私が子供の頃、夏になると天然のクーラーと呼ばれ、近辺の子供たちがこぞって訪れていた場所。
その周辺は夏でも寒いくらいに冷え、真夏は毎日でも行きたいのですが、民家がある地帯から少し離れています。
そのため、そこに行く時は必ず誰かと一緒に行くように言われていたので、友人と共に「森に行こう!」と探検か冒険にでも行くかのように出かけるのが夏の恒例でした。
小さな冒険
これはある日、友人のA子ちゃんと出かけた時の話です。
水が湧き出ているかもしれない木が生い茂っているずっと上の方を見上げると、
「あのね、この上、絶対に登っちゃダメだよ」
とA子ちゃんがいいました。
私は「なんで?」と聞いたのです。
すると、彼女は
「この上に神様が居るの、その神様は女なんだって。」
「で女が自分の傍に来ると怒って村に災いが起こるんだって」・・・。
その頃の私は「女が昇ると災い?なにそれ?じゃぁ男はいいの?誰か男で昇ったことあるの?」と聞きました。
するとA子ちゃん「うん、男はいいの。B男君が昇ったことあったけど災いは起きなかったって言っていたよ。でも女はダメなんだって」・・・。
その時の私は、なんか寒いところに寒い噂話だなとブルっとしたのですが、好奇心に勝てずにA子ちゃんの手を引き上まで登っていきました。そこには木が生い茂った斜面の上の方から湧き水がドンドン溢れ、湧き水と言っても水量が多く小川のようになっていました。でも怖さを感じるどころか、すがすがしい場所でした。
A子ちゃんに「そんな事ないよね」って笑いながら話かけたのを今でも忘れません。

A子ちゃん
家に帰るまでに何か起きるわけでもなく、その後も何もなく数日が経ち、その日の事はすっかり忘れていた時です。
ある晩、寝ようと布団に入ってしばらくすると、周りがなんだか騒がしいように思えました。
それでもウトウトしていると、突然布団が揺らされます。
なんだろう?と眠い目をこすって起きてみると、そこにはお母さんがいて、「A子ちゃんの家が火事なのよ」と真っ青な顔で話しかけてきます。
A子ちゃんの家はちょっと離れていますが、心配になりお母さんと手をつないで様子を見に行くと、数台の消防車と人だかりがで、火は消しとめられたいましたが、家は焼けてしまい形も残っていない状態でした。
翌朝、A子ちゃんとその家族が全員亡くなってしまったのを知りました。
最後に
杜々の森の湧水は昭和60年、全国名水百選に選ばれ、その後「杜々の森名水公園」としてその周辺が開発されました。
新潟県長岡市でも有数の観光スポットとなり、大人になってから訪れたその地は、私が子供時代によく知る景色とは全く変わってしまっていました。
大人になった今の私は何となくわかる気がします。
村人はその水を大切に思い聖地として奉っていたのでしょう。
※画像はイメージです。
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