宇宙人の地球侵略物の創作作品・・・映画、小説等、数えきれないほどありますが、原点は1898年にSFの巨匠HG・ウェルズが発表した宇宙戦争といっても過言ではありません。
1938年のとあるラジオ放送で、宇宙戦争さながらに火星人の襲来が報じられアメリカ中がパニックに陥ったという事件がありました。
架空のSF小説が現実に起こりえるのか・・・、その事件の真偽について書いてみたいと思います。
宇宙戦争のあらすじ
ある日、流れ星のような隕石が、ロンドン南西部に落下します。しかしそれは隕石ではなく、巨大な宇宙船でした。悪夢はその翌日からはじまりました。
宇宙船の中から火星人があらわれ人々を熱戦で焼き払い、地球上でトライポッドという三本足の乗り物を駆り、人々や建物を次々に蹂躙していくのです。
もちろん人類は黙ってはいません。様々な武器を駆使して火星人に応戦しますが、いかんせん、今までに見たこともない兵器にまるで太刀打ちできません。
人類はなすすべもなく火星人に滅ぼされてしまうのか?このまま火星人に地球は支配されてしまうのか?
火星人のトライポッドが押しつぶした人家で震えながら一夜をすごした男は、異様なほど静かな朝に、ふと目を覚ますと、あたりは昨日までの阿鼻叫喚とは打って変わって、静まりかえっています。
いったいどうしたのか?ついに火星人は人類滅亡を完遂させてしまったのだろうか?
男は意を決して外に出てみると、あれだけ凶暴だった火星人は姿を消してしまっていたのです。
正確には火星人はすべて死にたえていたのです。
人類は勝ちました。しかし、かれら火星人を倒したのは、最新の兵器でも屈強な軍隊でもありません。それは、私たち人類にとってはまるで無害な、空気中にいる病原菌やバクテリアだったのです。
人類と違って免疫がなかった火星人は、地球に到着した時点で徐々に病原菌に犯されて滅亡する運命だったのです。
と、いうのが宇宙戦争のあらすじで、火星人の襲来から滅亡までを1人の視点から描いたSFの古典作品。
なんといっても、この作品の偉大なところは火星人=タコのような頭、でっかちの8本足の化け物というイメージを、私たちに植え付けたことではないでしょうか。
オーソン・ウェルズのラジオ放送
時は過ぎて、1938年。アメリカのあるラジオ番組である朗読劇が放送されました。それは音楽番組の生中継放送中に、火星人襲来の緊急ニュースが流れるというものです。
この放送の脚本、朗読を担当したのが、俳優オーソン・ウェルズでしたウェルズ。声による迫真の演技に聴取者は真実と思い込み、アメリカ各地でパニックが起こり、人々は街中を逃げ惑い、食料の強奪が起こったと伝えられました。
これが、ラジオ宇宙戦争による集団パニック事件です。
はたして、事の真偽は?・・・結果を言いますと、これは完全な都市伝説です。
この事件は長年の間事実として扱われてきましたが、近年の研究でこの主張は完全に否定されていて事実と信じた聴取者は、ほとんどいなかったことがわかっています。
なぜパニック説が起きたのか
ニュースの速報性の高さに、人気を集め始めていたラジオでしたが、そこに危機感をもっていたのが紙媒体である新聞。ラジオドラマ「宇宙戦争」があまりに真に迫っていたため、ここぞとばかりに「ラジオドラマの過剰な演出により、全米がパニックに」と誇張して新聞は伝え、ラジオそのものに攻撃したのが、この説のはじまりです。
その数年後、ハドレー・キャントリルという世論調査の研究家が出したレポートが決定打になり、このパニックが事実として定着したというわけです。
キャントリルは、レポートで「約100万人もの人がパニックに陥った」と報告しましたが、実際。この日の夜にラジオ番組を聞いていた人は100万にも満たない人でした。パニックが伝搬したとしても、この数字は大きく見積もりすぎだとおもうのですが。
デマの怖さ
これが事件の全容ですが、このデマの怖さはなんといっても「大手メディアが仕掛けた事実」につきると思います。
ラジオや新聞など、真実をつたえる役をはたさなければならないメディアが、その媒体を使って逆に国民を煽動する。
こんなSFの話ではないのですが、その昔、日本でも同様のことが起きました。
第二次世界大戦時、敗色濃厚な日本であるのにかかわらず、大手新聞社が戦勝、連勝のデマを流布し国民感情をあおり、その国民感情を利用して軍が国を掌握する。
結果、日本は地球上で唯一の戦争被爆国となり、230万人もの尊い命をうばわれますが、大手新聞はいまだその罪を認めようとはしていません。
ひるがえって現在はどうか?と言いますと、SNSの普及により、個が情報発信する時代。
正義の鉄槌を盾に、有ること無いことをなんの根拠もなく書き綴り、たとえ違っていても、どうせわかりはしないと開きなおる始末です。
これなら、まだ情報統制がきっちりされている、自由のない国のほうがましに見えてしまう時があります。この事件を教訓に、真実とウソを混同しないようにしたいものです。
※画像はイメージです。
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