戦前の西日本の海軍基地にあった、まるで「艦これ」のような噂です。
夜な夜な会話する艦の噂
西日本のとある海軍基地では、夜な夜な軍艦どうしが人間のように寄り合いを開いて会話をするという噂が広まっていた。
昼間はもっぱらタダの鉄のかたまりとして人間に操舵されて海を行き来するのだが、真夜中になると停泊している艦どうしが人間の如く会話をする声が聞こえてくるというのである。
その会話内容は主に任務報告のようなものや、時には笑い声や愚痴なども聞こえたらしい。
まんま「艦これ」「アズレン」みたいな話だが、そんな可愛らしい代物ではなく、野太く低い男の声ばかりであったという。口調は軍人口調だったり日常的な口調だったりと様々。戦艦は日本男児らしい立派な感じの声色だったが、艦のクラスが下がるほどやる気のなさそうな印象だったらしい。
基地の周りは海に接した山で囲まれており、キツネやタヌキも多く出たので、それらが艦内に紛れ込んで化けているのでは?という話もあった。
戦地へ仲間を見送る艦の声
やがて太平洋戦争で沢山の艦が南方へ向けて出撃するようになった。すると夜間の歩哨は艦の方から仲間を送るような軍歌の歌声をしばしば耳にするようになったという。
そして戦争も末期になり、基地所属の艦が次々と遠い南方で轟沈するようになる。
もはや出撃ではなく玉砕するための死出の旅のようになってくると、艦どうしの声は嗚咽まじりの声と叱咤激励するような声の混ざった、何とも言えないものに変わってきたという。
やがて基地自体も空襲に遭い、たくさんの艦が沈められたり大破して壊滅状態になる。
すると途端に艦の声が聞こえなくなった。夜の基地はすっかり静かになり、そのまま終戦に。
騒がしかった艦たちはもう二度と声を発しないまま、戦後に全艦スクラップにされたという。
日本の神道では森羅万象に全ての物に神が宿る、八百万神(やおよろずのかみ)と呼ばれるものだ。
もしかしたら、当時の海軍の人々の魂がやどり、しらずしらずに八百万神になってしまってのではないだろうか?
すこし寂しい軍艦たちの話である。
※画像はイメージです。
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