『よみがえる空 -RESCUE WINGS-』は2006年にテレビ東京系で深夜に放送された12話のアニメ作品です。DVDでリリースされた際に外伝が追加され、全13話となりました。
石川県にある航空自衛隊・小松救難隊を舞台にして、レスキューを生業とする自衛官の仕事と、彼らを取り巻く人々の姿を描いています。
また、この作品の二年後に同じく小松救難隊を描いた『空へ -救いの翼 RESCUE WINGS-』という実写映画も製作されています。
2018年11月にブルーレイBOXが発売と言うことで、現在、エピソードダイジェストがyoutube等で公開されています。
エピソード毎に4回に分けて、あらすじと見どころを紹介します!
エピソード1
第1話 初めての仕事
内田一宏は航空自衛隊の新人救難ヘリパイロット___小牧基地の救難教育隊でライセンスを取り、初めての配属先である石川県の航空自衛隊小松基地に赴任してきました。
彼の第一志望は戦闘機パイロット、F-15に乗りたくて高校生のころから努力を重ねてきたのですが、適正から救難ヘリに振り分けられ、切ない思いを抱えての転属だったのです。
小松救難隊の先輩である本郷修二郎はことさらに厳しく一宏に当たります。
初っ端からその洗礼を受けた一宏は、自分の立ち位置をまだ見定めることが出来ず、もがく日々でした。
荷物の少ない部屋の本棚には、彼が恐らく昔から大切に持ち歩いていた空に関する本が並んでいます。
後にアニメ映画が製作された『スカイ・クロラ』や、同シリーズの『ナ・バ・テア』といった森博嗣の本やリンドバーグの本、『星の王子さま』など、一宏の“空への憧れ”を表す本が並びます。
…その時、本が崩れ、CDが床に落ちました。
地震が起こったのです。
それは彼にとって大きな試練となる仕事の幕開けでした。
第2話 困難な仕事
日本海沿岸に地震が発生、離島で震度6強というニュースに、一宏も出勤し、災害派遣に備えることとなりました。
彼自身はまだ訓練中ということでヘリを飛ばすことはできませんが、現場では人が足らないことが明白なので、同行し、働くことになったのです。
非番の本郷も呼び出され、災害派遣に駆り出されました。
現在よりもSNSが発達しておらず、詳細が分からないままに、夜明けとともに偵察機U-125Aと救難ヘリUH-60Jは離陸していくのです。
淡々と進行していくその『仕事』と、島の惨状を目の当たりにして、一宏は心を奮い立たせていました。
一宏の恋人のめぐみは、東京の出版社に勤めていました。
地元の岡山の高校で知り合った二人は遠距離恋愛中だったのです。
会社で地震関連のニュースをみつめる彼女は一宏を心配していましたが、連絡するすべもなく、祈るしかありませんでした。
一宏は離島から負傷者を搬送する間、現地に残り、負傷者のケアをすることになりました。
体調を崩した高齢者の喘息の薬を半壊した自宅に取りに戻った彼は、その家から飼い猫を連れて飼い主のもとに届けました。
それはささやかな善意であり、飼い主に感謝され、一宏がほっとしたのもつかの間、騒ぎが起こります。
避難所から、一人の少女が行方不明になったというのです。
第3話 苦しい仕事
降り続く雨の中、さくらちゃん、という3歳の女の子は、一宏が連れ帰った猫を見て、避難するときに残してきた飼い犬を思い出し、誰にも言わずに自宅に戻ってしまいました。
そこに余震が起きて、彼女は崩れた家の下敷きになってしまったのです。
一宏に同行していたメディック(救難員)の黒木は島の住人を率いてさくらを救出すべく奮闘します。
天候が回復しないままに、状況はさらに悪化、さくらはがれきの下から助け出されたものの、搬送しようとするヘリの中で急変、怪我とクラッシュシンドロームで病院に着いた時にはもうこと切れていました。
自分の軽率な行為が招いてしまったかもしれないこの無残な結果に愕然とし、『必ず助ける(助けたい)』という気持ちに嘘は無くても、いきなり、現実の無情をつきつけられた一宏はその無力感を噛み締め、めぐみに電話をかけます。
彼は『ケータイ嫌い』で、お互いの連絡がすれ違う日々、留守電に残った声を確認するしかなかったのです。
一宏は公衆電話の受話器を握り、めぐみの留守電に『ホンマの声が聴きたいんじゃ』とつぶやきます。
みどころ
この作品が放送されたのが2006年の年明けでした。
まだ『震災』というものが、当時想像できたのが阪神大震災の都市型の被害でしかなく。
津波や、土砂崩れ、さまざまな二次災害と言うものは、正直、想像の遥か向こうにあって、島の生活が崩壊している様子を見て『こんな風になってしまうのか…?!』と今一つ実感がわかなかったのですが、その甘さは数年後に打ち砕かれることになりました。
東日本大震災で、この舞台でもある航空自衛隊の救難団・救難隊が大活躍したのは、多くの方がご存知のことでしょう。
取材を重ねて作られたその災害のレスキューシーンは、真に迫っていました。
救出した女の子を助けようと、島からヘリを飛ばすシーンで、海上自衛隊の護衛艦に着艦して給油するシーンや、滑走路の誘導灯の代わりに地元住民が自動車を並べてそのヘッドライトで照らしていたシーンは、後の実写版の映画でも再現されています。
『助けたい』と願う人々の気持ちが表れた、心を揺さぶられる場面です。
小松の街並みは当時のそのままで、空が曇っている様子や土地の空気が見事に再現されているとのこと。
実際、石川県のあたりは、晴天率がとても低く、いつもどんよりと曇っていることが多いのだそうです。
本意でない救難隊への配属という実状を抱えた主人公・内田一宏という人物の屈折した内面を、この空模様とリンクさせて描いているようにも思えました。
エピソード2
第4話 大切な人
小松救難隊も、ゴールデンウィークを迎え、当直以外は割り振られた休暇を消化していました。
帰省する予定だった一宏は部屋に引きこもっていたのです。彼が思うのは、島の地震のこと、そして亡くなったさくらちゃんのこと。自分がそこ(救難隊)にいる意味。
欝々としていたところに、めぐみが突然東京から訪ねてきました。
ぶっきらぼうな一宏に、懸命に話しかけるめぐみでしたが、彼女も自分の仕事で問題を抱えていたのです。
一宏は、金沢の街を案内している間にも携帯電話に次々かかってくる仕事の話に気を取られるめぐみに怒りを爆発させます。
しかし、その一宏の不安定さを気遣って、めぐみは小松までやってきたのです。
彼は、高校生の頃、初めて言葉を交わした時のことを振り返り、まだ挫折を知らなかった無邪気な自分を思い出していました。
めぐみは、文学少女で、その夢を追いかけて働いていました。
その彼女が一宏に手渡した高校の卒業祝いはサン・テグジュペリの本。
『このひとも、飛行機のりじゃて…』
それは、めぐみなりの精いっぱいの餞だったのです。
彼女に見送られてそこから始まった長い長い遠距離恋愛は、5年にもなろうとしていました。
めぐみの言葉は、頑なに凝り固まった一宏の心を解きほぐし、彼は少しだけ前を向けるようになったのです。
みどころ
仲直りした二人はデート先で職場のメディックの白拍子とばったり遭遇します。
その時に『おえんよ』という岡山弁(だめだ、という意味)を聞かれてしまいます。
口止めしたのにも関わらず、休暇明けには職場中に知れ渡り、『おえん』という言葉が蔓延し、いじり倒される日々が始まるのです。
この作品の中で唯一ともいうべき笑えるシーンです。
めぐみは、一宏のことを『ライ麦畑のキャッチャー』と言います。
無口で朴訥な一宏と対照的な、彼女の穏やかで豊かな言葉は、心に静かに染み入るのです。
(C) 2006 よみがえる空 -RESCUE WINGS- バンダイビジュアル
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