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「知ったら〇〇しなければいけない」系の怪談

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怪談や都市伝説を読み漁っていると、よく「この話を聞くと・・・」「この話を読んでしまったら・・・」などというオチで締めくくるタイプの話に遭遇することがよくある。

その手の話で有名どころといえば、童謡「さっちゃん」に纏わる噂や都市伝説あたりではないだろうか。例えば「さっちゃん」の歌詞を最後まで知ってしまったら、さっちゃんに呪いをかけられてしまう。さっちゃんの噂を話す、またはそれを聞いてしまった者は夜、寝ている間にさっちゃんが現れて足を大きな鎌で切り取られてしまう。バリュエーションは他にも色々あるが、特筆すべきはそこに「怪異からの攻撃から身を守る術」も一緒に語られることだ。

先ほどの例で言うならば、前者の場合は「自分が知ってしまったさっちゃんの歌詞を複数名に教える」、後者では「枕元にさっちゃんの大好物であるバナナ、もしくはバナナの絵を置いておく」と大丈夫らしいが……僕はどうも、釈然としない。

実は、僕はこういう「この話を知ってしまったが最後、あなたの元にも〇〇がやってくる」系の怪談が大嫌いだった。ただ単に亡霊だの悪霊だのが自分に迫ってくるのが怖いんじゃない、ただ聞き手を巻き込んで無理やり「ほら、この話怖いでしょう? だってあなたの所にも『それ』は来るんですよ? それってとっても怖いでしょう? 怖いのが当然でしょう?」なんて押し付けがましい感じがして非常に不愉快なのだ。
映画が好きな方なら、「感動の実話」とか「全米が涙した」とかいうキャッチコピーを全面的に推されすぎてもう見るのも嫌になってくるレベルと考えていただければわかるかもしれない。「怖い」のも「泣ける」のも決めるはあくまで聞き手や視聴者であって、作り手や話し手がどうこう言う問題ではないのだ。それをわざわざごり押しするなんて、まるで個人の価値観を否定されているようでついイライラしてしまうのである。

それに――僕が「聞いた者・知った者にも危害が及ぶが、〇〇すれば助かる」系の話を嫌う理由はもう一つある。それは、話し手が悪意を持って聞き手の行動を上手くコントロールしようとしている可能性が否定できないからである。

――ある合コンで男の一人が、この手「知ったら伝染する系」の怪談を女子に話してみせた。そこまではまだ良いのだが、問題はこの後。なぜならその怪異を回避する方法が、「寝る前に窓のカギを開け、数センチだけ開いておく」だったからである。

「この話を聞いたら、高確率で女性の部屋に忍び込める。女が一人暮らしであることや、だいたいどの辺りに住んでいるかは他の世間話でそれとなく聞き出した。だから――夜中に、女一人の部屋へ簡単に入り込むことができる」

つまり彼らは怪談を利用して女性たちに恐怖心を与え、言われるがままに「怪異から身を守る方法」を実践した女たちに自分たちが危害を加えようとしていたのである。
怪談は、興味ないふりをして聞き流していても心のどこかに「ひょっとしたら」という不安を植え付ける。それを拭い去ることができず保険のつもりでやったことが、怪異でもなんでもないただ悪意を持った人間に利用される――そんな卑怯で陰湿な企みが隠れているような気がして、僕はこの手の怪談を聞くことが嫌で仕方ないのである。

僕はオカルトの類を信じているし、『忠告を舐めてかかっていたら本物の『怪異』に遭遇した』『半信半疑だったけど一人になったら怖くなって、なんとなく対策をしていたおかげで助かった』という話も喜んで聞く自信がある。だが――「これを聞いたあなたも」系の話は絶対にパスだ。そもそも本当に怖い話ならフィクションでも十分に怖い、それは名だたるホラー映画や今なお語り継がれる他の都市伝説が既に証明済みである。
そうやって怪談を磨く努力を怠り、あまつさえそれを自身の卑劣な犯行に使うなど言語道断だ――そんな怒りと不満があるから、僕は「聞いた・知ったら来る」系の話が嫌いなのだが・・・同時に、目に見えない存在を利用してそんなことを考える、悪辣な連中がこの世に存在することにどうしても寒気を感じてしまうことがあるのである。

ペンネーム:ニコ
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※画像はイメージです。

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