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不遇なショットガン ジャックハンマー( Pancor Jackhammer)とは?

日本を含む多くの先進国では幸いな事に銃器の所持には厳しい法的制限が設けられており、且つそれが機能しているが故に現実に目にする機会も少なく、従ってそれらを用いた犯罪も同様に少ない。
事ある毎に銃の乱射事件で多くの死傷者を発生させているアメリカは、それでも「市民の武装する権利」がそれを制限しようとする勢力を上回っており、銃器の蔓延する社会の持つ問題の根深さを感じさせられる。

その是非はともかくとして、それだけ銃器が身近に存在するアメリカであっても工業製品である以上、市場においてその価値が認められないものは当然受け入れられず、普及しなかった銃器も数多く存在する。
かつてアメリカで運営されていた銃器製造企業・パンコール社製の「ジャックハンマー」と言うオートマチック・ショットガンもそんな例のひとつであり、知る人ぞ知る「偉大なる駄作」だと言えよう。

NotLessOrEqual, CC0, via Wikimedia Commons
目次

パンコール・ジャックハンマーの開発に至る経緯

現在では会社すら倒産してしまっているパンコール社だが、同社には1950年に勃発した朝鮮戦争に従軍した経歴を持つ銃器設計者・ジョン・アンデルセンが在籍しており、彼が1984年に設計したのがジャックハンマーだ。
一説にはジョン・アンデルセンは、自身が従軍した朝鮮戦争において使用したポンプ・アクション式のショットガンのファイア・パワー不足、つまり装弾数の少なさに疑問を持ち、それを改善しようとしたと言う。

朝鮮戦争時のアメリカ軍のショットガンと言えば、ウィンチェスターM1897でありチューブ式弾倉の本銃の装弾数は5発に過ぎず、無論ポンプ・アクションにつき速射性能も優れているとは確かに言い難い。
そこでジョン・アンデルセンは装弾数を増加させ、尚且つ速射性を高めたオートマチック式のショットガンを考案し、これが1984年にジャックハンマーとして世に問われる事になった。

しかし1984年と言えば既に朝鮮戦争から30年以上もの歳月が経過しており、軍用の銃器としてショットガンが必要とされる時代はそもそも等の昔に過ぎ去っていたとしか、素人目にも映らないようにしか思えない。

John Andersen, Public domain, via Wikimedia Commons

パンコール・ジャックハンマーの仕様

ジャックハンマーは、全長787mm、銃身長525mm、重量4.57kg、使用弾薬12ゲージ・ショットシェル、装弾数10発、フルオート時の発射速度は毎分240発と言う仕様であり、セミ・フルの射撃切り替えが可能となっている。
外観の印象は好き嫌いは分れるかも知れないが、ピストルグリップにブルパップ方式を採用、機関部の上部にはキャリング・ハンドルを兼ねたサイトを備え、どこかフランスのFAMASを思わせる近未来感があるデザインだ。

セミ・フルの切り替えが可能なオートマチック・ショットガンではあるが、発射後のショットシェル・薬莢を排莢するのではなく、巨大なリボルバーのように10発の容量の弾倉を回転させるブルパップ方式である。
一応発射時のガス圧を利用してバレルやシリンダー部分を動作させることでオートマチックに連続発射が可能だが、10発の装弾数を討ち尽くした際にはシリンダー毎交換する必要がある。

これはリボルバー式の拳銃等と異なり、空薬莢をシリンダー部分から取り除くのもで、再度使用者自身が予備のショットシェルを再装填する事は出来ない構造となっており、実用性に乏しいと言わざるを得ない。
使用する弾薬の12ゲージ・ショットシェル10発を収容するシリンダー部分は決して小さくはなく、これをマガジンのように複数携行するのは現実的ではないことは明らかで、量産化されなかった事も頷ける。

John Andersen, Public domain, via Wikimedia Commons

ジャックハンマーが存在する世界は二次元のゲームの中

現実の世界では受け入れられなかったジャックハンマーだが、その一風変わったデザインやフルオート射撃も可能という仕様は、一部のシューティング・ゲームなど二次元の世界では若干だが評価されているようだ。
そうしたゲーム内でしか見かける事が少ないジャックハンマー故に、一部の熱心なマニア以外には創作銃とも思われている可能性が高いが、一応軍用に設計された為に「MK3A1」と言うそれらしい名称が付与されている。

実際のジャックハンマーは設計された1984年時点で特許の出願が行われ、3年後にはそれを認可されているが、ついぞ量産化される事はなく、ほんの数丁の試作品が製造されたに過ぎない。
例えば拳銃の世界であれば、実用性には乏しくともS&W M500やデザート・イーグルのように50口径もの大口径故にコレクターズ・アイテムとして人気を博する場合もあるが、ジャックハンマーはそうはなれなかった。

これにはアメリカの政府機関であるATFが同銃を機関銃と認定した事も大きかったと見られるが、アサルト・ライフルやサブマシンガンでさえセミ・オート仕様にすれば市販されている事を鑑みれば決定打ではなさそうだ。
やはりショットガンの使用が想定されるのは、民間用であれば堅実な自衛用の銃器としてであり、そのためには簡素な構造が望まれた結果だと考えるのが妥当な線であろう。

ジャックハンマーに見る、軍用銃器の変遷

ジャックハンマーは設計者・ジョン・アンデルセンが自らの朝鮮戦争への従軍経験を経て、装弾数が多く連射が可能なショットガンの必要性を感じて生み出したと言うが、最初からニーズが薄かったとしか思えない。
軍用のショットガンとしては、ポンプアクションで5発の装弾数のウィンチェスターM1897がその当時は使用されていたと思われるが、そもそもこれは第一次世界大戦での塹壕戦向けの使用が最盛期だったと言える。

同様に当時の歩兵の携行する主力の銃器はボルト・アクション小銃であり、全長も長大で取り回しや連射が出来ず、これを打破する目的で拳銃弾を用いる為、1発の威力は低いが連射の利くサブマシンガンが投入された。
しかし第二次世界大戦で塹壕戦が過去のものとなると、凡そ50メートル以下の至近距離でしか効果の望めないサブマシンガンは廃れ、フルオート射撃も可能なバトル・ライフル、アサルト・ライフルへと変化していった。

軍用のショットガンもそうした変遷の中では警備用の補助的な銃器となっており、態々機構を複雑にし射程距離もサブマシンガン以上に短いものをフルオート射撃する意味がなかったと言うのが実情だろうと思われる。

featured image:NotLessOrEqual, CC0, via Wikimedia Commons

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