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川で拾った石のせい

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お年寄りの言う事はきいておくものだとよく聞く。経験を元にしたアドバイスは間違いないということだろう。
私もそれを目の当たりにする体験をしたことがある。

目次

なにもない田舎へ転勤

父の仕事の転勤で二年間だけとある田舎に住んだことがある。
そこは絵に描いたようなド田舎で、バスは一日数本、周りは田畑しかなく、買い物に行くには一時間以上車を走らせなければならないという場所だった。

小学生の高学年だった私はこの田舎が大嫌いだった。
とにかく何もない。遊ぶにしても川か学校のグラウンドくらいしかなく、あとは友達の家。
その家も田舎だからゲームやマンガも乏しいという、子どもにとっては最悪の環境だった。
しかし、小さかった妹はこの大自然を満喫していて、毎日友達とどこかへ出かけては泥だらけになって帰って来ていた。

熱を出した妹

そんなある日のこと。その日は妹は友達と川へ行き、水遊びをしたと言っていた。
そして、その晩から熱を出した。
母は「長い時間水遊びしたせい」と言っていて、以前もらった解熱剤を飲ませて、特に心配もしていなかった。
念の為、妹は自分の部屋ではなく、両親の寝室で寝ることになった。

真夜中のことだった。「ドッタン! バッタン!」と部屋の中を暴れ回るような音で目が覚めた。
何事だと思って耳をすませていると、両親の寝室から音がする。うるさくて眠れないので部屋に向かうと、妹がのた打ち回っていた。
母が押さえようとするがまったく歯が立たず、父が大声で妹の名を呼ぶが、起きる気配はなかった。

「どうしたの?」
「わかんない! 寝てたら突然暴れだしたの!」

その妹の様子はまさに何かに取り憑かれているかのよう。
しかし、呻き声を上げるでもなく、眠ったままバタバタと暴れている。
そして、私はこの部屋に入ったときから一つ気になっていることがあった。

「なんかこの部屋変な臭いしない?」
「はぁ? アンタこんなときに何言ってんの?」

母が妹を押さえつけようと格闘しながら言った。
「なんの臭いだろう? 川? 川臭いな」
私は勝手に寝室の窓を開けた。家のそばには川はなく、外から臭って来ていないのは明らかだった。
「窓閉めなさい! 何やってんの!」
「はいはい」
言われた通りにしたが、閉める前も後も室内の臭いは変わらなかった。相変わらず妹はのたうち回っている。

石?

ふと妹の枕元も見ると、何か置いてあった。暴れる妹を避けながら、それを手に取る。
深い緑色をした光沢のある石だった。

「ねぇなにこれ?」
「しらないよ。この子が拾ってきたんじゃないの? あら?」

私が石を手に取ると、妹の動きがピタリと止んだ。同時に生臭いような変な臭いもしなくなった。
父が妹を揺り起こすと、ようやく目を覚した。

妹は自分が暴れていたことに気付いていなかった。
「アンタこれどこで拾ったの?」
石を見せると、慌てて取り戻そうとしたので、遠ざけた。
「どこで拾ったか言いな!」
「・・・川で拾った」
「バカタレ! おばあちゃんが川でモノ拾ってくんなっていつも言ってんだろうが!」

私がそう怒ると妹は泣きだして、母に縋りついた。
「明日ちゃんと元に戻しておいで」
「ヤダ! キレイな石だから取っておく!」
「バカなこと言ってんじゃねーよ! アンタ今取り憑かれかけてたんだよ!」
「知らないもん! 絶対返さない!」

私達がケンカを始めると、父が一喝し、妹は大人しくなった。
「明日、お姉ちゃんと一緒に川に戻して来なさい」
「・・・わかった」
そう言うとまたメソメソ泣きながら母に抱き着いた。
石は妹の手に届かない高い場所に父がしまい、私も部屋に戻って眠ることにした。

おばあさん

翌朝、ラジオ体操の時間だと母に叩き起こされた。
妹はまだ寝ていたので起こさないのかと訊くと「寝てる間に石を川に戻して来て」と言われた。
あの後も妹は寝るまでブツブツと「ヤダ。返したくない。私のだもん」と言っていたらしい。

私は渋々一人で家を出て、川に向かった。
ラジオ体操をやる公民館とは少し離れた位置にあるので、先を急いだ。

夏でも朝は少し涼しく、特に川の近くは肌寒かった。
だから田舎は嫌なんだと思いながら、いつも妹が遊んでいる橋の近くの土手に降りようとすると、一人のおばあさんがいるのが見えた。

「おはようございます」
「はい、おはよう」

犬の散歩をするでも、ゴミを拾うでもなく、その人は佇んでいた。
私はポケットから石を出して、適当に投げ捨てようとした。
「あらアンタえらいモン持って。なんともないんかね?」
「ほれ、貸してみ」

おばあさんの差し出された手に石を乗せた。
すると、彼女はポケットから何かを出し、それを握ったまま、石に打ち付けた。
カン! カン! と二、三度打ち付けると石が割れた。

その瞬間、石が陽炎のように揺らめいて見え、私は後ずさった。
「アンタ賢いねぇ。これは近づかない方がいいよ」
「なんですか、それ」
「よくないモンだよ。拾ったんかね?」
「私じゃなくて、妹が」
「あーそうかい、そうかい。だからだね。もう大丈夫だよ」

なんだかよくわからないやり取りと得体の知れないおばあさんに私は気味悪くなった。
「アンタ鋭い子だねぇ。これからもそういう勘を信じてな。そうすればアンタはずっと護られるから」
「はぁ、そうですか」
「体操、行かないんかね?」

私はその言葉を聞いて慌てて駆け出したが、立ち止まった。
「あの! ありがとうございました!」
「妹はしばらく川行かせちゃダメだよ!」
「はい! そうします!」

治った妹

家に戻ると妹はケロリとしていて、石のことすら覚えていないようだった。
私は母に「しばらく川に行かせない方がいいと思う」と言うと、母も同じ考えだったようで、妹に川遊びを禁止させた。
その後、妹は特におかしくなることもなく、無事に夏休みを終えた。

※画像はイメージです。

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コメント一覧 (1件)

  • おばあさんのいう「えらいもん」ってなんだったんでしょうかね。作者さんご自身もきっと霊感があるから異変に気付けたのでしょうね。他にも不思議な体験をされていたら、読んでみたいです。

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