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不幸を招く執念

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私は東北の地方都市に住んでいる。
幼少期から二十代半ばまでを隣接するT市で過ごした。

現在もT市に実家があるが、私が子どもだった頃、近所の市営住宅で不幸が続いたことがあった。
最初は、友だちだった女の子のお母さんが、病気を患い急死した。まだ30代ぐらいの若さだった。

早すぎる親の死に、いつもは勝気だった友だちが寂しそうにしていたことを思い出す。
次に亡くなったのは、低学年の男の子だった。近所の子たちと川遊びをしていた最中、誤って落ち、溺死してしまった。
絵が得意で、水難に遭う前に描いた絵が「いつもとは違う寂しい絵で、ひょっとしたら虫のしらせだったのかも」と、後日その子のお母さんが涙ながらに話していたのが忘れられない。

最後は、低学年の元気な女の子で、水疱瘡であっけなく亡くなってしまった。
隣近所で立て続けに起こる不幸に、周囲からは「何かの祟りでは」とか「お祓いをしてもらうべきだ」などと不安の声が囁かれはじめ、結局、近隣のお寺のお坊さんに拝んでもらうことになった。

そのお坊さん曰く「この土地にはかつて大きな白蛇が棲んでいたが、宅地の造成時、重機に巻き込まれ命を落とし、その頭が市営住宅の下に埋まっている。
御霊を慰めて欲しいという想いが、こうした不幸を招いているのかもしれない」とのことだった。お坊さんに拝んでもらうと、不幸はピタリと無くなった。

時が流れ、平屋だったかつての市営住宅もマンション型の住居に生まれ変わって久しい。世代交代も進み、一連の出来事を覚えている人も今はほとんどいないだろう。
当時は子どもだったこともあり、亡くなった三人とその家族に同情しつつ、白蛇の執念に恐怖を禁じ得なかった。

今ならばお坊さんの話を眉唾と疑ってしまいそうだが、発展が著しかった時代の小さな町で、まるで昔話のような逸話が信じられ、語られていたことがどこかちぐはぐで、懐かしさが去来する。

ペンネーム:かげぼっくり
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※画像はイメージです。

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