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「天皇には名字がない」というミステリー?

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スメラミコトは姓を持たない。その理由は現在もはっきりとわかっていない。
明治初頭の苗字必称義務令により、すべての国民は名字を名乗ることが定められたにもかかわらず、天皇・上皇・皇族はいまだ戸籍法の適用外にある。
皇室の構成員は日本国籍を有する日本国民でありながら、戸籍もなければ住民票も参政権もない。おまけに、実質上は信教の自由もない。見方を変えれば、国民に保障された人権が存在しない。古代から現代にいたるまで、天皇が名字を持たなかったことには何らかの理由がありそうだ。

目次

仮説1 名字は唯一無二を否定するから

第一の理由として考えられるのは、やはり天地に唯一の存在であるということだろう。
たとえば楽屋に落語の師匠がいたとする。この場合、「師匠、お茶が入りました」と弟子が言うだけで師匠は自分のことだとわかる。けれど師匠が二人いた場合はどうなるか。「○○師匠はお茶ですね、△△師匠は何になさいます?」と名前をつけて呼び分けるはずだ。

天皇は落語の師匠と違い、ワンアンドオンリーだから、姓を名乗って他の者と区別する必要がなかった。裏を返せば、名字を持つことは暗に「天皇は他にもいる」と認めることになってしまう。

では戸籍のない皇室構成員がどこに記録されているかというと、ちゃんと皇統譜というものがある。彼らは日本国籍でありながら、「皇籍を有する者」として戸籍に記載されない唯一の例外らしい。

仮説2 姓名を与える側だったから

第二の理由として、氏(うじ)や姓(かばね)を臣下へ賜与する立場だったことが挙げられる。
古代日本の大王(おおきみ)は氏姓を授ける超越的な存在だった。「氏(うじ)・姓(かばね)=名字」ではないけれど、氏族や序列を表す名称の名づけ役が天皇だったことに変わりはない。

その天皇に名を授ける上位者はいなかった。名字を持たないことは、いわば権力の頂点の証。権力者たちは天皇から姓を賜り、天皇を上位者と認め、その姓を名乗ることで忠誠と臣従を誓う。天智天皇は中臣鎌足に「藤原」を、正親町天皇(おおぎまちてんのう)は羽柴秀吉に「豊臣」を下賜した。現代においても、内閣総理大臣の任命は天皇の国事行為のひとつになっている。
長い歴史のなかで、たとえ天皇が形式的な存在になろうと、象徴的な存在になろうと、より上位に位置づけられる人物が現れなかったこともまた、現代にいたるまで名字を持たない理由と考えられる。

延久4年(1072)、天台宗の僧・成尋(じょうじん)は、北宋の神宗への謁見で「王は何という名か」と訊ねられ、「本国の王に姓なし」と答えた。姓を持たないからこそ日本国の王であり、姓を持つのは臣下という価値観が秩序の基盤になっていたのだろう。

仮説3 易姓革命封じのため

ここまでは当たり障りのない仮説を述べてきたけれど、ここからが本題だ。斜め上な見方かもしれないが、天皇に名字がない理由は案外このあたりにあるのかもしれない。

易姓革命とは、「姓を易(か)え、命を革(あらた)める」ことをいう。「易姓」とは、徳を失った統治者に天が見切りをつけ、別の姓を持つ徳のある者が新たな王朝を建てることで、「革命」とは天命が革まることを意味する。儒教に基づいた中国古来の思想であり、王朝交替を正当化する理論として知られる。“revolution”という言葉に伴う社会改革といったニュアンスはなく、単に王朝の交替をさす。

中国数千年の歴史のなかで王朝交替は幾度となく繰り返されてきたわけだが、それぞれの王朝の皇帝たちは、みな姓を持っていた。日本には、かなり早い時期に儒教が伝来したとみられ、3世紀の崇神天皇と大物主の逸話にも影響がうかがえる。
ヤマト王権は隣の大国に学び、天皇に姓がなければ易姓革命は起こらないと考えたのではないだろうか。もちろん姓があろうとなかろうと、現実に皇位簒奪は起こりうる。万世一系とはいえ、非常にあやしい場面も何度かある。けれど天皇に姓がなければ、理屈のうえでは易姓革命は起こらない。はた目にも王朝交替がわかりにくい。

もしこの仮説が当たっているとするなら、言葉や名前に霊力が宿るとされる言霊信仰も無関係ではないだろう。本名はその人の霊的な人格と結びついたもので、相手に本名を知られることは相手の支配下におかれることを意味した。古代の日本で言霊信仰が科学だったことを考えれば。天皇が名字を持つことで生じる易姓革命の危険性を彼らが恐れたとしても不思議ではない。

階層、職業、地名、家系など多岐にわたる要素が組み込まれ、それぞれが意味をもつ名字。古の知者たちが行ったさまざまな施策が、天皇制の存続や国体としての万世一系に大きく寄与していることは否定できない。これを伝統とみるか因習とみるかは人それぞれだろう。

※画像はイメージです。

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