鎌が入っている。その鎌で人の耳を切り取って食べる。
などと恐ろしい話を聞かされており、子供は例外なく震えあがっていたものでした。
もぐらじいさんは実在した?
小学生の頃、帰り道の山間の道を一人で歩いて帰らねばならず、よく母に「もぐらじいさんは出ない?」と聞いたものでしたが、母は笑って取り合いませんでした。
実際(というかもちろん)田舎にいる間にもぐらじいさんに遭遇することは無く、成長するにしたがって次第に忘れていきました。
ところが、ある年に田舎に里帰りをし、田舎の役場に勤める旧友と飲みに出かけた時、ひょんなことからこの「もぐらじいさん」の話になり、友達は「もぐらじいさんは実在した」というのです。
私はがぜん興味がわいてきて、友達に詳しく聞いてみると、まだ我々が生まれる前の昭和40年代、ある事件がきっかけだったというのです。
もぐらじいさんの話
当時、山の上に地主が住んでいました。
その地主に待望の子供が出来て、子供はすくすく成長していったのですが、その子は知的障害であったのです。
田舎のことゆえ、当時はその対応に困り、地主はその子を家に閉じ込めてしまいます。
その子は成人に近づくにつれ、奇声や暴れ方が激しくなり、ある日ついに床下を掘って脱走してしまう。
脱走したその子は、近くで農作業をしていた人に近づき、近くにあった鎌で襲いかかり耳を切り取り、それを咥えながらまた駆け出した。
その集落では恐慌状態に陥り、逃げるもの、戸締りするもの様々だったらしいが、その後、その子の姿を見たものは無いという。警察に捕まり、病院に入れられたのではないか?という話がでたが、それも定かではないらしい。
本当なのか?
あまりの内容に作り話ではないかと疑い、友人に「本当かよ?」と問いかけました。
すると友人は焼酎をちびちび飲みながら答えました。
「多分本当だよ。うちの集落で起きた事件だからね。」
それ以上詳しく聞けず、背中からゾッとした話でした。
思った事を何でも!ネガティブOK!