知る人ぞ知るクリエーター「今敏」氏、大学在学中にちばてつや賞を受賞して漫画家デビューした後、アニメ業界へ移行し「パーフェクトブルー」で監督デビュー。しかし46歳という若さでこの世を去ってしまいました。
遺された作品はそれほど多くないのですが、独特なアプローチで氏のテーマである「虚構と現実の混淆」を描いた作品は今でも高く評価され、影響を受けたクリエーターも数多く、特に「パプリカ」といえば、ああ!と思う方も少なくないでしょう。
パーフェクトブルー
パーフェクトブルーは今敏監督のアニメ映画の中で私が最も衝撃を受けた作品です。
1998年公開のアニメ映画ですが、それを感じさせない程作画が美しく今の時代でも高く評価されています。
タイトルだけで言えば爽やかな青春ものを想像しましたが、しかし実際はイメージを覆す人間のおぞましさ、疑心暗鬼、不安といった負の部分を、圧倒的な作画クオリティや不気味な音響で表現するサスペンスものに近いアニメです。
とにかくこの映画を見て思ったことは「気持ちが悪いけどまた見たい」。今敏監督の作品は大衆に媚びず、ひたすら自分の性癖や趣向を大事にしている部分があるからこそ、万人に評価されることはなくとも、時にガツンと人の感性に訴えかける力があります。
大まかな内容
内容は主人公の未麻がCHAMというアイドルグループから、ある理由で女優に転身した事から始まります。それをきっかけにストーカーから嫌がらせを受け、同時にやりたくない仕事を我慢してやる事、女優として売れるためには犠牲を払わなければならないという現実に直面することで、次第に追い詰められていくのです。
精神的に病んでいく未麻、かつてアイドルだった頃の衣装を身にまとい、自分が作り出したもう一人の「今の自分」に語りかけるようになっていく。
「本当はアイドルに戻りたいくせに」
「汚れちゃったアイドルなんて誰も好きにならない」
そんな中、未麻に関わった人物が次々と猟奇的な殺され方をする凄惨な事件が起こり、奇怪な出来事が日常を狂わせていき、事件の犯人に対する恐怖心が高まっていくのでした。
現実と虚構の境をさまよう少女達
今敏監督の作品に登場する少女の魅力は計り知れないものがあり、現実と虚構の境をさまよう少女達は作品の中で様々な表情を見せます。
その一つ一つが私たちを今敏監督の混沌とした世界観に引きずり込み、気がついた頃には不思議の国へ迷いこんだアリスのように深い夢の中へ落ちているのです。
(c) 1997 MADHOUSE
思った事を何でも!ネガティブOK!