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今でも忘れられない男の子

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あれからもう20年近く経ちました・・・今でも忘れられない、ある男の子のお話です。

目次

元気なあの子

小学校生活最後の1年が始まった春先、オレンジ色の斜光が差し込む日暮れ、廊下を歩いていた私の背後から聞こえてきた声で振り返ると、同じクラスの男の子がいました。
あまり話すことがない私にも、笑いながら話かけてくれる活発なタイプの男の子。

「また明日な!」と言われ、「あ、う、うん、また明日っ」と声を返した私に手を振りながら、軽やかに走って4階の教室から階段を下り、遠ざかっていく足音はすぐ聞こえなくなった。

ぼんやり「きょうも元気だったな」と思いつつ、学校での出来事や家に帰ったらすることを考えながらゆっくりと、4階から3階、3階から2階と降りて行く途中、踊り場の鏡の前になぜか片方だけ落ちていた上履き。

私はきょとんと瞬き、「脱げた片方だけ置いていく?」とか「よっぽど慌てていたのかな?」と小さくぽつりと呟きながら、「ほかの子が踏んで転んだらいけない」と踊り場の端によけようと手を伸ばしたそのとき。
誰かが力任せに壁を叩くような「どんっ!」という音が聞こえ、動きが自然に止まりました。

音がした壁に顔を向けても、そこにあるのは備え付けの大きな鏡だけ。
でも背筋に何かが這い上ったような感覚を覚え、それとと共に明らかな脅えと恐怖で心臓が「どくんどくん」と大きな音を立てた。

学校の怪談

怖いものが苦手な私、とてつもない怖い思いをした事によって記憶が呼び起こされ、前に聞いたこの学校に伝わる怪談を思い出したのです。

「校舎東側の階段にある踊り場の大きな鏡、午後4時44分44秒にその前を通ると鏡の中の世界に連れて行かれてしまう。」

「現実になるはずがない」と何度も頭の中で否定し、「あの話は聞き違い」と言い聞かせ思い込み、自分をだまさなければ、この場から立ち去り逃げることもできなくなってしまいそう。
しかし、まるで糸を引かれた操り人形の如く、鏡のほうに視線が向き、顔を向けた先にある鏡の中央には、強く打ちつけたような手のひらの跡が写っています。

鏡の中の手形

さっき鏡を見たとき、絶対になかったはず。
鏡に視線を向ければ、すぐ気づく位置に手形があり、どう考えても見逃すはずがありません。たぶん、視線を外した数十秒、長くても1分ほどの間についた手形。

「たかが手形」なのに、存在に強い恐怖を覚え、微塵も動けなかった私は、ただひたすら鏡を見つめているだけしかできない。
床に座り込みガタガタ震え、鏡に打ちつけたような手形、頭の中がぐちゃぐちゃにかき乱れたよう。瞬きさえ忘れ、大きく目を見開いたまま、ぼろぼろ涙をこぼしながら肩を上下させ、まるで時が止まったかのような感覚。

数時間経ったような、本当はたった数分だったのか・・・。
「あら、まだ帰ってなかったのね。早く下校しないと、お母さんが心配するわよ?」と前触れもなくかけられた声に、「ぴくっ」と身体を震わせ、ゆっくり視線を向けた先には先生がいる。
恐怖から逃れられた安心感に声を上げて泣き、その後、先生から連絡をもらった母と一緒に帰宅しました。

いったい何処に?

翌日、声をかけてくれたあの男の子が、片方の上履きを残して姿を消したことを知った。
朝礼で「何か知っていることがある人は、先生にも親御さんにも、話すように」と言われるのですが、「男の子は鏡に吸い込まれていなくなってしまったんだ」とは言えませんでした。

それから暫くは大騒ぎだったのですが、見つかった話もないまま、いつのまにか男の子の存在が薄れてしまったかのように、話題に触れることはなくなったのです。

本当に鏡の中に連れて行かれたのか、何かをきっかけにいなくなってしまったのか真相はわからない。
あの日から20年近く経った現在も、私は時々男の子を思い出し忘れる事はできません。

※画像はイメージです。

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