日本海軍が大和型戦艦を建造した理由を数値から探ってみる

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日本海軍は航空機が強力な武器となることを早期から予想していたにも関わらず、大和、武蔵という巨大戦艦を建造しました。このことは昔から議論の的となり、当時の海軍を批判する言説も多く生まれました。今回は”資源”の面から、このテーマの検証を行います。

検証方法

昔も今も、日本は資源に乏しい国です。そこで、今回は特に燃料という資源に的を絞り、同等の攻撃を行うのに必要な燃料の量を、1.戦艦を用いる場合 と、2.航空機を用いる場合 について、それぞれ推計します。

例として、味方基地より1800kmの海面に敵艦隊を発見、これを攻撃する場合で推計します。味方基地には艦艇と航空機、重油と航空燃料が、それぞれ十分な数存在すると仮定します。

検証結果

戦艦を用いる場合

戦艦大和を最高速度(27.46ノット)に近い26.6ノット(約48.55km/h)で現場へ急行させる場合を例に取ります。26.6ノットで走るために必要な機関出力は最大出力の80%です。

By 日本語: 神田 武夫English: Hasuya Hirohata [Public domain], via Wikimedia Commons

戦艦大和の機関は最大出力の80%で運転すると1時間当たり約44.76tの重油を消費します。48.55km/hで航行しているので、48.55km進むのに燃料を44.76t消費するわけです。したがって1km航行するのに必要な燃料は、44.76t/48.55km=0.922t と計算できます。

1800kmを急行するのに必要な重油は、1800km×0.922t/km=1659.6t になります。帰りも同じ速力で基地に戻ると仮定すれば、この2倍の3319.2t程度の重油が必要になります。

そして大和には、重量1.46tの主砲弾が主砲1門あたり最大で130発搭載できます。大和は9門の主砲を搭載しているので、大和は最大で1.46t×130×9≒1708.2tの砲弾を敵艦隊に浴びせることができます。

航空機を用いる場合

急降下爆撃機の銀河を味方基地の飛行場より発進させる場合を例に取ります。

銀河が搭載できる爆弾の重量は最大で1.0tです。したがって大和の砲弾と同じ量の爆弾を敵艦隊に浴びせるためには、1708機程度の銀河が必要になります。もっとも実際に1708機もの銀河を用意しなくても、例えば300機程度の銀河で6次に渡る空襲を行えば、大和の全砲弾に匹敵する量の爆弾を投下できます。

銀河の機体の自重は7265kg、燃料と爆弾を搭載した過荷重重量は13500kgです。この差分の6235kgから爆弾1000kgと3名の搭乗員の装備込みの体重の合計約250kgを引いた4986kgが、銀河に搭載できる燃料の重量です。片道1800kmという距離は銀河の最大攻撃半径に近いので、この燃料はほぼすべて消費されるものと推定できます。

すると必要な航空燃料は、4.986t×1708機=9009.7t 程度と計算できます。

結論

航空機で戦艦と同等の攻撃を行うためには、重量ベースで見て戦艦を用いた場合の2.71倍程度の燃料が必要なことが分かりました。

航空燃料と船舶燃料はいずれも原油から精製されますが、取れる量の違いから、航空燃料は船舶燃料より割高なようです。太平洋戦争当時のデータは見つからないのですが、現在だと航空燃料1tの価格は船舶燃料1tの価格の4倍程度になっているようです。

ということは、金額ベースで見ると、航空機による攻撃は戦艦を用いた場合の10~12倍ものコストがかかることになります。

まとめ

日本海軍が航空戦力を重視しながら大和型戦艦の建造に踏み切った理由、その一つがここにあります。大和型戦艦の建造が決定された当時においては、集中的に強力な攻撃を行う必要がある場合、航空機より水上艦艇の方が費用対効果が良く、攻撃力の集中も容易だったのです。

ならばなぜ戦艦の強力な攻撃力を活用できなかったか、このことは資源とはまた別の話になります。


Writing by  FT1990N
1/700艦船模型にハマっています。

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