ミリメシというと昔はオリーブドラブ色のいかにもな缶詰でした。
鶏飯や赤飯、肉の煮込みなどのラインナップに加え、人気の一品があったのです。
身体を使う人たちだからこそ求められる塩分が強めのおかず「たくあん」です。
しかし、それはシャバ(笑)のものとは明らかに違うのです。
祖父が自衛隊を定年まで勤めあげました。
子供のころから「余ったから持って行って」と持たされていたのが戦闘食・・・いわゆるミリメシ。
職場で支給されたものを食べきれないとみな持ち帰っていたのです。
ずしりと重たいオリーブドラブの無機質な缶詰で、当時はミリメシという言葉もなく、缶飯といういう名称のみで家庭内では「ご飯の缶詰」くらいの呼び方で特に意識もしていませんでした。
今はレトルトが増えてバリエーションが広がり、さまざまなミリメシが増えていて一般的に販売されるようにもなり、しかも化学反応で温められる発熱材が使えて、その場で温かく食べられるものまで作られるようになっています。
昔のご飯は鍋でお湯を沸かして時間をかけて温めないと、その缶飯のご飯粒は硬くてスプーンも歯が立たないような状態なのです。
もちろん食べごろになるほど温めれば柔らかく美味しく食べられますが。
東日本大震災のころによく言われていたのが、その缶飯を温める燃料や水がもったいないからそのまま食べている・・・ということ。
自衛官の精神的屈強さを物語るエピソードとしてよく知しられています。
さて、そんな中でもっとも私が衝撃を受けてたのが沢庵の缶詰。
一般的な沢庵のイメージは、5ミリ程度の薄切りのものですよね。
しかし、ミリメシのたくあんの缶詰に入っている者は一味違います。みっしりとその缶に収めるために、その缶の高さにぴったり合うように切りそろえられ、隙間もなく詰め込まれているのです。
缶を開けるとその内側には1.5~2センチくらいの太さで、3cm程度の長さの沢庵の断面が見える、といえばイメージがわくでしょうか。
シャバ(一般社会)とは明らかに違う、質実剛健なその沢庵はなんだか牛蒡のようなイメージで、ちょっと笑ってしまいます。
そして、後に意外なところでその缶詰に出会うのです。
有川浩さんの『ラブコメ今昔』という短編集です。
自衛官の恋愛・結婚事情をさまざまなシチュエーションで書いている作品ですが、その中にたくあんの話が出てきます。
きっと、有川さんご自身がどこかの取材でそんなエピソードをリアルに聞いたんだろうな、というような微笑ましいシーンです。
東日本大震災前に出版されたもので、ぷっと笑ってしまうような描写ですが、これを読むたびにきっと震災の被災地で、寒い中あのたくあんをかじりながら働いていた多くの本職さんたちがいたんだろうな・・・と思い出してしまうのです。
※画像はイメージです
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