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実現できない?アメリカ海軍「ユナイテッド・ステーツ」

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アメリカ海軍と言えば第二次世界大戦以後は、現在の2024年に至るまで「世界最大の戦力を保有する海軍」という評価で知られており、イギリスを抜いてその地位を既に1世紀近くに渡り維持している。
ここ最近でこそ、経済的な発展を背景として中国海軍が艦艇数を飛躍的に増加させた事もあり、数の上では抜かれているのも事実で、更にその数量差は開きつつあるものの、依然トータルな戦闘能力と言う意味では最強の座を譲ってはいない。

アメリカ海軍が保有・運用する艦艇といえば、何と言っても大型で排水量10万トンを凌駕する原子力航空母艦を実に11隻も保持しており、世界中の海にこれらを中核とする空母打撃群を迅速に派遣する体制を構築している。
こうした原子力航空母艦以外にも、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦などのイージス艦や、これまた全隻原子力推進を採用した戦術型及び攻撃型の潜水艦、そして強襲揚陸艦などを多数配備している。

これらアメリカ海軍の主要な戦闘艦艇は、2024年現在でもその総数凡そ270隻を超えると言われており、当然の事ながらそれら各艦に個別の艦名が付与されており、命名のパターンも様々なものがある。
そんなアメリカ海軍の艦艇名の中で、如何にもありそうだが現時点では付与されていないものとして「ユナイテッド・ステーツ」があり、アメリカの国名を指す非常に格式の高い名称のように傍目には感じられる。

その為「ユナイテッド・ステーツ」は過去何度か付与されそうなタイミングが存在したが、大昔の1度しか実現しておらず、その経緯について歴史と共に振り返って見たいと思う。

目次

唯一実際に艦名として存在したのが帆船「ユナイテッド・ステーツ」

これまでのアメリカ海軍の今年2024年でちょうど230周年を迎える歴史上において、実際に「ユナイテッド・ステーツ」の名を付与された軍艦は、18世紀末の帆船時代の当時のフリゲート艦に見られるのみである。
帆船の大型フリゲート艦であった同艦は、6隻が建造された同型艦の1番艦にあたり、アメリカ合衆国と言う国家がイギリスの植民地から独立した1776年の21年後の1797年に進水したとされている。

この帆船の大型フリゲート艦の「ユナイテッド・ステーツ」は、アメリカ合衆国が1794年に制定した海軍法に則って進水を果たした初の同国海軍艦艇であり、その栄誉から国名を艦名に採用したと考えられている。
記念すべきアメリカ海軍の歴史上で結果的に唯一「ユナイテッド・ステーツ」の艦名を付与された同艦は、全長約95.0メートル、排水量1,573トン程だったが、当時としては大型のフリゲート艦に相当している。

因みにこの「ユナイテッド・ステーツ」は1861年4月から1865年5月までの続いたアメリカ国内の内戦である南北戦争時、北軍所属の艦艇だったが開始直後の1861年4月に南軍の手に堕ち、翌年北軍が奪還を果たすも軍艦としての生涯を終えた。

実現されれなかった「ユナイテッド・ステーツ」レキシントン級巡洋戦艦

唯一「ユナイテッド・ステーツ」の名を冠した帆船のフリゲート艦以降、初めてその艦名を再び命名される可能性が生じたのは20世紀に入ってからで、アメリカ海軍が1910年台後半に計画したレキシントン級巡洋戦艦の1隻についてであった。

レキシントン級巡洋戦艦はアメリカ海軍が今に至るまで唯一建造を行った巡洋戦艦であり、常備排水量43,500トン、全長266.5メートル、全幅32.2メートルという大型水上戦闘艦で、180,000馬力の機関で最大33.3ノットの高速を発揮する予定であった。

レキシントン級巡洋戦艦は起工自体が1920年台後半まで遅れ、主砲には50口径のMk 2 40.6cm2連装砲4基8門を備える計画たったが、高速を実現する意味もあって装甲は薄く、防御力には難があると言うのが実情だったようだ。
しかし1921年、1918年に終結した第一次世界大戦後の世界の軍縮傾向を反映したワシントン海軍軍縮条約が締結された為、レキシントン級巡洋戦艦はその制限の対象艦となり、1番艦「レキシントン」と3番「サラトガ」が航空母艦に改修されたのみで建造を終えた。

元々「ユナイテッド・ステーツ」はレキシントン級巡洋戦艦の6番艦として建造が予定されていた為、1920年に起工されていたが1923年に建造が中止され、航空母艦への転用もなく廃艦処分となった。

実現されれなかった「ユナイテッド・ステーツ」新型航空母艦

次いで「ユナイテッド・ステーツ」の名を冠される予定となったのが、第二次世界大戦後の1949年4月に起工された大型の新型航空母艦としてであり、前級の基準排水量45,000トンを誇るミッドウェイ級を遥かに凌ぐ規模で企画された。
その艦容は推定値ではあるが、基準排水量で65,000トン、満載排水量で83,350トン、全長で331.0メートル、全幅で60.1メートルとも伝えられており、艦載機の最大数も100機にも達する当時の史上最大規模が想定されていた。

ここでの「ユナイテッド・ステーツ」が当時としては破格の規模で企画された理由は、今後想定され得る上陸作戦の近接航航空支援能力の強化と、他艦を含めた艦隊全体の司令部を置き、その指揮命令機能を担う狙いがあったとされる。
しかし真の最大の目的は、当時はアメリカ空軍の大型の爆撃機・B-36から爆弾として投下するしか手段が無かった核兵器を、航空母艦に搭載可能な大型の艦上攻撃機で運用する事を可能とする点にあったと伝えられている。

この実現に向け大型の艦上攻撃機であるA-3 スカイウォーリアーが、当時のダグラス・エアクラフト社によって開発され、従来はアメリカ空軍の戦略爆撃機が独占していた戦略核の運用を海軍も行う事を目指した。
但しこの計画はアメリカ空軍及びアメリカ陸軍の猛反発、並びに予算上の問題から実現には至らず、起工から僅か5日後に「ユナイテッド・ステーツ」の建造の中止が確定、幻の航空母艦と化した。

この一連の「ユナイテッド・ステーツ」の建造中止に至る騒動では、フォレスタル国防長官、サリヴァン海軍長官が責任をとって辞任、殊に前者は後に心労による自死に至り、何とも後味の悪い結果となっている。

実現されれなかった「ユナイテッド・ステーツ」新型航空母艦

最後に「ユナイテッド・ステーツ」の名を冠される予定が伝えられたのは、現在もアメリカ海軍の航空母艦の主力であり、1968年から2009年にかけて全10隻が建造されたミニッツ級航空母艦の8番艦としてである。
ミニッツ級と言えば正に近年のアメリカ海軍を象徴する、最初の原子力推進の「エンタープライズ」についで初の量産化が行われた航空母艦であり、満載排水量は91,400~102,000トン、全長は332.8メートル、全幅は78.0メートルの巨艦だ。

ニミッツ級は1番艦にしてネームシップの「ミニッツ」、3番艦の「カービン・ヴィンソン」、7番艦の「ジョン・C・ステニス」以外の7隻は、全て歴代のアメリカ大統領の名を付与されており、前3隻も含め全て人名となっている。
そんな中で8番艦には「ユナイテッド・ステーツ」と命名される可能性が伝えられていたが、結果としては大統領名である「ハリー・S・トルーマン」が採用され、復活の機会は訪れなかった。

ニミッツ級に替わる最新型の航空母艦としては、2017年に「ジェラルド・R・フォード」が就役を果たしており、こちらも大統領名が使用されている事からも、今後もアメリカ海軍が航空母艦に人名以外の艦名を付与する可能性は極めて低いと見做されている。

今後も命名は厳しそうな「ユナイテッド・ステーツ」

これまで最初の帆船のフリゲート艦以降、度々命名の候補に挙げられつつも様々な状況や理由から「ユナイテッド・ステーツ」と言う艦名が復活することが無かった経緯を簡単に振り返ってみた。
但し国名を艦艇の名称とするという観点から見れば、アメリカ海軍はアメリカ級強襲揚陸艦の1番艦に「アメリカ」を使用しており、「ユナイテッド・ステーツ」ではないが同じような意味合いは持たせているようにも見える。

世界的に見ても軍艦の名称と言えばその国において貢献が評価されている軍人や政治家、または王族等の名前が多い事を感じるが、日本はかつての大日本帝国海軍を始め、今の海上自衛隊でもそうした例は思い浮かばない。
してみるとそこには各国の文化の一端が色濃く反映されているようにも思え、個人的には中々に感慨にも似た趣の深さを感じすにはいられないと言うのが、偽らざる心境でもある。

featured image:Bruno Figallo, Public domain, via Wikimedia Commons

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