MENU

人類への警告?衝撃の動物実験「ユニバース25」

当サイトは「Googleアドセンス」や「アフィリエイトプログラム」に参加しており広告表示を含んでいます。

少子化を憂える日本をよそに、人類はいよいよ80億人を突破した。しかし、わずか40年ほどで世界人口は頭打ちとなり、その後は減少の一途をたどるという見方がある。これほど健康志向が高まり、食品ロスがあふれ、医療技術も発達した世界のどこに人口が先細る理由があるのだろう。

「人類にはどんな未来が待ち受けているのか?」
この問いに対する回答を動物行動学から探る試みとして、60年代末から70年代初頭にかけて動物を使ったシミュレーションが行われ、論文にまとめられた。
彼らにとっての脅威、すなわち捕食者・病気・飢餓を取り除いて人間の生活環境に近づけたとき、個体数はどれほど増え、どんな社会をつくりあげるのか。動物行動学者ジョン・バンパス・カルフーンによるマウスの楽園実験である。

脅威のない世界で、マウスたちがたどりついた残酷な結末をあなたは想像できるだろうか。
これが人類にも当てはまるのなら、わたしたちはすでに滅びのカウントダウンに突入しているのかもしれない。

目次

マウスのパラダイス

「ユニバース25」と名づけられた動物実験は、1968年7月よりアメリカ国立精神衛生研究所の実験施設にてスタートした。
目的は「楽園における生物の観察」。餌と水が無限に与えられ、捕食者もおらず、管理の行き届いた快適な環境にマウスを住まわせたら、彼らの社会はどのような発展をとげるのか。

じつはここに至るまで、カルフーンは「ユニバース1」から「ユニバース24」の実験を重ねている。しかし、いずれもマウスの生活スペースを広くとることができず、それが繁殖を抑制した可能性があったため、今回ははるかに大きく立体的なスペースを用意した。25回めのユニバースというわけだ。
ユートピアは2.7メートル四方、高さ1.4メートルの金属製のケージ。このなかに200箇所以上の巣づくりスペースを用意して、縦横に設置したトンネルでケージ内を自由に行き来できるようにする。常に最適な温度を保ち、外敵やウイルスが入らないように徹底して管理する。マウスにとって必要なものがすべて用意されたパラダイスである。
そのなかに健康なマウスのつがい4組(オス4匹とメス4匹)を入れたところから実験はスタートした。

楽園の観察

カルフーンは、マウスが繁殖したらどうなるのかを興味深く観察しはじめた。この実験では、四段階のフェーズに分かれたことが確認されている。

第一フェーズ~ネズミ算式に個体数が激増

当初、8匹のマウスは広大な居住スペースや新顔の仲間に慣れず、困惑したようすをみせていたが、しだいに順応していった。
快適な環境のなかで個体数は順調に増えつづけ、7か月後には親マウスが150匹、子マウスは470匹ほどになった。カルフーンは今後もこの人口爆発がつづくと予測したが、まもなく増え方は緩やかになりはじめ、同時にマウスの行動パターンに不自然な変化がみられるようになる。

第二フェーズ~社会構造と社会行動の崩壊

315日を過ぎると、出生率が著しく低下しはじめた。繁殖力が急激に落ちたのである。以降、600日めにかけてはマウス社会の構造と正常な社会行動が崩壊していることが判明した。

マウスは本来、1匹ずつ単独で行動する。個々にテリトリーをもち、縄張り行動によって他の個体とのコミュニケーションをとりながら規律ある生活をする動物なのだ。
ところが繁殖率の低下にともない、テリトリーをもたない異分子マウスが現れた。やがてマウス同士で争いをはじめ、権力闘争が起きるようになった。結果、社会に格差が生まれ、支配するものと支配されるものに分かれていく。
オスのカーストにともない、メスにも格差が生まれた。支配者グループに選ばれるメスと、選ばれないメスである。選ばれなかったメスは巣づくりや子育てがうまくできなくなり、子離れの前に子を追い出したり、放置したりするようになる。人間でいうところの育児放棄である。見捨てられた子ネズミは、食糧がたくさんあるにもかかわらず、大人のネズミに共喰いされることもあった。

闘争からドロップアウトしたオスが無抵抗になる一方で、子どもを守るという役割を捨てたメスが攻撃性をみせるなど行動上の異常も確認された。
オス・メス・子どもに関係なく求愛行動を示すマウスもいれば、巣から出ようとせず、他の個体に関心を示さない引きこもりマウスも現れる。
巣づくり、テリトリーの防衛、生殖行為、子育てなど社会への関わりを拒否したマウスは自然界では巣を追われ、別の住処に移り住む。そこでもうまく活動できなければ、ふたたび巣を追い出され、捕食や飢餓により脱落する。
しかし、この実験では居住スペースが充分に与えられ、餌にも外敵にも困ることがない。彼らは社会からはじかれたマウスのスラムにとどまりつづけなければならないのだ。

第三フェーズ~楽園のはずが、社会が停滞

マウスたちは心理的に崩壊しはじめた。この時期になると、生殖本能に反して妊娠そのものを拒むメスが激増し、個体数は絶滅に向けて右肩下がりになる。

引きこもりのオスは権力争いはもちろん、求愛行動にも興味を失い、生命の維持に必要なタスクだけを行った。食べて排泄し、寝て起きて、毛づくろいをするだけである。戦わないから傷がなく、毛並みも美しい彼らのことを、カルフーンは「ザ・ビューティフル・ワン」と呼んだ。

繁殖行動は再開されることはなく、マウスたちの行動パターンはすっかり変わってしまった。そしてある日、死亡率が出生率に追いつき
、人口増加がぴたりと止まる。この時点の個体数は2200匹である。収容スペースにはまた十分なゆとりがあるにもかかわらず、早くもピークを迎えたのだ。そしていよいよユートピアは「死」の段階へ突入する。

第四フェーズ~楽園の崩壊

最後の妊娠が確認されたのは実験を開始して920日めのことだった。しかし新たな命は誕生せず、繁殖率はゼロになった。
1440日めの楽園生存者はオス22匹、メス100匹。高齢化社会が急速に進むなか、1780日めにはついに最後のオスが死亡。あとは滅亡を待つばかりとなる。食糧に困らず天敵のいない環境で、マウス社会が生殖能力を失い、絶滅したのである。

ここでカルフーンは人道的な理由から実験中止に踏み切った。生き残ったメスをゲージから救出し、別の飼育空間に移したのだ。
ところが、助けだされたマウスたちの病んだ精神は元に戻ることはなく、通常のマウス社会に適合できないまま全滅したという。

ユニバース25と人類の比較

前述のように、マウス実験は異なるスケールで25回くり返されたが、そのたびに同じ結果に終わった。すべての楽園が例外なく滅んだのだ。
恐ろしいのは、カルフーンがマウス社会の結末を人間の運命へのメタファーととらえていることだ。人間社会が歩んでいるのも、マウス社会の崩壊と同じ道ではないかというのである。戦闘、格差社会、高齢化、育児放棄、引きこもり、同性愛の激増など、崩壊フェーズ以降にみられた現象は人類の現状と重なる部分が多いとして、これらを滅びの予兆ととらえ、地球の未来を示唆していると危惧する声も多い。

はたしてそうだろうか。人類が疾病・自然・動物の脅威と闘いつづけて獲得した楽園は、マウスの楽園と同じ轍を踏むのだろうか。
たしかに過密な環境がコミュニティの崩壊を招くことはありうるし、衣食住が満たされて退廃するのは人間も例にもれない。しかしユニバース25が行われた60年代から70年代は世界人口が急激に増加して、かつてない速度で都市化が進んでいた時代だった。人口の急増に対する懸念は今より強かったであろうし、都市化がもたらす過密な環境が人間に適切なのかという議論も多かった。過密社会は人間にとって害悪だという主張の裏付けにユニバース25の実験結果を利用した者もいたことだろう。歴史を振り返れば、戦争や格差社会、同性愛も今にはじまったことではない。
さらにいえば、たかが2.7メートル四方の実験環境を「ユニバース」と称して、人間を含む他の動物について類推するのは非常に早計に思える。少なくとも、そこが本当の楽園ではなかったことを彼らが身をもって教えてくれた。わずか4組のつがいからスタートすれば近交弱勢による個体が増えるのは当然で、行き過ぎると絶滅が発生しうるのだ。

もしユニバース25がわたしたちにも当てはまるのなら、いずれおとずれる世界人口の減少は予定調和になってしまう。
マウスよりも高度な知能と社会性を獲得できた種としては、絶滅を回避できると信じたい。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

どんな事でも感想を書いて!ネガティブも可!

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

目次