「恐怖の館」、「悪魔の夫婦」または「死体の庭」。
かつてのイングランドで、このような言葉で形容される恐ろしい事件がありました。
それが、フレデリック・ウェストとローズマリー・ウェストという夫婦が起こした連続殺人事件です。
数ある殺人事件の中でも、ウェスト夫妻が起こした事件は残虐で特異。何が彼らをそうさせたのでしょうか。事件の順を追い、見ていきましょう。
この事件は、相当に残酷で、読むのも辛い描写が含まれます。そういった描写が苦手な人は、この記事を読まないようにしてください。
「恐怖の館」殺人事件の概要
「恐怖の館」殺人事件は1964年から1991年にかけて、フレデリック・ウェストとローズマリー・ウェスト(以下ローズ)の夫婦が起こした連続殺人事件です。
事件の中心となる舞台は、イングランドのグロスター。被害者は女性ばかりで、12人に上ります。また、被害者の中にはウェスト夫妻の娘や、著名人の親戚にあたる人物も含まれています。
この事件は被害者の多さもさることながら、その内容の凄まじさも、犯罪史上類を見ないものとなっています。徹底的に(性的な意図を持って)傷つけられた死体、積極的に犯罪に加担する妻の存在、夫婦に共通する歪み切ったセックス感。「恐怖の館」殺人事件は、セックス犯罪の一番忌まわしい形と言えるのです。
それでは、次の項から事件の詳細を解説していきます。
ウェスト夫妻が起こした戦慄の事件、その全貌
「恐怖の館」事件はどのようにして起こり、どのような結末を迎えたのでしょうか。その全貌をわかりやすく説明していきます。
歪んだ家庭で育ったフレデリックとローズ
普通では信じられないような事件を起こす犯人の中には、複雑な成育歴を持つ人物が少なくありません。「恐怖の館」殺人事件の犯人、フレデリックとローズもまた、そうした人物の一人です。
フレデリックはイングランドの小さな農村で生まれました。彼の父・ウォルターは農場で働いており、少ない給料で多くの家族を養っていました。ウォルターには、近親相姦を好むという忌むべき性癖がありました。子供の頃のフレデリックもまたこの影響を受け、妹との性行為を行っていたとされています。また彼は、それが「当たり前」だと考えていました。
そんな癖があるにも関わらず、フレデリックは大人しい少年でした。しかし、度重なる事故により頭部を損傷してから、彼の性格は大きく変わったとされています。凶暴性と攻撃性が増したのです。
そんな彼の妻となるローズもまた、普通ではない家庭環境で育ちました。彼女の父ビル・レッツは粗暴な人物で、家族を自身の所有物だと考えていました。そのため、幾度も警察沙汰になるほどの家庭内暴力があったとされています。しかし、ローズはそんなビルに可愛がられていました。それは、彼女が父親に気に入られるように立ち回っていたことと、近親相姦を受け入れていたことが関係しているとされています。
フレデリックとローズがどのように出会ったか。それははっきりしていません。二人がバス停で出会ったという話もありますが、信ぴょう性に欠けるものだからです。しかし、ローズが口の上手いフレデリックに惹かれ、すぐに交際を開始したことは確かでしょう。2人には生い立ち以外にも、大きな共通点がありました。それは、異常なほどセックスに興味を持ち、執着していたということです。近親相姦や過激なSMなど倒錯的なものを含むその嗜好は、後に2人が起こす犯罪のきっかけとなるものでした。
イングランドのグロスターで連続殺人が始まる
フレデリックとローズは、イングランドのグロスターという街で新生活を始めました。ここが恐ろしい連続殺人の舞台となり、多くの被害者が埋められた家のある場所です。連続殺人の始まりとなったのは、フレデリックの前妻・リーナと、その娘であるシャーメインです。2人とも1971年に殺されており、特にシャーメインの殺害にはローズが深く関わっていると考えられています。
シャーメインの死体は、後にバラバラの状態で発見されました。これは、フレデリックの死体損壊を好む癖に関わるものであり、この事件の残虐さを象徴するものです。彼は自分の娘にすら(近親相姦だけでは飽き足らず)、死後に冒涜の限りを尽くしたのです。この後に、フレデリックとローズは女性を誘拐し、性的に弄んだあと殺害するという凶行を繰り返しました。特筆すべきなのは、ローズがただの手伝いではないということ。彼女もまた、彼女の欲望を満足させるために、犯罪に関与したのです。
ローズは誘拐してきた女性たちと、セックスを楽しみました。そして、フレデリックはその様子を覗きます。全てが終わると、フレデリックが女性を殺害し、その死体を弄びます。フレデリックは死体を弄ぶ際、手足の指を切り取ることを常としていました。また、被害者の顔をテープでぐるぐる巻きにすることもありました。それは、死体に対する歪んだ性欲と、被害者を完全に制服したい、という恐ろしい欲望によるものです。
そして、彼女たちの死体はフレデリック家の敷地内に埋められました。その数は多く、フレデリックすら正確な数を忘れていたとされています。
被害者の総数は12人と考えられてはいますが、これも正確ではありません。フレデリックは虚言癖を持つ人物であり、殺害を否定したものもあります。もしかすると、実際の数はさらに増えるのかもしれません。フレデリックは連続殺人の間に、幾度か警察に逮捕されています(子供に対する性行為の罪など)が、殺人に関しては長い期間、露呈することがありませんでした。しかし、そんな幸運も終わりを迎えます。
事件の終わり
1994年、グロスター警察が動きました。行方不明となっているフレデリックとローズの娘・ヘザーが、両親によって殺されたことを突き止め、彼女の死体を捜索する名目で捜査令状を取ったのです。その捜査令状に則り、刑事が2人の家に訪れます。フレデリックはその時留守にしており、ローズが対応しました。ローズはヘザー殺しを否定しますが、警察の捜査は続きます。フレデリックが帰宅したのは、警察が引き上げてからのことでした。
その翌日、フレデリックはヘザーを殺したことを、パトカーの中で認めました。殺意はなかったと供述してはいるものの、自宅の庭から女性の足が見つかったため、捜査は続行となりました。ローズもまた、ヘザー殺害の容疑で逮捕されました。警察はフレデリックの証言を元に自宅を捜査。次々に死体を発見しました。その多くはバラバラになっており、その犯行の恐ろしさがうかがえます。最終的に、フレデリックは12人の殺害を認めました。
フレデリックは、夫婦で犯した罪の全てを、自分一人で背負おうとしていました。ローズには何の罪もないとローズをかばい、ローズもまた、フレデリックに罪を背負わせようとしていました。ローズは、「自分も被害者の一人である」と証言したのです。しかし、この思いは叶いません。彼女は10件の殺人に関与が認められ、終身刑を宣告されたのです。
フレデリックは、裁判にかけられることを良しとしませんでした。1995年の元日に妻・ローズへの愛の言葉と共に、独房で自殺したのです。フレデリックの自殺、そして、ローズの有罪確定により、この史上まれに見る大事件は幕を閉じました。
人とは残酷になれるのか?
人とはここまで残酷になれるのでしょうか。ウェスト夫妻が起こした「恐怖の館」事件を知ると、思わずそんな言葉が出てきてしまいます。
現在、2人の凶行の舞台となった家は取り壊され、歩道になっているとされています。その歩道を歩くとき、イングランドの人々は何を思うのでしょうか。想像すると、胸が苦しくなってしまいます。
こんな事件が二度と起こることが無いよう祈りながら、この記事を終わりたいと思います。
※画像はイメージです。
思った事を何でも!ネガティブOK!