昨今、WEB小説の投稿サイトといえば「小説家になろう」や「カクヨム」といった企業が運営するサイトが一般化しています。今や100万人を超えるプラットフォームが構築されており、人気が出れば書籍化も出来るといった環境が整っているので、まさに小説家を夢見る人のための登竜門といっても過言ではありません。
さて、このように現在では当たり前になっている超大型のWEB投稿サイトですが、これらが生まれる前の時代を皆さんはご存じでしょうか。
そして、そんな時代の小説家たちがいったいどのような小説を書き、どこにその小説を投稿していたのか皆さん知っているでしょうか。
今回は、そんなWEB小説黎明期ともいうべき時代に、小説家の卵達がこぞって小説を投稿した古の小説投稿サイトをご紹介したいと思います。
いにしえの小説投稿サイト「Arcadia」
通称「理想郷」。
2000年に開設され、恐らく現存する小説投稿サイトの中で、黎明期の形を最も色濃く残しているサイトです。30台後半の人でWEB小説を趣味としている人であれば必ず知っている、といっても過言ではないほど当時は高い知名度を誇っていました。
そして、このArcadiaの特筆すべき点、それは企業や集団ではなく、ただの個人が運営しているというところです。それはすなわち、ただの個人が立ち上げたサイトがWEB小説黎明期の礎を支える柱の一つであったと言っても過言ではありません。
かつて投稿された有名作品たち
このサイトに投稿には「ランキング」や「評価」といった、今では当たり前の機能がありません。そのため、小説の良し悪しを測る指標となったのが作品の「PV数」です。面白くないと判断された小説はPV数が全く伸びず、感想欄にも酷評が溢れますが、逆に面白いと判断された小説はPV数が勝手に伸びるため、一目で実力が分かります。
皆さんもよく知っているであろう「オーバーロード」や「幼女戦記」といった有名作品も、書籍化前の物がこのサイトに投稿されており、圧倒的なPV数を獲得していました。
また、現在は削除されていますが、「アクセルワールド」も「超絶加速バーストリンカー」という題名で投稿され、そのありきたりな名前とは裏腹に大きな人気を獲得していたのは今でも語り草になっているほどです。
世の中に出ていない傑作たち
このサイトから有名な作品がいくつか生まれていますが、逆に傑作と言われながら世の中に出ていない作品も数多く存在します。しかし、このサイトにはランキングや評価機能が無いことに加えて「検索機能」すら存在せず、地道に手作業で探さなければそれらを見つけることが出来ません。
かの名作に負けないほど魅力に溢れ、黎明期を盛り上げた作品たちが今もなお、多くの人に知られることなく眠っています。私も定期的にこのサイトに訪問し、かつて読んだ名作を読み返したりしています。
侮れない二次創作たち
今回はオリジナル小説ばかり紹介してきました、本来このサイトは二次創作の投稿が最も活発でした。二次創作の中には今でもよく見る設定の物もあれば、逆に作者本人よりも本人らしい作品、あるいは本人すら超えたのではないかと思えるほどの作品が数多く存在します。
個人的にはなりますが、「バキ」の範馬勇次郎を主人公としたとある二次創作の完成度が今だに忘れられず、作者本人に漫画化を依頼しようか悩んでいるほどです。
今もなお続く理想郷
改めて紹介しますが、この小説投稿サイト「Arcadia」は今もなお現存します。
確かに不便ではありますが、手探りで小説を探す楽しみは、今の小説投稿サイトでは決して味わえないものがあります。
あなたもかつて栄えた小説家たちの理想郷に訪れて、黎明期の小説たちを一度読み漁ってみませんか。
※画像はイメージです。
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