容疑者候補は本当に真犯人か?室蘭女子高生失踪事件

春を待つ北海道で美人と評判の女子高生が忽然と姿を消した。
電話の通信記録、防犯カメラの映像に目撃情報、PHSの位置情報などといった手がかりは多数あり、有力な容疑者も存在するものの、今なお事件は解決していない。
本当にこの有力な容疑者は犯人なのであろうか。
もしかしたら真犯人がこの容疑者に囚われる私たちを嘲笑っているのかもしれない。

目次

事件の概要

2001年3月6日、北海道室蘭市で高校1年生(当時)の千田麻未さんがアルバイト先へ向かう途中行方不明になる事件が発生した。

千田さんは、室蘭栄高校という市内トップ、北海道内でも有数の進学校に通っており、成績は学年トップクラス、容姿端麗で校内にファンクラブがあるほどの美少女であったという。
彼女に身に何が起こったのか、まずは事件当日の千田さんの足取りについて確認したい。

事件当日の足取り(自宅から室蘭サティ)

2001年3月6日は、公立高校の入試日であったため、学校は休みだった。
千田さんはその休みを利用し、当時アルバイトしていたパン屋の本店で、店のオーナーからコーヒーの淹れ方を習うため、同日11:30頃に電話でアポイントをとり、自宅を出発した。

約束の時間は午後1時過ぎ。
自宅を出た時の服装は、制服ではなく、ジーンズにベージュのブレザーを羽織り、バーバリーのマフラーを身に付けていたという。
なお、普段彼女は自宅がある白鳥台というエリアにあるパン屋支店であったが、この日の講習は同市内、中島町にある本店で行われることになっていた。

彼女は自宅を出てパン屋本店へと向かうべく、12:25頃、自宅そばのバス停、「白鳥台中央」から「東町ターミナル」行きのバスに乗り込む。
この時、偶然彼女を見かけた友人によれば、千田さんはバスの後部座席から手を振ってくれたという。
しかし、なぜかここから千田さんは不可解な動きを見せる。

12:56、千田さんを乗せたバスは講習先のパン屋本店の最寄りである「東通」のバス停に到着。
無事、電話で約束した13時過ぎより前にバスは到着した。しかし、なぜか千田さんはこのバス停で下車することはなかった。
千田さんが下車したのは、東通のバス停がある場所からJR室蘭本線の線路を挟んだ反対側にある「東町2丁目」といバス停だった。

その後、バス停横にある室蘭サティ(現イオン)に立ち寄る。
少なくとも13:04から13:26までの間、室蘭サティ内の化粧品売り場を歩いている姿が店の防犯カメラに記録されていた。
カメラの映像の中の千田さんは、なにか目当ての買い物があるというよりかは、ぶらぶらとウインドウショッピングを楽しんでいるという雰囲気だった。

その後、千田さんの同級生の男子生徒2人が室蘭サティから出てきた彼女を道路越しに見かけている。
同級生2人は、千田さんから「どこに行くの?」と声を掛けられ、挨拶程度の会話を交わしたようだ。

事件当日の足取り(室蘭サティから東通バス停)

千田さんの足取りについて、目撃情報などから本人の無事が確認できているのはここまでだ。
同級生らに目撃された後、千田さんは下車した時と同じ「東町2丁目」バス停を13:31に発車する「中央町・工大循環線(外回り)」のバスに乗り、本来の目的地であったはずのパン屋本店の最寄りである「東通」のバス停で13:41頃に下車したと推測されている。

「推測」としたとおり、千田さんが本当にこのバスに乗車したか定かではない。
千田さんを見かけ、挨拶したという同級生も彼女がバスに乗ったかどうかまでは見ていない。
乗車したと考えられている13:31発のバスに乗っていた23人の乗客達や乗務員も千田さんが乗っていたかどうか記憶にないというのだ。
しかし、バス会社と警察が調べたところ、乗客の中で通学定期券を利用し乗車した人間が1人いる。

その1人が名乗り出ないことから、彼女が13:31発のバスに乗ったのであろうと考えられている。
13:42、千田さんの交際相手から彼女のPHSに電話がかかってきた。
この時のPHSのアンテナ中継場所が「東通」バス停付近だったことも、千田さんがバスに再度乗ってパン屋本店そばまで来ていたという推測を裏付けている。

千田さんは電話に出た際、交際相手に「今、下に着いたよ」と話したという。
その後、13:46頃、再び交際相手が千田さんに電話をかけると、「今話せないから、後でかけ直すね」と言い、電話を切った。

この2度目の電話の際、交際相手は「(千田さんが)室内にいるような気がした」と証言しており、特に電話口から不審な様子は感じられなかった模様だ。
しかし、この電話を最後に、千田さんのPHSは不通となってしまう。
コーヒーの淹れ方を教えてもらう予定だったパン屋本店に現れることもなかった。
こうして千田さんは白昼、忽然とその姿を消したのだ。

警察の捜索と限りなく怪しい容疑者

その後、家を出たきり戻らない娘を心配した家族が警察に通報し、捜索が開始された。
早々に警察が目を付けたのが、千田さんが会いに行くはずであったアルバイト先のパン屋本店のオーナーだ。
失踪翌日、3月7日の朝、警察はオーナー宅を訪れ、事情を聞き、自宅内の捜索も行っている。
後にオーナー本人もテレビ局の取材に対し、警察が事件翌朝に来たことを認めた。

警察による事情聴取に対しオーナーは、
「千田さんが13時過ぎに来ると思い、13:30まで店で待っていたが、来なかったので外に出た。その後、15時に自宅に帰った」
「(自宅に戻った後は)具合が悪く、寝ていた。その際、目の前にはずっと母親がいた」と証言したそうだ。

また、オーナーの発言によれば、聴取が終わった後も、行動を24時間体制で警察に監視されていたという。
しかし、千田さん失踪から現在に至るまで、警察自身も「怪しい」と睨んでいるであろうこのオーナーは現在のところ逮捕されてはいない。

不審な点と不確実な噂

この事件は、複数の目撃情報や防犯カメラ映像、PHSの位置情報などの手がかりが多い一方で、不審点や報道、ネット上で囁かれる不確実な噂が多い。
それらがこの事件をさらにこじらせている気がしてならない。
事件考察の前に整理のため、不審な点と不確実な噂を以下にまとめてみた。

不審な点

  • 千田さんはなぜ、約束の時間にパン屋本店を訪れなかったのか
  • 千田さんはなぜ、遠回りをして室蘭サティへ行ったのか
  • 千田さんは室蘭サティからバスに乗ったか、それは1人または誰かと乗ったのか
  • 交際相手はなぜ2度も千田さんに電話をかけたのか(事件の概要通りなら、千田さんはパン屋の講習予定である)
  • 交際相手に対する千田さんの返答の意味(講習に遅刻しているにもかかわら、悠長な返事、そして“下”とはなにか)
  • 待ち合わせ時刻13時頃のオーナーの行動(千田さんが現れないにも関わらず、なぜ連絡を取るなど確認を怠ったのか)

不確実な噂

  • 千田さんはストーカーに悩まされていた
  • オーナーは千田さんのことがお気に入りのようだった
  • パン屋でコーヒーの淹れ方講習など過去にやったことがない

容疑者考察~オーナーは本当に犯人か

親族の証言は基本的にアリバイと認められないため、アリバイの有無という点から言って、このオーナーは非常に怪しい。
最後に確認された千田さんのPHS位置情報がオーナーのいるパン屋近くのアンテナ中継場所だったことや交際相手が13:46頃に2回目の電話で千田さんと話した際、「今話せないから、後でかけ直すね」と言い、それが室内での話しているように感じられたこと、そして13:30頃にオーナーが店から出ていること。

これらの事柄から、

  • 13:30頃、パン屋本店外で千田さんとオーナーが出会う。
  • オーナーは「講習はパン屋ビルの他の部屋に用意をしている」などと言って千田さんを別の場所に誘い出す。(当時パン屋本店はオーナーの所有ビル1階で営業しており、ビル内に空き部屋が存在していたことがわかっている。)
  • 13:46頃、千田さんは案内された別室で交際相手から2回目の電話を受ける。
  • その後、オーナーによって千田さんに危害が加えられ、現在の未解決の状況に至る。

という推察が容易にたてられるからだ。
当時の報道やネット上でも、オーナー=犯人説は根強く、この説を前提とした話が多い。

このオーナーについて、容疑者リストから外してもいいとは決して思わないのだが、オーナーが本当は犯人ではなく、真犯人が今も安全圏でのうのうと生活を送っているのだとしたら業腹である。
今回は、容疑者の可能性を広げることを目的に、オーナー以外の他の容疑者像について考えてみたい。

事件の舞台、室蘭という町

容疑者像考察にあたり、室蘭、そして事件現場周辺がどういった町なのか知っておきたい。
北海道室蘭市は人口約10万2千人(2001年3月末事件当時、なお2022年2月末時点では約8万人)の北海道中南部にある町である。

三方を海に囲まれた馬蹄型の地形をして、町の北側には1,000m以下の低山が連なっている。
特に室蘭市とお隣登別市にまたがる鷲別岳(911m)は登山口に駐車場がる公園、キャンプ場、スキー場が整備されていることから、手軽に登山を楽しめる山である。

町内で栄える中心地としては、官公庁や港を有し、室蘭駅を最寄り駅とする中央町付近と、事件当時は丸井今井(デパート、閉店)や長崎屋(現・MEGAドン・キホーテ室蘭中島店)、現在でもショッピングモールや多くの飲み屋がある中島町付近がある。

千田さんのPHSの電波を最後に拾った「東通」バス停もこの中島町にある。
二大中心地とはしたものの、中央町付近は商店街の衰退が激しく、「栄えている」というなら中島町であろう。
ただ、この中島町も事件当時の報道で「事件は室蘭市内の繁華街で起きた」と報じられているが、それに対して札幌のような日本を代表する繁華街を想像されては困る。
繁華街というとひっきりなしに人が歩いていて、混みあっているという印象だがそんなことはない。

丸井今井や長崎屋付近は確かに人が多いかもしれないが、特にパン屋本店のあたりは中島町のはずれにあり、歩道はたまに人がいるなという程度である。
どちらかといえば、後述の鉄鋼企業団の工場地帯から中島町を抜け、室蘭工業大学へと向かう道であるため、パン屋本店前の車道は交通量が多いという感じだ。

また、市内、中島町や中央町以外のエリアはどうかというと、大学や住宅街があるエリア、幹線道路沿いにあるエリアなど一部人がいるエリアはある。
一方で人口減や利便性の高いエリアへの一極集中により、消滅集落やうっそうとした木々に阻まれ不法投棄が多いエリアも多い。産業という面からみると、明治時代に日本製鋼所、北海道炭礦汽船輪西製鐵場(現・日本製鉄室蘭製鉄所)が誕生。
古くから鉄の町として知られており、鉄鋼業は現在も室蘭市の基幹産業である。

今でこそ日本鉄鋼業の衰退や一部企業の撤退により、勢いはないものの、市内にはそうした企業の社宅や寮が存在し、北海道内外から就職、転勤でやってきた多くの従業員が居住している。
また、国立大学である室蘭工業大学もあり、こちらも道内外から学生がやってくる。

容疑者考察~見えない人達~

室蘭市の町の概要から次のようなことが考えられる。

  • 市民みんなが顔見知りというほど狭い町ではない。
  • 会社への就職、退職、転勤や大学入学、卒業による人の出入りが多い。
  • 車で移動していて不自然ではない
  • 山、海、人の立ち入らない場所といった死体を遺棄できる場所が豊富。

例えば就職や学校入学などにより、永住ではなく、一時的に室蘭市に居住する人がいたとする。
企業なり、学校なり所属する組織では当然その人は認識されている。
しかし、そこから一歩出て所帯を持ったり、町の人々と積極的に関わる機会がなかったなら、その町の中から「見えない人」として、居住し続けることも可能だ。

不確実ではあるが、千田さんがストーカーに悩まされていたという噂がある。
事件当時の報道によると、どうやらアルバイト先のパン屋の同僚達が、ストーカーに悩まされていると千田さん本人から聞いていたそうだ。

声をかけられたりといった直接的接触はなかったものの、付きまといなどの行為や電話に悩まされていたらしい。
ストーカーが誰か、千田さん自身にはわからず、警察に相談した形跡もないという。

学校の友人・知人ならばストーカーが誰か検討がついたはずなので、千田さんと接点が全くない、または薄い関係性(パン屋の客、通学中いつも同じバスに乗るなど)の人間の可能性が高い。
ストーカーが本当に存在したとして、それが町という目から見えにくい「見えない人」なのであれば、誰か特定できないのも納得がいく。

筆者の考える事件のシナリオ

もしかしたら千田さんは自宅を出た当初から、ストーカーの影を感じていたのではないだろうか。
そこでパン屋本店での講習の約束があったにも関わず、まっすぐ目的地に行くとこがはばかられ、ストーカーを撒くために、目的地ではなかったものの、バス停から近く人の目の多い室蘭サティに立ち寄り、男性が近づきずらい化粧品売り場でストーカーを撒くことに成功する。

ストーカーから逃れ、安心した千田さんは再びパン屋本店に向かうためバスに乗ったものの、ストーカーを撒くことはできていなかった。
そのことにバスの中で気が付いた千田さんは「東通」バス停で下車した後、交際相手と1度目の電話をしながら、近くにある丸井今井や長崎屋など人のいる建物に逃げ込む。
1回目の電話の際に交際相手に助けを求めれば、状況は変わったのかもしれないが、うまくストーカーを撒けると考えてしまったのかもしれない。

ストーカーを撒いた(と思った)後、交際相手からの2回目の電話を建物内で受け、約束の時間から遅刻しているパン屋本店に急いで向かうべく、建物の外に出る。
しかし、建物を出た後、人通りの少ない所でストーカーは千田さんを拉致する。
なお、当時のPHSは1つの基地局で半径100m~500m程のエリアをカバーしていた。
そのため、パン屋本店付近の基地局で位置情報を掴んだからと言って、パン屋本店付近で拉致された裏付けにはならない。なお、半径500mエリアには当時の丸井今井や長崎屋もある。

ストーカーは千田さんを車に乗せ、PHSを奪った上で別の場所に移動。
危害を加え殺害したの後、適当な場所に死体を遺棄。
もしくは新潟県三条市の路上で少女を誘拐した後、約9年2か月間にも渡って監禁し続けた新潟少女監禁事件のように、今なお千田さんを監禁し続けている可能性もあるのだ。

最後に

筆者の考えた事件のシナリオはもちろん証拠があるものではないし、あくまで可能性の1つとして考えられないかという程度のものだ。
しかし、怪しいと思われる容疑者がおり、手がかりが残されているものの現在に至るまで千田さんが見つかっておらず、事件が解決していないことを考えると、様々な可能性について考えていくことが事件解決の第1歩である気がする。

容姿端麗、頭脳明晰、周囲から評判の良かった女子高生は一体どこへ行ってしまったのだろうか。
そして千田さんがこれから謳歌するはずだった青春を奪い、周囲を不安に陥れた犯人はいったい何者なのか。
家族や友人は今なお、千田さんのこと待っている。
もしも千田さんについて何か情報を知っている人がいたら、ぜひ室蘭警察署まで情報を提供してほしい。

※画像はイメージです。

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