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アメリカの「州兵」とアメリカ軍の「米軍」との違い解りますか?

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2020年のアメリカ大統領選挙関連の報道によって、マサチューセッツ州、ウィスコンシン州、ケンタッキー州などで暴動に備えて各州の「州兵」が待機している事を目にした方も多いだろう。

空前絶後のアメリカ国内の混乱ぶりは数々のフェイク・ニュースが飛び交う様相を呈し、首都ワシントンDCでも警戒態勢が続くなど、動員された「州兵」を見る機会が増加した。
しかしふと考えた場合に「州兵」とは、所謂「アメリカ軍」とはどう違うのか、またはその一部分を構成するものなのかなど、様々な疑問を感じられた方もいるかも知れない。

目次

実は「アメリカ軍」よりも古いアメリカの「州兵」

アメリカにおける「州兵」の起源は、同国が未だイギリスの植民地だった時代に各地の民間人達で組織された「ミシリア」に端を発すると言われ、その意味で「アメリカ軍」よりも古い。
「ミシリア」は植民地であったアメリカ大陸における自警団的な武装組織であり、1636年12月に現・マサチューセッツ州において設けられたのがその起こりだと考えられている。
以後1754年までの間にアメリカ東海岸の主要な入植地に「ミシリア」は置かれるようになり、1775年に宗主国・イギリスとの独立戦争を始めたのも、元祖であるマサチューセッツ州の「ミシリア」だった。

これに続き他の「ミシリア」も独立戦争に従軍し1783年に見事勝利を収めて、アメリカが国家として成立する礎を築いたその立役者として今に語り継がれている。
ただこうした「ミシリア」が今の「州兵」となったのは比較的最近であり、1916年の国防法でようやく「National Guard」と定義され、この邦訳が「州兵」と当てられた事による。

「州兵」と「アメリカ軍」との違い

前述の通りアメリカが独立する以前から「ミシリア」として1636年には成立していたのが「州兵」であり、アメリカが国家としての軍隊を保有するより先にあった民兵の一種だった。
対して「アメリカ軍」の起源は1775年6月の独立戦争に向けた大陸会議において、ジョージ・ワシントンを総司令官とした「大陸軍」の設置が決議された事に端を発する。
当初の「大陸軍」はあくまで机上の存在とも言うべきものだったが、これが実際の独立戦争を戦う中で徐々に現実となり、独立戦争勝利翌年の1784年6月に「アメリカ陸軍」となり現在に至っている。

こうした経緯の「州兵」だが、現在平時においては各州知事の指揮の下で治安維持や救難活動を担い、戦時においては大統領の指揮下で正規軍たる「アメリカ軍」を補完する位置づけである。
因みに第二次世界大戦後の1947年には「アメリカ陸軍航空隊」から「アメリカ空軍」が独立する形となったため、各「州兵」も「陸軍州兵」と「空軍州兵」とに同様に再編成された。

「州兵」の戦力

少し古いデータではあるが2018年末時点でのアメリカ国防総省の統計に寄れば、「陸軍州兵」と「空軍州兵」の合計兵員数は約428,000人であると公表されている。
この約428,000人と言う兵員数は、単純比較するならば日本の陸海空3自衛隊の兵員数の凡そ2倍に相当する数であり、それだけで通常の国の軍隊の総数を上回る規模と言える。
特に専守防衛を旨とする自衛隊と同様に「空軍州兵」は、アメリカ本土の防空任務を一手に担う存在であり、現在の世界で最高の制空戦闘機とも称されるF-22ラプターなどを配備している。

かつて2000年以前の「州兵」は、月間で1度の週末及び年間で2週間ほどの定期訓練を課せられた、謂わばパートタイム的な組織と言われていたが、現在ではフルタイム勤務に近い。
これは911テロ後の国内任務の増加や、それに引き続くイラク戦争の勃発、それ以後の中東派兵の継続などから常態化していると言われ、最早パートタイム勤務は失われているのが実態のようだ。

「州兵」の中でも全米で最大の兵力を擁する目されているのがテキサス州であり、「陸軍州兵」と「空軍州兵」の合計で約21,000人、特に空軍には爆撃機やドローンなどの装備も充実させている。
これに次ぐのがカリフォルニア州で合計で約18,000人の兵力を持ち、人口では全米で最大の規模を誇る同州の治安維持を一手に担いうる戦力だと評されている。

道州制による日本での「州兵」導入の可能性

「大阪都構想」などで注目を集めた大阪維新の会や、その国政政党である日本維新の会などが唱えている事で一般的に知られているのが、日本における道州制の導入案だ。
これにより日本でも地方分権を進め、アメリカなどと同様な道州制施行による連邦国家制を唱える向きもあるが、これまで見てきたような歴史的民兵組織の土壌がない日本では難しいだろう。

そもそも四方を広い領海に囲まれた日本の地理的な状況からは、各部隊の分散配置は致し方ないとしても、中央の一元的管理が無ければ効率的な運用は厳しいものと考えられる。
更に今現在でも徴兵制ではなく志願制で隊員の確保を行っている自衛隊が、地方分権になったとたんに徴兵制に移行できるかと言えば、そのノウハウを含め事実上不可能だろう。

事の是非は別として、未だアメリカの多くの州で銃所持が認められているのは、その歴史上個々の市民が自衛のための武装を当然とする「ミシリア」の伝統が影響していると思われる。
そうした感覚・前提は幸いな事に日本にはなく、それが今から浸透していく余地も非常に少ないト言うのが実情だろう。

※画像はイメージです。
eyecatch source:Defence-ImageryによるPixabayからの画像

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