さて今回紹介するアニメ作品は、1997年に放映され一旦中断されるものの、後の1999年に再開され完結した。
あの日本アニメーションの巨匠である「出崎統」監督作品である、SF冒険活劇である「白鯨伝説」を紹介したいと思います。
この作品は、あのハーマン・メルヴィルの小説作品である「白鯨」にインスピレーションを抱き、出崎監督が長年に構想を練り、長い年月を掛けて熟成させたアイディアの集大成として制作した、多くの名作を世に出した出崎監督の代表的な名作としてあげてもいいSFアニメ作品です。
ストーリー
この舞台となる世界は、人々が宇宙へと進出し、多くの星々に文明を築き、宇宙へと進出する事が当たり前となっていた、遥かなる未来。
かつて宇宙バブルと呼ばれた宇宙進出で莫大な利益を得ていた時代が終わりを迎え、その時代の象徴であった宇宙船の多くは、そのまま宇宙へと放置されてしまいます。
自動操縦のまま宇宙を彷徨う宇宙船を「鯨」と揶揄する様になり、その船こと鯨を解体する業者の事と鯨捕りと呼ぶようになり、その荒くれの命知らずな鯨捕りの中でも、もっとも有名と謳われるエイハブ・イシュマール・アリことエイハブ船長と、その仲間であるレディ・ウィスカー号の乗組員である「エイハブ鯨捕りカンパニー」の面々は、最高の鯨捕りと呼ばれていました。
そんな彼らに救いを求めてやってきたのは、惑星モアドの危機を救ってほしいと訪れた少女・ラッキー・ラックは、エイハブ船長に、惑星を破壊する兵器である「白鯨」を倒してほしいと依頼をしに、遠く離れた地であるキング・クーロンへと訪れたのです。
かつて白鯨と対峙し、隻眼、隻脚とされた過去があり、再び白鯨へと挑む為に、惑星モアドへと向かう・・・と、実に熱い展開を見せてくれるSFアニメ作品です。
作品のみどころ
この「白鯨伝説」の中で、最も注目すべき点は、エイハブ船長と、その仲間達の魅力にあります。
物語の大きなカギを握る惑星開発用アンドロイドとして改造させられてしまった青年・デュウに、ラッキーの良き相棒となる、わんぱく小僧のアトレ、またエイハブ鯨捕りグループのマスコット的なロボット鳥のルーシー。
怪我の堪えない仲間達の治療を手掛けるドクターのドクに、味付けがいまいちな料理長のクックと、先住民族タトゥ族の末裔である巨漢のババに、元ロードレーサーチャンプのスピードキング。
どんなモノを切断する超セラミック剣の使い手で、クールであるもどこか抜けているムッツに、元は将来を有望視されていた科学者であるアカデミアス、エイハブ船長と深い因縁がある刑事のホワイトハットと、個性的な面々で物語は綴られていき、登場人物達の独特な個性に、いつも物語ははずみ、それぞれに登場する人物達の深い物語が、この作品の見どころとも言えました。
そして何よりの見どころとなるのは、この出崎監督の描いた、独特な未来の世界観と、そして深く設定された、登場人物のドラマ性と、出崎監督の持つ、深い人生観の在り方など、この作品を通して見れる、登場人物達のそれぞれの生き方にあり、熱く、ただ熱く生きようとする、そんな武骨で不器用な人間達の物語は、遥かな未来でも変わらずに綴られているのだと、出崎監督の持つ深いテーマに込められた、そんな熱いSFドラマを楽しめる、至高のアニメーションでもあったのです。
不遇の作品
この作品は放送当時、クオリティーを維持を維持する為に制作状況が逼迫してしまい、幾度となく総集編や再放送で間を伸ばし続け、その最中に制作会社が倒産して1997年10月の18話で一度打ち切りになります。
その後、手塚プロダクションに権利が移り約2年後の1999年3月から19話が再開しますが、構想では全39話のはずが26話で終了。
さらに困ったことに、中盤以降の作画の低下、余計なギャグパートの増加が作品に悪影響を与えてきます。
13話も削られてしまった為に、設定や展開がブレブレのやっつけ仕事が多くなり、ギリギリ伏線回収というかねじ伏せたように完結し、かなり疑問が残る中途半端な後味が残る終わり方をします・・・
宇宙へと馳せる想いと、そしてその世界に生きる男達の物語とすれば、それなりに楽しめる今作。
ネタとしても一度見て損の無い、名作アニメです。
(C) 1997 白鯨伝説 手塚プロダクション
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