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VHS 多機能ブルパップアサルトライフル とは?

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2022年4月、アメリカ陸軍は現在の歩兵の主力小銃であるAR-15系のM4カービンから、次期正式装備をSIGザウアー社のXM5で代替する事を決定、M-16から始まった5.56x45mm弾から6.8×51mmへと乗り換える事となった。
第二次世界大戦後のアサルト・ライフルの代表格であったAR-15系と、小口径高速弾の先駆けとなった5.56x45mm弾から大きく舵を切ったこの事は、今後の西側各国のアサルト・ライフルの在り方にも影響を与えるだろう。

これまでは主として西側諸国のスタンダードなアサルト・ライフルとしてAR-15系は隆盛を極めていた訳だが、そんな中でも新しい形態のアサルト・ライフルが出現してこなかった訳ではない。
中でもオーストリアのシュタイヤー・マンリヒャー社が開発したステアーAUGは、1977年に同国連邦軍の正式採用小銃となり、ブルパップ方式と機関部に至るまで樹脂を多用したアサルト・ライフルとして注目を集めた。

トリガーやグリップの前方に機関部を配置するブルパップ方式は、銃そのものの全長を短くして取り回しを容易にしながらも、銃身長は従来のものと同等以上を確保したデザインとして一部で受け入れられた。
しかしブルパップ方式はその構造上、どうしても射手の顔の近くに機関部が寄っている為、発射音や薬莢が気になるとの総評も重なり、近年ではアサルト・ライフルの仕様としては下火感は否めない。
そうした潮流に抗うかのように未だブルパップ方式を継続しているアサルト・ライフルのひとつに、クロアチア陸軍が正式採用しているVHSがあり、少しその存在について記述して行きたい。

目次

クロアチア陸軍が正式採用しているVHS

VHSと言えばかつてのビデオテープのディファクト・スタンダードな規格を連想させるが、クロアチア語で多機能クロアチア自走小銃の頭文字から取られた名称であり、同国のHSプロダクト社が2000年代に開発した。
VHSは2008年よりクロアチア陸軍に本格的な配備が開始されたが、クロアチア自体が旧ユーゴスラヴィアの一部であり、それまでは他の東欧諸国と同様に旧ソ連のAK系統のアサルト・ライフルを使用していた。

クロアチアは2009年に正式にNATOに加盟したが、その加盟にあたりアサルト・ライフルも5.56x45mmNATO弾に変更する必要性があり、VHSはその仕様で開発され、作動にはショートストロークピストン方式が採用されている。
VHSは1977年からフランス陸軍が採用していた、同じブルパップ方式を持つFA-MASに非常に酷似した外観を持ち、銃床部分を若干シャープなデザインとしたと形容しても、ほぼ間違いがないと言ってよいだろう。

VHSの標準はD型と呼称されており、全長が760mm、銃身長が500mm、重量が3.0Kgで発射速度は毎分750発、因みにフランスのFA-MASは全長757mm、銃身長が488mm、重量が3.8Kgで発射速度は毎分900発以上と近似値である。

最新バージョンが2013年に発表されたVHS-2

VHSは2013年に最新版であるVHS-2に進化し、従来からのボルト・ハンドルとマガジン・リリース・ボタンに加えて、セミ・フルの切り替えやボルト・リリースもアンビ対応に変更され、外観もよりモダナイズされた。

最大のアンビ対応としてはこれまで主として右利き用で、右側のみに設けられていたエジェクション・ポートが左側にも追加され、機関部に設定を施す事で左利きの射手でも顔の側に排莢される状態を完全に無くしている。
またVHS-2では、元々ブルパップ方式の利点として従来型よりも短い全長にも関わらず、更に伸縮式のストックに変更され、デザイン的にもより筋肉質なイメージを抱かせる武骨なアサルト・ライフルとなっている。

これによりVHS-2の標準型の全長はストック伸張時には850mm、短縮時には800mmとなり、重量は3.85kgと前モデルに比して若干の大型化とはなったが、実用性・汎用性は共に着実に向上している事が窺える。
クロアチア陸軍では最初のVHSを14,000丁程調達していたが、最新型のVHS-2はそれよりも多い50,000丁程が調達される見込みであり、名実ともにクロアチアを代表する国産アサルト・ライフルの座を獲得している。

クロアチア以外でのVHS及びVHS-2の採用

これまで述べてきたようにクロアチアを代表するアサルト・ライフルとなったVHSとその最新バージョンのVHS-2だが、そこまで他国での採用例は多数ではないものの、一部の国々には輸出もされている。

VHSはクロアチアと同じ東欧圏のモンテネグロやアルバニアで採用されており、殊にアルバニアでは軍のみならず警察でも使用されるなど、ブルパップ方式の特徴である取り回しの良さが評価されていると思われる。
またVHS-2は西アフリカのトーゴや、ボスニア・ヘルツェゴビナのボスニア連邦特別警察、イラクのイラク連邦警察や特殊部隊でも採用されるなど、やはり取り回しの良さから法執行機関からの支持も高い。

VHSが当初はその外観が酷似していたと前述したFA-MASだが、フランスはその代替を企図したトライアルを行い、そこにVHS-2もエントリーしたがそこではドイツのHK416Fに敗れ、採用を勝ち取る事は出来なかった。

VHS及びVHS-2のバリエーション展開

最初のモデルであるVHSには前述した20インチの銃身長を持つ標準形のVHS-Dと、それをベースに銃身長を16インチに切り詰めたカービン・タイプのVHS-Kの2種類のモデルがラインナップされていた。
続くVHS-2でもこの標準型とそれを切り詰めたカービン・タイプの展開は踏襲され、前者がVHS-D2,後者がVHS-K2と呼称されているが、これに加えてキャリング・ハンドル部分が2タイプある為、都合4種類となっている。

これはキャリング・ハンドルがVHSやそれが酷似しているFA-MASのようにほぼ直角に近い線で構成されたものと、光学照準器を埋め込んだ少し複雑な形状のものとなっており、後者にはCTと言う形式名が付与されている。
クロアチア軍で採用されているのは基本的には前者の標準モデルであり、後者のCTタイプは見た目の印象のそのままに、より精度の高い射撃が求められる特殊部隊等の使用を前提に製造されている事が窺える。

ブルパップ方式のアサルト・ライフルの今後

冒頭でも少し触れたように、1977年にオーストリア連邦軍がステアーAUGを正式採用した頃には、この形式のコロンブスの卵的発想は今後のアサルト・ライフルの潮流の中心になるのではないかとすら感じられた。
それだけ銃身長を確保しつつ、銃そのもののサイズを取り回し易くすると言うコンセプトにはインパクトがあり、樹脂製のパーツを多用した仕様とその近未来的な外観も将来性を感じさせるには十分だった。

しかしフランスが今回のVHSに多大な影響を与えたであろうFA-MASに見切りをつけ、どちらかと言えばオーソドックスなドイツ製のHK416Fに回帰した事はブルパップ方式の利点をそこまで実感はしなかった事が窺える。
今後もそのブルパップ方式に対する世界的な評価が戻る事はないと思えるのだが、VHSにはアサルト・ライフルの多様性と言う意味でも個人的にはエールを送りたいと言うのが正直な感想である。

featured image:U.S. Department of Defense Current Photos, Public domain, via Wikimedia Commons

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