MENU

鬼才 松本次郎が描く幕末歩兵秘話『列士満』

当サイトは「Googleアドセンス」や「アフィリエイトプログラム」に参加しており広告表示を含んでいます。

幕末。戦国と並んで歴史コンテンツ内では人気のある時代。今回ご紹介する漫画『列士満(レジマン)』(著: 松本次郎)も、そんな幕末が舞台の作品だ。ただし、新撰組や幕末の志士たちはほとんど登場しない。代わりに活躍するのは、なんと歩兵。

そんなマイナーなテーマを描くのは、ドラマ化された『いちげき』や独特の世界観が一度見たら忘れられないSF『女子工兵』でおなじみの鬼才・松本次郎。これだけでもインパクトが強い作品だとわかるだろう。
江戸と明治の狭間で鮮烈な生き様を遺した、名もなき男たちの戦い。今回はそんな彼らが紡ぐ物語の魅力に迫ってみよう。

目次

舞台は幕府陸軍歩兵隊!幕末に実在した彼らの知られざる戦い

突然だが、幕末に「歩兵」が存在したことを皆さんはご存知だろうか。「歩兵」と聞くと、やはり思い浮かぶのは、近代化された兵士や少なくとも欧米の軍隊。
幕末のイメージはない。だが、実は幕末にも「歩兵」は存在した。しかも幕府軍に。
幕末、近代的な軍備を整える必要にかられた江戸幕府は、歩兵隊を創設していたのだ。

かくして日本初の洋式軍隊「幕府陸軍歩兵隊」が誕生したわけだが、当初予定していた旗本からのなり手が集まらず、集まったのは百姓やならず物ばかり。武士としての身分も戦闘の腕もない彼らは、戦場でどう戦い、生き延びていくのか……。というのが、本作の大まかな内容とバックボーンだ。

物語も主人公の元博徒、スエキチを中心に、寄せ集めの兵士たちが各地を転戦していく様を中心に描いていく。幕府の特命を受けた庶民の男たち、というテーマはドラマ化された『いちげき』にも通じるものがあるが、「歩兵」であるぶん本作の方がより群衆感というか、有象無象感が強い。
戦い方も歩兵銃を用いた戦闘がメインで、(剣がメインの新選組など)他の幕末ものとは少し印象も違う。

華やかな幕末モノを思い浮かべて読むと、面食らう読者も多いかもしれない。だが一方で主人公スエキチをはじめ、どこか憎めない歩兵隊の面々がくりひろげる、作者お得意のドライなユーモア溢れる描写は親しみやすく、知らない世界にどんどん引きこまれる。『列士満』は幕府陸軍歩兵隊という馴染みの薄いテーマを扱いつつ、作者の筆力で読者を惹きつける。そんな作者の職人芸が光る作品と言えるだろう。

サムライの終わりと歩兵の始まり!カギを握るのは歩兵銃?

幕末に存在した近代式歩兵部隊を描いた漫画、『列士満』。ちなみにこの「列士満(レジメン)」とは「連隊」を意味する。主人公スエキチたちも部隊として編成され、物語の中で各地を転戦していくのだが、その際使用している装備にも注目だ。

基本的に彼らが使う武器は小銃。新選組や、幕末の志士たちのように刀ではない。当初、スエキチたちが使っているのはイギリスの小銃、エンフィールド1853。射程距離や命中精度に優れたこの銃だったが、弾込めは従来通り「先込め式」だったため、なかなか使うのに手間がかかったという代物だ。

作中でもその設定は生かされており、第一話から弾込めに手間どって主人公らがピンチに陥るシーンがある。また、主人公たちは最後、敗走する幕府軍に付き従って函館まで行くのだが、そこで登場するのがスペンサー銃。
「世界初の後装式連発銃」であるこちら、戊辰戦争あたりから旧幕府軍、新政府軍とわず使用されはじめたものだが、専用弾丸の入手が困難であったため、なかなか使われることがなかったとも言われている。

作中でもその設定は生かされており、スエキチは敵の薩摩軍から戦闘中に鹵獲。調達の難しさを語るシーンがある。敗走を続ける旧幕府軍と、勝ち戦を続ける新政府軍の残酷な戦力差が伺える良いシーンだ。ただ、惜しいのはこれらの背景情報についてあまり作中で説明されていないところ。しかし、気づいたポイントを調べてみると、興味深い史実が浮かび上がってもくる。作中の細かな描写にまで目を光らせてみれば、より作品を楽しむ事ができそうだ。

列士満をお勧め!

『列士満』は幕末の歩兵隊という馴染みがないモチーフを扱いつつ、ユーモアと描写力でじわじわと読者を引きこんでいく面白い作品だ。華やかなな幕末時代劇を思い浮かべて読むと肩透かしをくらうかもしれないが、読み込めば読み込むほど味わい深い作品でもある。

気になった方はぜひ、チャレンジしてみてはどうだろうか?

著:松本次郎
¥594 (2024/05/12 17:22時点 | Amazon調べ)

列士満 (C) 松本次郎 リイド社

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

どんな事でも感想を書いて!ネガティブも可!

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

目次