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息子

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あれは八年前の事だった。
毎年恒例の夏に家族で旅行に行った時の出来事だ!

夫、息子、娘そして私、夫と言ってもその時点ではまだ内縁の夫だった。
いつからか突然に始まった夏の恒例行事になった家族旅行!

旅行と言っても海外ではなく国内旅行だった。海外など一度も行ったことがない。
みんな興味がなかったから。

「やっぱり日本の温泉が一番だよね」
「でも夏は暑いからまたお母さんが弱音を吐くよ」と息子が言う!そうなのだ!

私は暑さに弱く少しでも暑いとすぐに暑い暑いと一人でうるさい。
それは自分でもわかってはいるけど夫の休みが夏でないと取れなかったからだ。
行くなら気温がいい春などが最適だけど旅行に行けるならと、夏で我慢した。
行先はいつも私が一人で決めていた。

色んな旅の本を購入し、どこに行こうか選ぶのがまた楽しい!
「どこでもいいけどあまり遠くはダメよ」と夫が言う。
「行きたいとこ選んでいいよ」と息子が言う。
「○○行きたい」と娘が言う。
私は娘の行きたい所と私が行きたい所を選ぶ!

私は神社巡りが大好きなのでついつい、そういう所を選んでしまう。
娘は泳ぐのが好きなので海水浴場などを探す。
車で行くのであまり遠くへは行けないし、行ける所が限られるから困るのだった。

何度か同じ所へ行った事もあるけど初めて見る光景とは違って感激はあまりなかった。
「じゃあ今年はどこに行こうかな」
私は旅行の本を数冊出して真剣に選ぶ!

「見せて」と娘が数冊のうちの何冊か見ている。
夫と息子は他人事のように知らん顔して電話テレビに夢中になっている。
これも毎年恒例の事なのだった。

行きたい所を選ぶのは私、母の特権だった。
旅行の本とにらめっこしながらとりあえず行きたい場所を紙に書いていく、例えば福岡だったら大宰府に行く、次に○○に行くと、大宰府から○○までの目的地までどのくらいで着くかとか、具体的に書いていくのだ。
その作業が一番、面倒だった。

苦労して制作した旅行プランを夫に見せる
「ふーんいいんじゃない」
次に息子に「こんな所からあんな所までどのくらい時間かかるか分かるんね」いつもこの感じだ!

一時期、くまモンにハマってくまモンの故郷に行きたくなり熊本県まで行き玉名駅という所でくまモングッズを買い漁った事がある。
熊本県はもう三回行ってる。住んでいる所から車で六〜七時間以上かかる、ある夏休み、いつものように熊本に行った!

その日は沖縄から熊本県にかけて台風が接近していた。
熊本は大雨でいつも立ち寄る玉名駅も大雨と暴風で立ち入り禁止となっていて入れなかった!

残念だったけど台風がもう後ろまで来てる事を知り急いで宿泊する旅館に向かったのだった、そこは山口県だった。
急いで車を飛ばしても後ろから来る台風にはかなわなかった。
台風の影響で大雨と暴風、前がよく見えない!

熊本県から山口県の距離は遠かった台風に追いかけられながら、ようやく山口県の旅館に着いたのは十時三十分を過ぎていた。
私たちはいつも素泊まりだったので食事の心配はなかったが、とりあえずお腹も空いたし食べて早く温泉に浸かりたかった。

旅館にある居酒屋に行きビールを頼む。みんなでお疲れ様でしたと乾杯する。
それもつかの間、旅館の温泉が十二時で閉まる事を聞いた。

「ええーっ」これは早く行かなきゃと食事もほとんど食べていない状態で部屋に急いで帰って行ったが、そういう時に限って旅館がだだっ広い……。
急いで温泉までたどり着き入浴したがなんせ入浴時間が迫ってたので長居は出来ず、すぐ上がる羽目になったのだ。
食事もほとんど出来ず温泉も中途半端で何もかもが満足出来なかった……。

が台風と対決は実に面白かった。
後ろから台風が迫ってるなか私たちは逃げる。
久しぶりにハラハラ、ドキドキで興奮した。
その日はみんな疲れてたのでよく眠った。

主人以外はみな朝に弱いので起こすのは主人の役目、次々と起こされ帰る準備をする!
これも我が家の恒例なのだ。帰りは順調だったが私がトイレに行きたくなった事を告げると公園ならあると言われそこまで行き降りようとしたら息子が「気をつけんと夜の公園は変質者が出るよ」と怖い事を言う!

そんな人滅多にいるわけないじゃんと思いながらもあたりは真っ暗で何も見えてないので少し怖かったがトイレを見つけ近づこうとしたら暗闇から人影が見えた!
息子の言葉が頭をよぎった。恐怖で顔がこわばり動けない!
声を出そうとしても出ない!
こっちに来る!
殺されると感じた瞬間!

「ギャーっ」おしっこが少し漏れ。「へへへっ」と声が聞こえた。聞き覚えのある声だ!
よく見ると息子だった。

私は今までで一番恐怖を覚えた!
そう台風が後ろから迫ってくるよりも息子が怖かった……。

ペンネーム:小栗すえ太郎
怖い話公募コンペ参加作品です。もしよければ、評価や感想をお願いします。

※画像はイメージです。

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