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宗教的観点から見る生贄風習の歴史

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創作の作品ではよく見かけるだろう、人里を襲う荒ぶる人外の存在に生贄を選別し供物として差し出す緊迫のシーン。安寧を脅かされた者たちが要求されたものを差し出すのが一連の流れだが、そもそもこの風習いつから存在してどのような歴史があるか気になった。

「生贄を欲する存在」や「生贄となる存在」は「風習が伝わる国柄」によって違いがあるのか。あるいは共通点は。調べた内容と見解を書き散らしていく。

目次

生贄の起源

贄を捧げる儀式のことを「供犠(くぎ)」という。各国の風習に関する文献を見るだけでも供犠の習慣は古代エジプトの時代から存在している。他の書物に目を通すと旧約聖書の中にも記述があり、贖罪の日に荒野に追放されるヤギに関して書かれ、このヤギはスケープゴートの語源にもなっている。

日本でも神話の「八岐大蛇伝説(後述に出てくるので覚えていてほしい)」などが挙げられ、古事記や日本書紀といった時代にはすでに牛や馬を献上する供犠は存在している。こうして比べると、古来から供犠の風習が文献に残る地域には神を信仰する宗教の存在が同様に根付いているのがわかる。供物を捧げる相手や捧げる動機を、宗教的思想や理念などの共通点から見ていく。

生贄の献上先とその動機

先述の通り供犠の慣習は信仰宗教の傍らにあることが多い。当時の人間が供物を捧げた時そこには荒ぶる海や止まない雨、流行り病などがあり、それらを引き起こしているのは神であるとされていた。今でこそ天災の原因は科学的な解明がされ効果的な対策も講じられているが、昔の人間にとっては津波や地震、台風や病といった猛威と呼べるものは全て人ならざる存在の仕業だった。

国や文化によって妖怪、妖精などその概念に差はあったが、中でも「神」という存在は様々な文化圏や宗教圏に共通した。人々は天災は神の怒りの感情であると考え、鎮めるために供物を捧げた。「畏怖」という言葉には「怖れる」他に「畏(かしこ)まる」つまり敬いのニュアンスも含む。宗教的観点から行われる供犠の動機の根底には、時に猛威を振るう反面豊穣などの恩恵も与え給う神への敬意も存在している。

捧げ物は「神に近い存在」

最古を目掛けて文献を漁れば供物として捧げられたものの多くは牛や馬といった動物が多い。創作の作品に見られるような人間を供物にした供犠はなかったのかと言われれば、しっかりその記録は存在する。神や天災を起こす存在に供物として捧げられる人間を「人身御供」と呼ぶ。暴れ川に架ける橋の柱に生きた人間を埋め込んだことが由来の「人柱」は厳密にいえば供犠でも供物でもないので割愛する。

神に捧げる供物となる存在は他の個体と区別される。目が二つあるより一つの方が神に近しいとして、供物に選ばれた動物や魚などは目を片方取り一目で供物とわかるようにしたという。人間の場合も、集落の中で知恵遅れや体が五体満足でないなど非健常者が神に近い存在として供物に選ばれやすかった。加えて七つの誕生日を迎えていない子供も人身御供として選ばれた。これは「人間の魂は六つまでは神に守られていて、七つの誕生日を迎えて初めて神の庇護から外れる」という習わしに由来している。

「七つを迎えるまでは子供は神様の所有物、供物として選ぶのは子を殺すのではなく神の元に還す行為である」という考えの元、子供を用いた供犠は行われていた。「子供が神に近しい存在である」という考えは日本の他の文化圏にも散見され、中には一度に140人もの子供が捧げられた供犠の記録もある。

現代における供犠と信仰

現代では当たり前だが、生身の人間を神への供物に仕立てる行為は道徳的に否定され、表立って人身御供を立てる供犠は行われていない。科学が発達した現代では天災は正しく恐怖され、正しく解決策が練られ、人身御供を用いた供犠を行う必要はなくなった。なら同時に神への信仰や畏怖の念がなくなったかと問われると否である。馬や牛、人間の首の代わりに木彫りの人形や饅頭を使い、豊穣と地鎮を祈る供犠は今も行われている。

生贄を欲した八岐大蛇が須佐之男命に倒される日本神話の「八岐大蛇伝説」は人間を供物にする供犠の風習の廃止を神話化したという説もあるし、時代が移るとともに人身御供の慣習は廃れ、神に対する信仰心は変わらず残ったということだろう。

・・・ここまで読み進めて「おや?」と思った読者。
八岐大蛇伝説とはだいぶ昔からある神話だよな?この神話が広まった後の時代にも人身御供の供犠の記録は各地で残ってるぞ?
加えてかつての日本で人身御供として選ばれたのがどのような存在か、先述した「神に近しいとされた存在」に対して言いようのない違和を抱いた者もいるだろうが、本稿は観点を宗教的思想に絞る目的からあえて触れずにおく。

人身御供の供犠が横行した当時の時代背景に関して、聡く興味の湧いた者、またイヤな予感のした者はぜひ自力でも調べてみてほしい。

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