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「M級潜水艦」の悲しき結末!悲劇の大艦巨砲主義の夢!

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潜水艦・・・海上戦において完全なステレス能力を持ち、レーダー電波や可視光線をものともせず、捜索手段として唯一有効とする音響さえも、探知・撃沈することは決して容易ではない。
最新鋭の探知装置と対潜兵器を開発した現代の海戦状況下においても、その不動性を立証した兵器である潜水艦。

冷戦下の時代においては陰の主役となり、核の脅威においては終末の時代を告げる兵器として暗躍した兵器・・・
そんな潜水艦に開発史において、悲劇の兵器が存在している事を御存じでしょうか?

目次

その名前は

「M級潜水艦」と明記され、イギリス海軍の……黒歴史となっています。

海軍で栄えなる歴史を持ち、大航海時代を席巻した大英帝国において、新しい歴史を刻む事となる筈だった、潜水艦開発の歴史の中で悲運を辿った、そんな兵器を今回は紹介したいと思います。

さて、この兵器は「M級潜水艦」と銘が打たれている通りに、大型な潜水艦として開発され、通商船の破壊を目的として産み出された兵器とも言えます。当時において、潜水艦の開発は試行錯誤の段階でもあり、船舶だけではなく、巨大な火砲を持って、敵地の重要拠点を破壊し、すぐ様に離脱する兵器として運用できないかとの計画が練られていました。

秘匿性能力に優れた潜水艦の持つ優位性を活かし、一撃必殺の能力を持たせるを前提に、開発計画は進みます。

作者 Photographer not identified [Public domain], ウィキメディア・コモンズ経由で

その計画の集大成が、この「M級潜水艦」でした。

第一海軍卿ジョン・アーバスノット・フィッシャーことイギリス一の大艦巨砲主義である彼によって、不幸にも、潜水艦に戦艦の大砲を乗せるという、無謀な計画が立案されてしまったのです。

さて、ここまで書いて、ある事が疑問に出てくると思います。
何故に隠密性のある潜水艦に、目立つ大砲を乗せるのか?

その最大の理由は、第一海軍卿ジョン・アーバスノット・フィッシャーが原因だったと言えばお分かりいただけるかと思います。大艦巨砲主義である彼は、戦艦には巨大な大砲を乗せるべきだと、方々の説得や意見などを聞く気はありません。

水面から唐突に現れ、敵の商船を砲撃し、または重要拠点となる軍港や艦船を砲撃し、潜水艦持つ隠密性を利用した、なんともはやな一撃必殺を夢見ていたのでしょう。
そんな強襲攻撃の想定を期待され、この悲運の兵器は、現実に開発されてしまったのです・・・

でも、この一撃必殺兵器には大きな問題点があったのです。

それは……まず潜水艦に巨大な大砲を乗せること自体に問題がありました。
M級潜水艦は1,600tの潜水艦。

当時の技術で造られた潜水艦にしては大型クラスではありますが、搭載された砲は、信じられない事に15,000tクラスの戦艦が搭載する、305ミリ砲だったのです!

作者 Andy Dingley (Author’s own photo) [CC BY-SA 3.0], ウィキメディア・コモンズ経由で

大きさがまるで違う戦艦の大砲を潜水艦に搭載すると、もはや暴挙としか思えない様な無謀計画。それゆえに潜水艦に置いての水中内での移動時において速度を殺してしまうと、また潜水においては深度に気を使わなければ、すぐ様に深海の藻屑と化してしまうと、隠密性においての致命的な問題点を抱えてしまう事となります。

また巨大な305ミリ砲を乗せていたが為に、使いどころにも問題が発生しました。
まず砲があまりにも大きすぎるが故に、使用時には必ず浮上しなければいけないと、使い勝手に問題がありました。

さて、こう書けば何故に浮上しなければいけないの?と、疑問を持つ人が多いと思います。

フィクションならば、浮上した潜水艦のハッチが開き、収納式の大砲が伸び、艦長と乗組員の連携の下で砲火を吹く──と、創造するかもしれませんが、それはフィクションでしか可能でしかなく、当時の技術では、そんな事は不可能でした。
現実的に言えばこうなります。

まず野砲を一門。

丸々に潜水艦の前部に乗せ、それを溶接すると想像してください。
また潜航時には砲の先に蓋をし、海水が入らないように密閉しなければいけません。
大砲とは、砲口内に異物が入ってはいけないので、持ち運びの際は、砲の中に異物混入を防止するために、蓋をしなければいけないのです。

そして撃つ時は蓋を開け、内部に詰まりがないかを確認し、装填し、閉鎖し、発射!
・・・はっきり言って手間が掛かりすぎています。

しかも砲が旋回できないので、潜水艦事態を動かさないといけないと、最大の問題もあります。
そしてそんな問題も些細なものだと思える程の致命的な問題点が、この潜水艦にあったのです。

まず考えてみましょう

敵対する潜水艦が浮上し、バカでかい大砲を撃つためにいそいそと作業し、その場に停止していれば、それを狙わない敵はいないと思います。はっきり言えば、使用すれば間違いなくに轟沈されかねないと、この潜水艦に配置された兵士は、生きて戻れないと覚悟しなければいけません。

さて、こんな問題点だらけの兵器が、はたして戦場で活躍したのかと言えば……まったくにありませんでした。砲火を一度も吹く事も無く、1925年11月12日に、この潜水艦はその役目を終えてしまう事となります。

作者 Mason, Frank [Public domain], ウィキメディア・コモンズ経由で

英国海軍の歴史の中で一撃必殺の潜水艦として期待されたM級潜水艦は、合同演習中にスウェーデンの民間船との衝突事故により沈没してしまいます。乗員69名全員死亡の不名誉と共に、イギリス海軍の戦史に刻まれてしまう事となります。

沈没の原因としては砲が船舶との衝突時に剝がれてしまい、その穴から瞬く間に海水が浸水してしまった──と、潜水艦にとっては、実に悲しい結末でしかありませんでした。

この巨砲を搭載した潜水艦は、一度も砲火を戦場で吹く事なく轟沈し、そして大砲を乗せる潜水艦の開発計画は、そのまま終える事となってしまいます。
事故がなければ、もしかしたら、どこかの戦場で活躍していたかもしれない悲運の兵器──M級潜水艦。

・・・本当に活躍できたのでしょうか?

アニメや漫画にライトノベルや映画などを趣味にし、ミリタリー関連にも深くなく浅い趣味を持つオタク未満なマニア以上なライターです。
コアなマニアの人に怒られることもしばしば、でもミリタリー関連の愛は本物なのでご安心を。

icon image : 作者 Photographer not identified [Public domain], ウィキメディア・コモンズ経由

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