同棲中の彼氏は早朝出勤が多く、「明日の出勤に備えて」と私を置いて早めに眠ってしまうこともよくあった。その日の夜もゲームに没頭する私を放っておき、先にベッドでぐうぐうといびきをかいていたからよく覚えている。
一人、取り残された私はしばらくスマホでゲームやらネットサーフィンやらを楽しんでいたがさすがにもう寝ようと思い、「寝ている間に尿意で目を覚まさないように」とトイレへ向かうことにした。
ドア横にあるトイレの明かりをつけ、ドアノブを回す。入ろうとした矢先に彼の背中が見えて、私は「あ、ごめん」と口にし慌てて扉を閉めた。親しき中にも礼儀あり、同棲中とはいえトイレに踏み込むのは立派なマナー違反だ。
・・・あれ、おかしいな。
私はそこで、違和感を覚えた。
この部屋に住んでいるのは私と彼氏の二人だけ。その彼は今、ベッドで寝息を立てている。友達や親兄弟もいない、そもそもそんな心当たりのある男性など存在しない。
なら、今トイレにいた彼は誰・・・?
すっと背中に冷たい汗が流れるのを感じ、私はトイレから引き返しベッドに潜って眠っている彼氏の背中へと貼り付く。単なる見間違いかもしれない、ひょっとしたら泥棒かもしれないからきちんと確認した方がいいかもしれない。そんな正論が頭をよぎるが、もしもう一度トイレのドアを開けて「それ」と対峙した時に私は冷静な対応ができるか。その自信が、私にはなかった。
翌朝、何も知らない彼が先にトイレへ行ったが特に異常はなかったらしく、その夜のことは今でも彼氏に言い出せないままである。
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