MENU

UFO神話とレプティリアン?冷戦とポスト冷戦の余白に

当サイトは「Googleアドセンス」や「アフィリエイトプログラム」に参加しており広告表示を含んでいます。

物好きな人物が語るところでは、バラク・オバマやヒラリー・クリントンはヒト型爬虫類(Reptilian humanoid)、日本語ではレプティリアンと呼ばれる地球外知的生命体とつるんで、国内政策や外交政策など、アメリカ政府の仕事をやっているそうだ。

そうだとすれば、地球外知的生命体の「知性」というやつは、大したものではない。せっかく遠い銀河の彼方から、宇宙船に乗って遠路はるばる地球にやってきたのだ。もっと華やかな政治的成果をあげてほしい。侵略や支配が目的であったとしても『インディペンデンス・デイ』(1996)よろしく、巨大すぎる宇宙船で一気呵成に攻めればよい。食料計画への関与や選挙結果の操作など、なぜセコい真似ばかりに精を出しているのか。

とはいえ、レプティリアンと国際政治をめぐる陰謀の物語は都市伝説のマーケットにおいて、かつての幽霊や未確認生物の存在が霞むほどの支持を集めている。書店にある週刊誌のコーナーに足を運ぶと、レプティリアンはフリーメイソンやイルミナティなどと共に、世界史を影で操ってきた壮大な物語を語るムック本が見つかる。

ポップカルチャーとしてのオカルトに愛着のある身としては、レプティリアンと陰謀論が一人勝ちしている現状には一抹の寂しさを感じなくもない。しかし、かくもレプティリアンが人気キャラクターの地位を獲得したのは何故なのか。

ここではレプティリアンの由来と現在に関しては、ひとまず置いておく。レプティリアンは1945年以降、延々と続いてきた国際政治と宇宙人たちの物語の現在形に過ぎないと思う。

目次

東西冷戦と宇宙人

今のところ、りゅう座アルファ星からレプティリアンはやってきた、という設定になっている。地球外知的生命体がUFO=エイリアン・クラフトに乗って地球に来訪。地球侵略を開始する…といった物語が、現実に起きうる出来事としてアメリカで誕生、一部の人々のあいだで信じ込まれるようになった歴史は、誕生から日が浅い。

UFOに乗った宇宙人が地球を訪れる物語が生まれた背景には、1945年以降の東西冷戦が深い影を落としている。UFOと宇宙人の物語は、当初から国際政治と軍事対立を「騙る」物語として支持されてきた側面がある。

東西冷戦下のアメリカでUFO神話が生成されていった歴史は一筋縄ではいかないが、ここでは国際政治と軍事の関係にのみ話題を絞って話を進めたい。日本の好事家にも知られた1947年のケネス・アーノルド事件(航空機のパイロットが飛行中、第二次大戦後のアメリカ国内で「UFO」を目撃)、1948年のマンテル大尉事件(戦闘機に乗ったアメリカ空軍のパイロットが、UFOを「追跡」した末に墜落死)が起きた当時のアメリカ国内の気分は、そう楽天的とは言えなかった。

数年前に終わった世界大戦の記憶は鮮明でありつつも、かつて共に枢軸国を倒したソビエトを中心とする共産圏との、冷戦対立が形成されつつあった。アメリカ国内では共産主義のシンパへの猜疑心、それに諜報戦に対する疑心暗鬼が高まる一方だった。

そうした情勢下で騒動となったケネス・アーノルド事件とマンテル大尉事件は、すぐさま「UFOに乗った宇宙人との遭遇」と解釈されたわけではない。ときのアメリカ政府と軍が、可能性のひとつとして疑ったのは地球外からの来訪者あるいは侵略として、ではない。UFOはソビエトの新兵器であり、アメリカ国内で諜報活動をおこなっているのではないか、という恐れからだ。市井の人々もまた、UFOは地球外から訪れた宇宙船なのか、共産圏から送り込まれた地球上のテクノロジーなのか、判断に困っていた。そのあいだにも第三次世界大戦、つまりソビエトとの核戦争の勃発、それがもたらす人類の終わりへの不安は、日に日に高まっていった。

1947年~1950年

1947年のケネス・アーノルド事件から朝鮮戦争が勃発する1950年まで、アメリカ軍関係者、それも現実の実務を担うレーダー管制官や空軍パイロットのあいだでUFOの目撃報告が頻発した。目撃者と報告のすべてが、必ずしもUFO=宇宙人と解釈したわけではない。ソビエトが情報収集のために送り込んだ航空機かもしれない、ひょっとするとアメリカ軍の秘密実験かもしれない。

わざわざUFOの専門調査会をアメリカ政府が設立したのは、地球外生命体とのコンタクトを図るためではない。現実に共産圏が送り込んでくる航空機やミサイルと、実在の疑わしいUFOを識別する実務上の問題に対処することが目的だった。

ほどなく専門調査会は結論を出した。大抵の目撃談は合理的に説明が可能である、原因が不明であると結論づけたケースは判断材料の不足によるものだ、以上。地球外生命体とのコンタクトではなく、安全保障上の実務に支障をきたす原因究明が調査の目的であったのだから、合理的かつ常識的な結論だった。

そうした調査結果は公的なプレスを通じて公表されたのだが、それで市井の感情が納得したかといえば、そうはいかなかった。調査と同時並行で、雑誌媒体や新聞、映画を通じて「UFO=宇宙人の乗り物」というイメージが、実話を装った体験談やストーリーによって、加速度的に形成、定着されていた。おそらくアメリカ軍はUFO=地球外知的生命体の宇宙船の残骸を回収している。地球外知的生命体とのコンタクトを図っているが、極秘裏のうちに行っているため公式見解を見合わせている、などなど。

その後もアメリカ政府は、航空学や軍事学の知見に基づいたUFOの調査結果を発表しつづけたが、発表内容の地味さは政権の不透明なイメージとあわせ、一部の人々には不信感を抱かせる結果を招き続け、あらぬUFO神話が生成されては変化していく。

1947年から1991年末まで、UFO神話は絶えず解体されては刷新されることを繰り返す。すでにアメリカ政府は地球外知的生命体とのコンタクトに成功している。協定を結んでいる。ソビエトも同様で、東西冷戦は宇宙人どうしの「代理戦争」である。そうして宇宙人たちは各国の政府中枢に入り込んで、東西各国の仲間入りを果たして…云々。むろん、いつまで経っても地球外知的生命体が巨大な宇宙船をともなって、ワシントンやクレムリンに降り立つことはなかった。

現在までつづくアメリカのUFO神話には、ある一貫した特徴が見出される。必ずといってよいほど、ホワイトハウスやクレムリン、時の政権の意向が物語にからむ。UFO神話を信奉する一部の集団が、政府の隠匿するUFOと宇宙人の秘密を暴露せんとして現実に紛争を起こし、挫折する。この一連のプロセスを現在のレプティリアン陰謀論に至るまで、飽きずに繰り返しているのだった。

このプロセスでは、UFO神話は行動の動機づけにまで後退。代わって政府と、政府の陰謀を暴こうとする人々の対立と紛争が全面にでてくる。UFO神話をめぐる歴史は、陰謀史観に基づいた政府へのカウンターという、奇妙な政治紛争の歴史でもある。

1950年~1991年

アメリカ国内でUFO神話が生成~変化していく過程を東西冷戦の歴史と重ね合わせたとき、絶えず共産圏と戦争を続けてきたアメリカの政情に晒されるフラストレーションの履け口として、UFO神話は求められた側面が感じられなくもない。同時代のSF小説やSF映画、スパイ・アクション、そして核戦争を描いたフィクションと合わせて。朝鮮戦争。赤狩り。核戦争の一歩手前で終息したキューバ危機。ベトナム参戦と撤退。いつミサイルが飛んでくるか分からないが、姿の見えない鉄のカーテンの向こう側。

そうした国内外の情勢と背中合わせのフラストレーションや閉塞感が、アメリカ国内でUFO神話を醸成させ、信奉者を育み、UFOをめぐる秘密など隠匿していない政府と衝突を繰り返させた要因のひとつでは、と感じる。実際、政府内部にソビエト側の工作員が潜んでいたり、大統領が訳の分からない理由で暗殺されたり、ベトナム参戦の理由のひとつが「やらせ」であったり、といった政治不信を招く事実は、現実に起きてはいた。

UFO神話とは、そのようなアメリカとソビエトの冷戦を歪に神話化した産物であり、UFOは東西の兵器その他、宇宙人の不可解さは政府関係者の理解しがたいパーソナリティを投影したキャラクターに過ぎない。それが、信奉者の奇妙な政治行動となって現実社会に浸食して…。

といったことを、冷戦史とUFO神話、レプティリアンの受容を眺めていると感じる瞬間があった。が、以前にこうしてUFO神話の理解や分析を試みようとしたとき、自身が陰謀論のような霧の中に迷い込んでしまう気がして、止めたのだった。UFO神話が冷戦対立の投影だとして、根拠や因果関係が実証できない以上、これから先に歩を進めるのは止めたい。これから先に踏み込めば、足を滑らせて陰謀論的な思考が始まる危険な発想に思える。

UFO神話は冷戦を騙る物語なのか?。
ならば、レプティリアンは何の象徴だと思うか?今は考えたくない。

インフルエンザに羅漢したときは、オカルトに触れないよう気をつけよう!
因果推論の能力がヤられるぞ。

参考文献
カーティス・ピープルズ『人類はなぜUFOと遭遇するのか』(訳 皆神龍太郎 文春文庫 2002)
青野利彦『冷戦史』(中公新書 2023)

※画像はイメージです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

どんな事でも感想を書いて!ネガティブも可!

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

目次