目指せ日本再統一!知力を武器に文明崩壊後の世界で主人公が目指すものとは!!
日本三國ノオススメ
今回ご紹介する『日本三國』は、小学館マンガワン等で連載中のマンガ作品。
舞台となるのは近未来、文明が崩壊した日本。しかもただ文明が崩壊しただけでなく、日本は「聖夷・武鳳・大和」と、三つの国に分裂している。(この辺はタイトルから察することができる人も多いだろう)
主人公、三角青輝は大和の一部である愛媛郡の下級役人。旧文明である「日本時代」の知識が豊富で、理論派ながら、その偏屈さ故に変わり者扱いされている青年だ。そんな青輝だったが、ある事件に巻き込まれて妻を失ってしまう。
ここで青輝は復讐を誓う……かと思いきや、一念発起。
腐った世を正し、日本を再統一すべく妻の遺志を胸に、世に飛び出していく……というのが大まかなストーリー。
世界観設定のモチーフはそのまま古典文学『三国志演義』だし、家族を失って主人公が立ち上がる流れはややありきたり。だが、それにも関わらず、本作には読むものをとらえて離さない強烈な魅力がある。
作品のポイント!
ポイントは作品じゅうに散りばめられた情報量の多さと、それらが織りなす複雑さだ。
このタイプの作品は、モチーフを知っていると大体展開が予想できたりするのだが、本作はタイトルに使われている。
『三国志演義』だけでなく、さまざまな古典や名作がイメージソースやオマージュとして使用されており、ストーリーの展開が予想できない。
また、荒廃した世紀末的世界であるにも関わらず(いや、むしろそういう世界だからこそ?)本作でストーリーを動かすモノとして、武力よりも知力に重きが置かれているのも面白い。一見頑固で理屈っぽく、ひ弱そうですらある主人公が、知識と知謀でピンチを打破していく姿はシンプルに痛快でもある。
主人公を上回る知力、胆力をもつキャラクターがどんどん現れるのも、物語から目が離せなくなるもう一つのポイント。主人公を取り巻く人々以外のキャラクターも層が厚く、敵、味方とわず彼らの物語が絡み合いながら進んでいくので、マンガを読み進める手が止まらなくなるというわけだ。
物語に織り込まれた、多量の情報とキャラ設定、それらが織りなすストーリーに圧倒されているうちに、どんどん作品に惹きこまれていく、『日本三國』はそんな作品と言えるだろう。
元ネタどれだけわかる?古今東西戦記ネタの宝庫!
アポカリプスからの日本分裂、そして訪れた混乱の中、立ち上がる主人公……。一見よくある設定を使いながら、『日本三國』に深みを与えているのが作中さまざまな場所にちりばめられた戦記ネタ・歴史ネタだ。
その種類はパロディやオマージュから、主人公たちが古事、として引用するエピソードまで多岐にわたる。
これらには、古典の名作や歴史上の英雄譚にとどまらず、私たちがよく知っているマンガなども含まれるのも面白い。(本作の舞台は未来の日本なので、私たちが知っているマンガなども、登場人物にとっては古典作品なのだ)そもそも主人公のモデル自体が、おそらく『三国志演義』の軍師諸葛亮孔明だし、ライバル阿佐馬芳経は源義経がイメージの源泉だろう。また、作中登場する奇策・エピソードの数々も『三国志演義』やその他古事からとったものが多い。
翻案、再構築といってしまえばそれまでだが、「知っている」エピソードや歴史上の人物がストーリーに登場するとやはり嬉しいのが人間というもの。
また、本作はこうした過去の歴史や古典作品から持ってきたモチーフやエピソードの使い方が、非常にうまく「ここでこのモチーフを使うのか!」と毎回感心させられる。もちろん元ネタを知らなくても十分楽しめる作品ではあるのだが、元ネタを知っていれば味わい深さはシンプルに倍になる。ぜひ、一度読み終わってから、元となったモチーフや、引用された古事をしらべてみてほしい。きっと新しい発見があるだろう。
読んでみてください!
『日本三國』はある意味シンプルな世紀末ストーリーに、作者の戦記愛、歴史愛でもって膨大なエピソードやモチーフをつっこむことで完成した、骨太かつエキサイティングな作品だ。
最初は情報量で面食らうかもしれないが、勢いがある作品でもあるので読み始めればどんどん読める。気になった方はぜひ、チャレンジしてみてはどうだろうか。
日本三國 (C) 松木 いっか 小学館
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