個人が単独で携帯し使用する銃火器は主として小火器と呼ばれる事が多いが、最小の単位であるハンドガン(拳銃)よりも総じて大型で火力も大きいものが複数の分野に渡って存在する。
それらの主な小火器として
- SMG(サブ・マシンガン=短機関銃)
- PDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン=個人防御火器)
- PCC(ピストル・キャリバー・カービン)
それぞれ重複する機能もあるが別のカテゴリーと目される事が多い。
正直なところこれらの小火器は、外観上の特徴や機能面からも類似する点も多く、相互に重複する分野を抱えているとも言えそうだが、コンセプトや用途を踏まえた場合、製造元を含め区別していると思える。
これら3種の紹介の中では、やはり①SMG(サブ・マシンガン=短機関銃)が最も長い歴史を持ち、そこから用途や機能を特化させたものが残りの2種として作り出されたと言うのが大まかな流れではあろう。
銃火器に興味になる方ならば、最も馴染の深いものは①SMG(サブ・マシンガン=短機関銃)だと思われるが、今回は改めてこの3者がカテゴライズされている定義について解説していきたいと思う。
それぞれの大まかな定義
傍目には一見すると外観上の類似点が多い、SMG(サブ・マシンガン=短機関銃)、PDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン=個人防御火器)、PCC(ピストル・キャリバー・カービン)。
大まかな定義は以下となる。
SMG(サブ・マシンガン)
SMG(サブ・マシンガン=短機関銃)は、使用する弾薬=拳銃弾、発射方式=フル・オート(一部でセミ・オート切り替えも可能)、近接戦闘を前提とした短距離向けな小火器と解釈されている。
これらの小火器の中で最も長い歴史を持ち、その特徴や用途も時代に併せて変化・変遷を辿ってきたもので、最もメジャーな小火器だと思われる。
SMGの元祖は、イタリアはオフィチーネ・ビラール・ペロサ社が開発したM1915とされ、同銃は9×19mmの拳銃弾を使用するが、航空機の兵装として開発されたものであった。
当時の黎明期の航空機の兵装として開発されたオフィチーネ・ビラール・ペロサM1915ではあったが、弾薬に小銃弾を使用する軽機関銃に比して威力不足は否めず、その役割は後者に譲り普及はしなかった。
そこでこのオフィチーネ・ビラール・ペロサM1915を陸上戦闘用に改良したベレッタ社のM1918が開発されたが、実用的にその分野を開拓したものは、ドイツのベルグマン社のMP18だと見做す意見が大勢を占めている。
ベルグマンMP18は1914年に生起した第一次世界大戦において、その戦いの大半が塹壕戦となり、双方の軍が膠着した状態に置かれた中で、その突破を図る浸透戦術を実施する為の歩兵用の小火器として開発された。
ベルグマンMP18は全長818mm、銃身長201mm、重量4.35kgの本体に9×19mm弾を主とした拳銃弾仕様の20連発のボックス・マガジンや32連初のドラム・マガジンを備え、オーオプン・ボルト方式でセミ・フルの切り替えが可能で、発射速度は毎分350~450発、有効射程は凡そ100m程とされている。
当時の通常の歩兵の装備がフルサイズの大型な単発式のボルト・アクション式の小銃であった事に対し、射程や威力に劣るものの、ベルグマンMP18は小型で取り回しに優れ、塹壕戦での制圧攻撃に画期的な効果を発揮した。
但しこのベルグマンMP18が戦場に投入されたのは、第一次成果大戦も末期の1918年3月のカイザー・シュラハト攻勢からであり、部分的に成功は収めたものの、同年11月にはドイツは敗れて終戦を迎えた。
しかしこのベルグマンMP18の有用性が塹壕戦で証明された為、以後世界各国で次の第二次世界大戦でも①SMG(サブ・マシンガン=短機関銃)は多数が用いられ、近距離戦闘用の支援火器として重用された。
第2次世界大戦後もオーオプン・ボルト方式のSMG、イスラエル製のUZI等がプレス加工を多用した簡易な造りで且つ堅牢、信頼性の高さから軍でも使用された。
しかしアサルト・ライフルが歩兵の主装備となった1970年台以後は、それらがフル・オート射撃時の命中精度及び反動制御の容易になった事で、軍における、SMGの必要性は薄れ廃れた。
そうした中、クローズド・ボルト方式を採用したドイツのH&K社製のMP5が1960年台後半に開発され、リリース後、暫くは注目されなかったが、1977年のルフトハンザ航空ハイジャック事件をドイツ警察の特殊部隊(GSG-9)が同銃を用いて解決する。
そこでH&K MP5は非常に精緻な射撃が可能な小火器として世界に認知され、それまでの軍の一般装備としてではなく、主として特殊部隊が装備するメイン・アームとして世界中で採用され、今も多くが使用されている。
PDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン)
PDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン=個人防御火器)は、使用する弾薬=専用の貫通力の高い小口径弾、発射方式=フル・オート(一部でセミ・オート切り替えも可能)、ボディ・アーマーの貫通を意図したもの。
SMGの近年のベストセラーとして、世界中の軍や法執行機関の特殊部隊の装備として成功を収めたH&K MP5だったが、精緻な射撃か可能でも拳銃弾使用故の威力不足は否めなかった。
殊にボディ・アーマーの性能が飛躍的に向上し、拳銃弾での貫通が困難なものが普及を始めると、従来のSMGのこの点が問題視され始め、その解決策として新たな小火器が生み出された。
其れこそが、PDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン=個人防御火器)と呼称されるもので、ベルギーのFNハースタル社が1990年にリリースしたP90が同分野の先駆となったと見る事が出来る。
FN P90は貫通力に秀でた専用の5.7x28mm弾を使用する為に開発され、ブルパップ方式を採用した近未来的なデザインが印象的な小火器だが、やはり1996年12月に起こったペルー日本大使公邸占拠事件で、ペルー軍の特殊部隊が使用した事で注目を集めた。
FN P90は全長500mm、銃身長263m、重量2.45kgの本体に5.7x28mm弾を50発も装填可能なマガジンを備え、クローズド・ボルト方式でセミ・フルの切り替えが可能で、発射速度は毎分900発、最大射程は凡そ1,800mとされている。
2024年現在、FN P90は約40ケ国で採用実績があるとされているが、ドイツのH&K社も1999年からH&K PDW、2001年にMP7と名称を変更した、PDWをリリース、同市場へ参入した。
H&K MP7も専用の4.6mm×30弾を使用するが、全長415mm、銃身長180mm、重量1.95kgの本体に最大40発のマガジンを備え、クローズド・ボルト方式でセミ・フルの切り替えが可能で、発射速度は毎分950発、有効射程は凡そ200mとされている。
FN P90と異なりH&K MP7はマガジンをグリップ内に収め、折り畳みストックを備えたオーソドックスなデザインで、操作系もMP5や西側の多くのアサルト・ライフルに寄せたある種保守的ながら堅実な造りとしている。
其れもあって9年以上も市場投入で先行したFN P90よりも、現時点では世界各国の特殊部隊を中心に評価されている感が強く、MP5の代替需要を一手に担いそうな勢いを感じさせる。
FN P90やH&K MP7をPDWの例として紹介したが、同分野は大枠ではSMGに内包されている状態に近いのが実情に思える。
PCC(ピストル・キャリバー・カービン)
PCC(ピストル・キャリバー・カービン)は、使用する弾薬=拳銃弾、発射方式=基本はセミ・オートで一部でフル・オートへの切り替えも可能、ベースとなるアサルト・ライフル等の操作系をそのまま踏襲した設計となっている。
PCC(ピストル・キャリバー・カービン)とは、主としてアメリカの民間需要向けに開発されている小火器で、通常の拳銃弾として普及している9×19mm弾、40S&W弾、45ACP弾などを使用するセミ・オートのライフルを指す。
セミ・オートライフルと言っても、PCCの名称からも想像できるようにフルサイズのライフルよりも全長・銃身長共に短められた仕様で、見た目はアサルト・ライフルに近い。
アメリカと言えど、PCCは、銃器の民間での所持の許可の点ではショートバレル・ライフルと言う扱いで、比較的に簡便に所持が可能な小火器として一定のニーズを満たしている。
多くのPCCは、外観からも分かるようにAR-15系統の操作系を踏襲しており、拳銃弾を使用する反動の少なさを含め、その扱いやすさからアメリカの民間市場で注目されている。
PCCの例としては、チェコのチャスカ―・ズブロヨフカ社が開発したCZスコーピオンEVO3 S1があり、同銃は軍や法執行機関用にはフル・オート機能も備えたA1もある。
CZスコーピオンEVO3 S1は、全長410mm、銃身長196mm、重量2.77kgの本体に最大30発のマガジンを備え、クローズド・ボルト方式でセミ・オートのみ、取り外す事も可能な折り畳み式のストックを備えている。
ハンドガンをフル・オート射撃可能とした小火器・マシン・ピストル
これまで紹介してきた、SMG(サブ・マシンガン=短機関銃)、PDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン=個人防御火器)、PCC(ピストル・キャリバー・カービン)とは別に、マシン・ピストルという分野も存在する。
マシン・ピストルとは平たく言えばセミ・オートのハンドガンをベースに、それにフル・オートの発射機構を持たせたもので、古くはドイツ・モーゼル社のM712や、近年ではベレッタ社の93Rなどが知られている。
ベースが軽量なハンドガンであるため、フル・オートで射撃をする事が可能なマシン・ピストルは命中精度や反動の抑制に難がある事は想像に難くなく、実用性の観点からは小型のSMGに及ばないと思われる。
其れもあって軍や特殊部隊等の組織が率先してマシン・ピストルを採用している例はほとんどない状態であり、活躍の場はフィクションのアクション映画等に限られると言って過言ではないだろう。
様々な小火器に思うこと
これまで紹介してきた、SMG(サブ・マシンガン=短機関銃)、PDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン=個人防御火器)、PCC(ピストル・キャリバー・カービン)など、小火器も様々な新型が登場してきている。
PCC(ピストル・キャリバー・カービン)はそれらの中でも、アメリカの民間需要を満たすカテゴリーであり、独立した小火器の分野として前の二つと並列に並べる事は、本来は適切ではないのかも知れない。
個人的にはPDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン=個人防御火器)が今後どのように進化を遂げて行くのかが最も気になっているのだが、既にこの銃弾すらも貫通を防止できるボディ・アーマーも出現していると言う。
それを思えば更に強力な新型の銃弾が開発される事となるのかなど興味は尽きないが、世界標準ともなっている9×19mm弾を限界まで強化し、既存の小火器の有効活用を図る動きもあるのではないかと感じている。
※画像はイメージです。


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