ピート・ローズはなぜ許されないのか?

メジャー・リーグの歴史とか、日本のプロ野球との違いとかを見ると興味深いので、有名な事件をご紹介しますね。

日本ではわりと昔のプロ野球選手の話を知っていても、若い人は古い話だとからかう程度で全然乗ってこないでしょうが、アメリカのメジャー・リーグは100年以上の歴史を誇っていて、昔の大選手のプレイを見たことがあるという話は大変な自慢になるそう。
もとはお菓子のおまけだったという選手の野球カード、それにサインボールもかなりの価値がありますよね。
たしか昭和9年(1936年)にベーブ・ルース、ルー・ゲーリックら歴史に残る大スター選手を含むオールスターが来日したときのサインボールがテレビの鑑定番組で350万円だったかの値段が付けられたそうですが、今ではもっと高いんじゃないか、オークションに出せば天井知らずだぜと思いました。

この歴史に残る大選手たちは、ベーブ・ルースの予告ホームラン、病気(ルー・ゲーリック病)で引退するまで連続出場を続け記録を残したルー・ゲーリック、性格が悪くて誰からも嫌われた、いやそうじゃないと賛否両論のタイ・カッブから、アフリカ系初のメジャーリーガーのジャッキー・ロビンソン、連続ヒット記録のジョー・ディマジオ、ヤンキースの黄金時代を築いたホームラン王のミッキー・マントル、向こうむきキャッチのウィリー・メイズなどなど、枚挙にいとまがありません。
彼らは素晴らしい記録と個性的な言動でメジャー・リーグの歴史に名を残し、野球発祥の地にある野球殿堂に神のごとく祀られています。

しかしたったひとり、首位打者3回、通算安打数歴代トップの4256など、メジャー・リーグの歴史に燦然と輝くものすごい記録を残し、シンシナティ・レッズのワールドシリーズ優勝に貢献したのに、野球殿堂入りはおろか野球界を永久追放されてしまったのが、ピート・ローズ(1941~)です。
ローズはギャンブル好きで1989年に野球賭博に関わっていたことが発覚し、当時監督を務めていたレッズにも賭けていたため、コミッショナーに就任したばかりの元イエール大法学部教授のバート・ジアマッティ(関係ないけど、息子二人は性格俳優でひとりはアカデミー助演賞候補にもなったポール)が、最初の仕事としてローズを野球界から永久追放処分に。
そして大の野球ファンだったジアマッティ氏は、偉大なピート・ローズ処分の苦悩のあまり、直後に心臓発作で急死という悲劇も生みました。

ローズはその後、賭けで得た利益を脱税した罪で服役し、引退後当然ストレートで選出されるだろうと思われていた殿堂入りも永久追放のためになしになってしまいました。
ローズの記録は残っているし、ローズを認めるメジャー・リーガーたちは、偉大な選手であったローズを球界に復帰させろ、殿堂入りさせろとことあるごとに声をあげていますが、その後の歴代コミッショナーたちは拒否しています。
このことについてずいぶん前に、政治評論家で大の野球ファン(「MEN AT WORK」ベストセラー野球本の著者)のジョージ・ウィルが、「ローズが殿堂入りするならば、「野球賭博を行って永久追放になった」一文を入れなければいけない」とテレビの番組でコメントしていました。

ジョージ・ウィルは、ローズ個人の賭博が野球全体に及ぼす影響、つまり八百長疑惑につながることに言及したのです。
要するに、野球はゲームでプレイするといいますよね、日本語でplayは遊ぶと訳すのですが、真剣にプレイしたゲームで八百長やイカサマ行為があると少しでも思われれば終わりだということを強調していました。

私は日本の週刊誌で、あるプロ野球チームのスター投手をOB選手が名指し、「やってる、やってる」という、八百長疑惑について書かれた記事を見たのに、その後その記事はまったく発展せずうやむやになってしまったことを思い出し、なんだか目の覚めるような思いがしましたです。
日本の週刊誌の記事なんてびっくりするようなことが書いてあっても、その後は忘れられることばかりですが、アメリカの場合、こういうことをきっちりとアウトとファウルのように見極めて対処するということでしょう。

そういえばメジャー・リーグの知識の塊でセリーグ広報部長だった故伊東一雄氏が、シーズンオフのバイトでクラブでピアノを弾いていただけのメジャー・リーガーが、そのクラブが野球賭博をしていたことで永久追放の処分を受けたことがある、それほど、あちらの処分は厳しいものだと特徴のある巻き舌でコメントされていましたっけ。
日本ははっきり白黒つけがちな欧米と違い、灰色の部分があるといわれますが、このけじめのつけ方はやっぱりアメリカ的、清々しい感じで安心してゲームを見られると思いましたです。

不明Unknown author, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由

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