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SFC世代後期の輝きを見せた傑作「ルドラの秘宝」

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「人類に残された日数は・・・あと16日だ!」「な、なんだってー!?」
このようなやり取りも今やすっかりネットミームと化し、それも大方廃れたと見える世紀末から四半世紀を数えようというご時世になりました。
世間を見渡すと何か違う意味での世紀末感が漂う今、改めてあの時の「真面目に恐れていた」頃を見返すのに良い時期となったようにも思われます。

今回ご紹介する「ルドラの秘宝」は「(人類も含めた)種の滅亡」をテーマに掲げ、繰り返される種の成立、発展、闘争、滅亡を並べて「逃れようのない業」を冷徹なまでに突き付けた、スーパーファミコン時代の後期を彩る傑作と言えます。
最早現実の方が上滑りにこうした「問題」を消費しているようにすら見えるこの時代に、物語であるからこそ「真摯」な在り方を見返す楽しみもあると思う次第です。

目次

残された期限は「16日」、迫る滅亡の傍らで選択と決断が織り為す「群像劇」

「ルドラ」という何とも重々しい響きを持った語は、現実においてはインド神話に「暴風神」として語られる古い神格の名として表われるもので、本作においては「種の滅び」を体現するものとされます。
その存在が何であるのか、滅びなど伝説に語られるだけの空虚な存在ではないのか・・・4000年という長い時の中で、それはただのおとぎ話のように風化し誰も真剣には向き合わないながら、ふとした事でそれを思い出しては何とも言えない不安に、或いはそこへわずかな救いを求めるという「空気」が漂う「如何にも人間的な」世界を舞台に「その時」を「16日後」に控えた日からこの物語は始まります。

いわゆる剣と魔法(この世界では「ことだま」)の世界観をベースとしながら、所々に歪な形で入り込んだ機械技術やそれを上回る超技術、或いは魔法めいたオーパーツ等が混ざり合う黄昏色の世界で「4人」の主人公がそれぞれの視点で「終末の16日間」を巡る物語は、一見するとファンタジーながら進めるにつれて「ファンタジーを象ったSF」であるようにも「現代的な伝奇物語」にも見える不思議なモザイク模様を作り上げて行く事になります。

「ジェイド」と呼ばれる神宝

主人公となる4人の若者には、それぞれ「ジェイド」と呼ばれる神宝(「ルドラの秘宝」とは特にこれを指します)をそれぞれの事情によって得る事で、世界が直面してきた「4000年周期」の一端が示される事となります。
物語が垣間見せる「数度繰り返された滅びの痕跡」こそが、この物語の風景に異質な空気感を与える根源であり、抜けない刺のように残された痕跡の中で「滅びを免れる為に滅ぼされる者」の情念を痛々しくも切実に叫ぶ様は、旧来のRPG的演出で抑えられた中にあって尚も重く、痛切なものとして刻みつけられています。

この物語性において中でも白眉と言えるのは、その難易度もさる事ながら、位置づけ的に「各章の答え合わせ」とも言える・・・セーブファイルの並び上「上から」プレイしていく順序であれば「最後」にプレイされる事を織り込んでいる、かもしれない・・・「リザの章」で語られるエピソードの数々です。

世界の浄化を担う救世主

本作の物語が「避けられない滅び」であるはずの所に「世界の浄化を担う救世主」という役割を与えられて始まるこの章は、進めるに連れて黄昏色であった世界へ「色を取り戻すように」浄化が果たされていく物語となっています。
この「浄化」というのが、正に「当時の世相」を映し出すような「環境汚染」であるという所からして、当時のプレイヤー諸氏は身につまされる思いを抱えながら物語を読み進めたのではないかと「実際そうだった」筆者などは思う次第です。

而して「その過程」において突き付けられるのが「日常と化した汚染を糧に永らえてきた者」の怨嗟と嘲笑であり、なまじ物語であればこそ、そこに込められたおぞましくも「否定出来ない」思いを叩き付けられ、尚も踏み越えて行かねばならない所に本作を顧みる「価値」と言えるものが存在すると信じる次第です。
ゲーム的にはただ倒すべき標的に過ぎないものが、プレイヤーに対して傷を刻みつけて滅んで行く、その瞬間「主人公」も「敵」もただそれぞれ「生きるもの」として成り立つ「群像劇」を是非お知り置き頂きたいものです。

ギリギリまで詰め込まれた技術と情熱!シンプルで心に留まる芸術的「作り込み」を味わい尽くす!

本作のリリースは1996年、スーパーファミコンが数多くの名作を送り出した後、次世代機の台頭によってその競争が加速度を増してきた技術的な爛熟期と言える時期。
開発元であるスクウェアソフト(現スクウェア・エニックス)と言えば、この時期既に看板タイトルである「ファイナルファンタジー」が6作を数え、他にも「ロマンシング・サガ」や「聖剣伝説」といった人気ナンバリングタイトルを複数擁する、人気に見合った技術集団としても存在感を放っていました。

そんなスクウェアソフトが放つタイトルにあって正しく「異彩」を放っていた本作は、ゲーム画面だけを見れば驚く程にシンプル…むしろ「前時代的」な風情すら感じるものだったと言えます。

メニュー画面のインターフェースはブルーバックをデフォルトに、ウインドウ型のもので項目も基本的な「RPG」に踏襲されてきた「装備」や「コンフィグ」「セーブ」といった形でシンプルにまとまっています。
操作感もその見た目を裏切る事の無い「お馴染みの」感覚でプレイする事が出来、言うなれば「枯れた技術」としての完成度を実感する安定感で以てプレイに没入する事が出来るものでした。

と、この部分だけをクローズアップしたならば、ただの懐古主義が慣れ親しんだシステムを懐かしむだけの賛辞となってしまいますが、本作の「凄み」と言えるのは、こうしたプレイ感覚に直結する部分までも「切り詰める」選択として、敢えて「技術的な遺産」を導入して負荷を軽減したのではないかと言える所にあります。

「ことだま(言霊)」システム

そのこころとなる部分の一つが、本作の目玉システムにして、当時を知るプレイヤーなれば「今なお思い出が過ぎる」であろうと言ってしまえる「ことだま(言霊)」システムです。
これは「カタカナ50音+長音(ー)+濁音+半濁音」のそれぞれに「魔法効果とエフェクト」を設定した上に「6文字を上限とした文字列規則」によって「ゲーム中で魔法を作り出せる」という、正しく「ありそうで無かった」システムでした。

ハマる人間にはとことんハマるこの恐るべきシステムを前に、筆者などは本編そっちのけで何時間も頭を捻っては、大真面目に「かっこいい文字列」を探したり、或いは「おふざけ」を入れたりしては奇妙なエフェクトが出来る事だけを只管楽しんだものでした。
もちろんそれだけではなく、ゲームを進める内に「ことだま」というものが自分達の知っている言葉とはまるで違う法則で並べられた文字列であるという事が、例えば敵の使うものであったり、或いは宝箱の中に刻みつけられた文字列として示されて行きます。

強力なボスの使った技をコピーしてみたり、組み替え、並べ替えてどう変わるかといった「実験」によってプレイヤー自身にも経験を積む楽しみとなり、自分がゲームの世界へダイレクトに影響を与えていくような感覚として、このゲームへの深い没入感を与えていたものでした。
ちなみに、今でもこうしたプレイヤー達の「実験結果」の中にはインターネットを通じて公開されたものが見つかるもので、当時(或いは配信版を”新たに”プレイした人)のプレイ感覚を今に伝える「遺産」と言えるものかもしれません。

「章立てセーブデータ」方式

そしてこの「何時でも望む力を得る可能性」となったシステムによって一層掘り下げられるのが、群像劇シナリオを作り出す「章立てセーブデータ」方式でした。
本作のセーブデータは「ファイナルファンタジー」シリーズ等に類似したバックアップファイル方式を基本とするものですが、この大枠となる「ファイル」が2つ用意されている中に、初期状態で「主人公3人のシナリオ進行状況」がそれぞれ用意されているという形態になっています。

これは「16日間」という大枠を共有するそれぞれの主人公が「同時並行」でそれぞれの物語を進んでいるという「演出」を含んだシステム設計となっています。
故に一人で遊ぶ場合、3人の主人公をそれぞれ同日分並行して進めるも良し、一人の物語を一気に進めるも良しという遊び方が出来るものでした。

その進め方如何によって、物語の細部や難易度が若干変化したり、或いは「一方その頃・・・」といった感じで物語の見え方が大きく変わったりと、これまた「有りそうで無かった」仕組みが採用されたものとなっていました。

この「大枠としてのセーブファイル」内のシナリオでは、それぞれの主人公に対し「同じワールドマップ」が共有されている状態となっている事から、シナリオ的には徹底したフラグ管理によって異常進行が出来ないようにはなっているものの、エンカウント要素で「本来その時点では出会えない敵」と遭遇する事が出来る場所があったりしました。
これに「ことだま」システムを合せる事で、経験値や強力なアイテムを入手して進行上のハードルを下げるといった「楽しみ」もあったものです。(推奨はされないものでしょうが!)

当時の容量を考えれば驚きの演出

そうまでして「強敵と戦える」ようにしたくなると言うのが、これまた当時の容量を考えれば驚きの演出であった「ドット絵の美麗キャラクターアニメーション」そしてそれを盛り上げる「シンプルながら燃える名曲の数々」でした。

これは最早現物を見聞きして頂く以外に体感する事が難しいものではありますが、今見返してもそのデザイニングと動かし方には一見の価値有りと断言出来る数々のビジュアルに、各主人公毎に用意された道中ボス戦曲…分けてもプレイヤー人気が高く、個人的にはスーパーファミコン音楽トップ3にノミネートしたいリザ編「The Flame and Arrow」の存在は、一戦でも多くボス戦をプレイしたいと思わせる程の興奮を与えてくれるものでした。

最早アートとすら言える存在感「ルドラの秘宝」

これらの要素を隅から隅まで「余す事無く」詰め込んで、キッチリとした楽しみを作り上げた名作。
最早アートとすら言える存在感が「ルドラの秘宝」というタイトルの魅力だと言って憚りません。

本作は現在こそ配信停止となっていますが、過去Wiiバーチャルコンソールで配信されていた経緯がある為、今後再び配信が行われる期待も出来るものとはなっています。
リリース時期の悪さや有名メーカーでの単発タイトルという事もあって「知られざる名作」とされがちな作品ではありますが、是非多くの人に知ってもらいたい一作です。

居ても立ってもマヤ暦、犬も歩けばハルマゲドン、今夜のメニューはノストラダムス…と、それはそれは感受性豊かな子供達を恐怖のどん底へ叩き落とし続けてくれた1990年代末期ではございましたが、それもすっかり過去の物。それでもそんな時代に「輝き」を放っていたものも確かにあったんだと思います。歳でしょうか?

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