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スポッターとスナイパーはツーマンセル?スポッターの役割とは?

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軍隊と戦場を舞台としたアクション物のTVドラマや映画では、ある時は森や林などの中からまた塹壕のような場所を始め、またある時は建物内からスコープ越しに敵兵を狙うスナイパーをよく目にする。
概ね敵に視認されないように視覚的に巧妙にカモフラージュされたそれらスナイパー達は、冷たくまっすぐと伸びた銃口の先を見据えて静寂の中に潜んでおり、一撃必中の機会を狙っている。

そんなどこか孤高な雰囲気が漂うスナイパーの姿を、大多数の方が少なからず一度は映像等で目にした見た事があると思えるのだが、近年の軍隊では彼らが単独でそうした形の任務に従事する事はほとんどない。
軍隊のスナイパーの傍らにはほぼ間違いなく相棒であり、その狙撃をより確実なものとして成立させる為の要員が配置されており、彼らこそが影の主役とも言うべきスポッターである。

目次

軍隊における狙撃任務の陰の主役スポッター

日本語では観測手と訳される事の多いスポッターだが、実際に狙撃任務において狙撃銃の引き金を引くスナイパーに比すれば、些か地味に感じられる役割故かスポットライトが当たる機会は少なく感じられる。

しかし狙撃銃の引き金を実際に引くスナイパーの行為の成否には、如何に有能なスポッターがサポートを行うかが大きく影響すると考えられ、スポッターこそが任務の主役だと見る向きも多い。
つまり近代的な軍隊における狙撃任務とはスナイパーと狙撃銃とが担う射撃そのものよりも、スポッターを含めたチーム運用にその要諦があり、そこを含めた兵器システムと見做す事が出来る。

これは狙撃銃と言う一見個々のスナイパーのパーソナルな銃器運用の攻撃と言うより、もっと大きな例えば火砲のように複数名で行われる兵器システム運用にも似た形態であり、砲手と指揮官の関係のようなものだ。
火砲運用においては砲手が砲弾を発射する実務を担当するが、攻撃目標の選定やタイミング等の指示は指揮官によって行われるように、スポッターもスナイパーへの同様の役割を担う存在だと言えるだろう。

このため軍隊のスポッターは自らもスナイパーとしての射撃経験を積んだ人物が担当するケースが多く、その大半がスナイパーよりも上位の階級であり指示命令系統上からもそれは定義されていると言える。

スポッターが担っている役割

軍隊の狙撃任務においてスナイパーとタッグを組むスポッターは、マクロな視点で見た場合には偵察・斥候と言った戦場の監視任務を担う存在であることも多いとされている。
これはスナイパーと共に敵から極力発見されにくいように自らの存在を隠匿している事も寄与していると思われるが、小型の望遠鏡のような精緻に戦場を観察可能なスポッター・スコープを装備している事も大きい。

スナイパーが狙撃銃を固定して正確な射撃が出来るようにしているのと同じく、スポッターもまた主として三脚等に固定して倍率20~60倍のスポッター・スコープを運用、友軍の一番目の目として機能させる。
またミクロな視点ではこうしたスポッター・スコープを通してスナイパーの放つ銃弾の着弾点を観測して、スナイパーへの射撃位置の修正の指示を行う事が最大の役割となる。

スポッターはスナイパーの射撃に先立ち、刻々と変化する戦場の気象状況を考慮して最適な指示を与える存在であり、弾道に最も影響が大きい風向きは元より、湿度や気温迄加味した上で指示を下す。
またスナイパーが標的を捉え引き金を引く事のみに全神経を集中する中では、敵からの攻撃を防ぐ役割もスポッターに課されており、狙撃銃と異なり近中距離への全自動射撃が可能なアサルト・ライフルの装備が一般的とされる。
これはスナイパーの持つ狙撃銃はボルトアクション方式か半自動式のものが大半であり、近中距離への制圧者射撃には不向きである事から、そのカバーには欠かす事の出来ない役割となっている。

余談だが今も続く劇画漫画の金字塔「ゴルゴ13」の主人公であるデューク東郷は、大半の場合M-16を狙撃にも使用しており、殊に長距離射撃時の威力や命中精度において同銃の使用する5.56×45mmNATO弾には難があるとも思える。
しかし孤高のスナイパーであるデューク・東郷は基本スポッターを伴わず1人で行動する為に、万が一の敵からの攻撃に備えて全自動の制圧射撃が可能なM-16を敢えて使用していると述べるエピソードがあり、説得力を持たせている。

スナイパーとスポッターに類似した存在マークスマン

前述してきたように軍隊におけるスナイパーとスポッターが担っている狙撃任務には、アメリカ陸軍の場合にはマークスマンと呼ばれる歩兵分隊若しくは小隊単位で配置された兵士があたるケーズもあるが同一ではない。
マークスマンは歩兵の中から射撃技能に秀でた兵が選抜されたもので、一般の歩兵よりも長距離である凡そ800メートル前後の狙撃を行うべく、アサルト・ライフルベースの半自動式小銃を装備している。

そのためアメリカ陸軍のマークスマンの場合、M-16をベースとしたSDM-Rが用いられているが、これは通常の歩兵との弾薬の互換性も考慮されたものだが、21世紀に中東地区での遮蔽物が少ない戦場では威力不足も指摘された。
これによりアメリカ軍ではかつての主力小銃であった7.62×51mmNATO弾を使用するM-14を狙撃銃としてモダナイズして供与、2018年には同弾を使用するドイツ製のH&K G28をM110A1 SDMRとして正式採用している。

スナイパーとスポッターの組み合わせは総じてマークスマンよりも長距離を狙撃する任務が多いが、そうした物理的な交戦距離よりも戦闘マニュアルにおいては射撃精度も考慮して同一視しない事が謳われている。
これは通常の歩兵よりは格段に長距離射撃に向いた能力をマークスマンが有しているとは言え、スポッターとの協業で高い射撃精度を確保しているスナイパーとの戦術的な運用との混同を避ける為の措置と言えよう。
マークスマンは歩兵部隊の最小単位である分隊に配置されているが、スナイパーとスポッターは概ね大隊単位での運用が基本であり、組織的に見ても遥かに数が少なく、より専門的な狙撃任務を担う存在だと見做せる。

スナイパーとスポッターの2人に更に人員をプラスした運用も存在

これまで見ていたようにスポッターはスナイパーとの2人一組の組み合わせを最小単位として運用される事が軍隊では多いが、この運用効率を向上させる目的で更に人員を増やした形も近年では確認されている。

日本人の傭兵として複数の著作物の出版でも知られている高部正樹氏は、1994年から翌年かけてクロアチア側でボスニア・ヘルツェゴビナ紛争に従軍し、この戦いでスナイパーに加え機関銃手、通常の小銃手で構成される戦術を目撃している。
これはスナイパーとスポッターの組み合わせのみでは、ある種の戦場において不足気味となる制圧火力やチームの生存性を高める事に効果を発揮していたと述べられており、より戦略的な運用手法のひとつとも目されている。

また近年のアメリカ陸軍や海兵隊においてもスナイパーとスポッターにプラスして3人目のフランカーと呼ばれる人員を配置する事が増えていると言い、このフランカーはスナイパーとスポッターの護衛を行う役割だ。
フランカーを配置する事でスナイパーとスポッターの2人はより狙撃任務に集中して臨む事が可能となり、二人の視野外の敵を監視し敵の接近阻止や排除、場合にっては退避の判断材料となる情報を知らせる役割を与えられている。

狙撃任務の成否を左右するのが司令塔たるスポッター

ここまで見てきたように軍隊における長距離狙撃任務の達成に向けては、もちろんスナイパーの正確な射撃が欠かせないが、これを高い精度で成功させるためにはスポッターからの正確な情報提供が必須である。

適切な例えか否かは別としてそうした意味においてスナイパーとスポッターの関係性とは、野球で言うところの投手と捕手のような息の合ったコンビネーションが求められるものではないかと個人的は感じられる。
名捕手が投手の持つ潜在能力を最大限に発揮させて相手チームの攻撃を抑えて行くように、戦術・戦略面を含めてスナイパーをうまく誘導する存在がスポッターだと言えるのではないだろうか。

featured image:Spc. Sara Stalvey, Public domain, via Wikimedia Commons

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