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あるはずの無いブランコが揺れる

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これは私が高校2年生の頃のお話です。
私の通っている高校では、マラソン大会がありました。8キロも走るのですが、運動部に所属していない私には完走できるかも危うい距離だったので、友人と朝練をするのが日課となっていました。

私の住む地域には、小学校が3つあります。100年以上の歴史のある小学校Aと、できて20年ほどの小学校B、新しい小学校C。その日のルートは、小学校Bの近くを通るものでした。私も友人も小学校Bには通っていないので目新しく、住宅街を通るので交通量もないことから安全だろうと思って決めました。

通学前の練習なので、時刻は午前6時過ぎ。話をしながらジョギングをしていて、小学校Bが近づいてきた頃のことです。遠くから、「ギィ、ギィ」とブランコを漕ぐような音が聞こえてきました。
こんな時間にブランコ? 遊ぶにしても早過ぎないかな・・・そんなことを考えながら近づいていくと、小学生くらいの女の子が2人、校庭の傍を走って行くのが見えました。
「こんな時間から遊んでる子もいるんだね」
友人の言葉に、「早起きなんだねー」と呑気に返して、小学校Bを通り過ぎました。

ある程度のところで折り返し、再び小学校Bを目指していた時の事。ふと、ある事に気づいてしまったのです。
「そう言えば、小学校Bってブランコあったっけ?」
「ブランコ? あったかなー・・・あれ、小学校Bのブランコ?」

そこで、友人の言葉が途切れました。走っている足は止めず、少しの沈黙が流れます。
「思い出した小学校Bのブランコ、聞いた事ある。ないんだよ、あの学校の校庭にブランコ。でも、ブランコが揺れる音がするって」

そこまで話した時、いつの間にか数メートル先に小学校Bの校庭が見えてきました。ドクンドクンと、心臓がうるさく鳴り、段々と近づいてくる校庭。

そして、遠くから聞こえてくるブランコの音。走る速度を上げ、校庭を見ないようにし、全力で校庭を通り過ぎようとした、そのときでした。
「ギィ、 ギィ、 ギィ、 ギィ」
突然、耳元で聞こえたブランコの音に、背筋が凍りつきましたが、何とか小学校Bが見えなくなるまで走りきり、息を切らせながら歩道に座り込みました。

近くに公園はありません。あったとしても、耳元で音が聞こえるはずがありません。誰かが亡くなったという話や、昔そこで何かがあったという話も聞いたことはありませんでした。それでも、何か嫌な感じがしたのは確かです。
もう二度と、小学校Bに近づくことはないでしょう。

※画像はイメージです。

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