マフィアの抗争といえばニューヨーク、「ゴッドファーザー」の映画もあるぐらいに、いつの時代も血なまぐさい話は絶えません。
スパークス・ステーキハウス
ニューヨーク五大ファミリーの中でもひときわ力を誇ったガンビーノ一家のボス、ポール・カステラーノがその手下と共に射殺されたのは、ミッドタウンにあるスパークス・ステーキハウスの入り口でした。
暗殺首謀者は、同じガンビーノ一家のジョン・ゴッティということになっています。
一昔前、スパークス・ステーキハウスでたびたびカステラーノの幽霊があらわれるという話がありました。
正確には黒いコートに身を包んだ大柄な男で黒い帽子を目深に被った姿のため、顔ははっきりとわからないが、目撃されるのは決まって大量のイルミネーションに街が浮かれ立つクリスマス間近の頃。
カステラーノが殺されたのが1985年12月16日だったことから、これはもうあのビッグボスに違いない、好物のステーキを食い損ねた未練が残っているのだろうと言われるのでした。
あらわれるのは、店のカウンターだったり窓際のテーブルだったり、おやっと気づくと、もう姿は掻き消えているのだそうです。
カステラーノの幽霊としゃべった男
そんなつかみどころのないカステラーノの幽霊ですが、一人だけ幽霊としゃべったことのある男性がいたのだとか。
これはスパークス・ステーキハウスによく行っていた人から聞いた話です。
その男性の名前はジョーイ、すこし前に近所に住む娘一家のところへ越してきた老人で、カステラーノがあらわれる日に限り店に寄って、食事をすることはなく酒を1杯注文して上機嫌になる気のいい人だったそうです。
ある時、従業員が一人がジョーイに聞きました。
「ビッグボスとしゃべったのは、あなただけですよ。一体、どんな話をしているのですか」
「そうだな彼が撃たれて倒れた時、店にいた客がレアな場面に遭遇した、ウェルダンだ!と言ったってふくれてたよ」
(ステーキの焼き具合と、レア-珍しい、ウェルダンーよくやった、をかけている)
ジョーイはハハっと笑って、ワイルドターキーを美味そうにすすりました。
「やっぱりゴッティのしわざだったんでしょう。ビッグボスは何か言ってますか?」
「さぁな。こみ入った話はしてないよ。それに、あんまり他言しちゃ失礼だろう。ま、彼はどこにでもいる気のいいニューヨークっ子ってもんだよ」
ジョーイは勘定を頼み、グラスを空にするとウィンクして店を出たそうです。
彼もまた・・・
それから半月ぐらい経ったある晩、一組のカップルが店にやって来ました。食事を注文した時、従業員に話しかけました。
「ニューヨークへ来たばかりの父が、真っ先に気に入ったお店がここでした。時々寄って1杯飲んで機嫌よく帰って来ました」
「あ、もしやジョーイの娘さんですか。ええ、時々来ていただいてます」
従業員は会釈をしました。娘は静かに微笑んで言いました。
「残念だったわ。せっかくお気に入りの店ができたのに、すぐ亡くなってしまって」
従業員は目を瞬いて聞き直しました。
「ジョーイさん、亡くなったのですか。だってつい先日こちらにいらしてましたよ?」
娘は父親似の緑の目を大きく見開きました。
「いいえ、そんなはずありません。父は昨年のクリスマスの後に亡くなっています」
従業員は何も言えませんでした。
店にはスティングのジャズナンバーが流れていたということです。
※画像はイメージです。
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