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地元のXXX・・・ひと夏の怖い想いで

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子供の頃っていうのは、好奇心から今では考えられないようなことを平気でします。
でも大人になっていつも思うのは、「知っていれば・・・やらなかったのになぁ・・・」という後悔ばかり。

目次

祭り

小学校三年生くらいの時、僕にはいつも仲のいい二人の友人、E太とU助がいました。
夏休みの日、近所の神社で夏祭りがあって、三人で夜に行こうよってことになったんです。

子供だけじゃあ危ないってんで、E太の父親が保護者役を買って出てくれてね。でもまぁ、大人ってのはずっと子供のことを見てられるもんでもない。たまたま会社の上司さんが祭りに来ていたみたいで、話し込んでしまった。
じっとしていられる子供はいない。
当然、僕たちは父親に軽く声をかけ、「遠くに行くなよ」なんて、声を背中に祭りの雑踏の中に走り出すわけですよ。

だけど、都会の大きい祭りならともかく田舎の祭りってのはそんなに見るものもない。子供なんだから高い食べ物たらふく買って、豪遊なんて夢のまた夢。
金が底をつくと途端に飽きてくるものの、遠目に父親を見たらまーだ長々と話し込んでる。

いやーこれは面白くない。
せっかくの祭りなのに、「このままじゃあ退屈な思い出だ!」なんてE太が言い出して、U助もそれに同意する。
このころにはもう、親の言いつけなんざ知ったこっちゃないってね。
そんな時、三人の中で一番博識なU助がこう言うわけですよ。
「そういえば、神社近くの森を抜けた先に面白いものがある」と。

現在進行形で退屈を持て余している身なんだ、そんな言葉に僕もE太もすぐに乗っかって、U助が知っている事を話しながら向かっていった。

そこには小さな祠が一つある。
その祠について大人連中に聞いてもなにかは知らない、じゃあ爺さん婆さんは知っているのかといえば解らない、今じゃあ誰もそれについて詳しく知らないときたもんだ。
「どうせなら、それを調べて自由研究にでもしてやろう」
そんな考えが出るのも、まぁわかるような気がするでしょ。

そんでしばらく歩いたら、あったんですよ、祠。
まぁ、そこを目指して歩いてたんだからあるんでしょうが、それでも誰も知らないなら、もうないんじゃないかって、心の底では馬鹿にしてたんです。

祠は長年の風雨にさらされてすっかり朽ちちまってるみたいで、しめ縄みたいなものもそこに貼ってあると思われるお札ももうボロボロ。
祠って言っても神様のいるような神々しいモノを想像しちゃあだめですよ。どっちかっていえば、やばいものを封じて蓋してますよって感じで、もし本当にここに何かいるんだとしたら、中から出てくるんじゃないかって思いましたよ。

唐突に先頭を歩いていたE太が言うんですよ。
「これ、剥がして持ってってもいいかなぁ」って。
「いやいや、言い訳もないでしょう?そんな罰当たりな」
二人で口をそろえて言うんですけど、
「だって、ここまで来たのに見て終わりもないだろう。何か持って帰らないと、時間の無駄じゃあ。」
とE太はすこしイラっとしたような様子なんです。

そうこう言っているうちに、E太はお札に手をかけ、そして、ベリッという音とともに一枚のお札をはがした。
するとまるで、それが留め具代わりにでもなっていたかのように、しめ縄がするするっとほどけて落ちたんです。
その時、僕たちはびっくりしちゃって、皆が大きな声で叫んじゃったんですが、周囲は静寂に包まれていました。祭りの喧騒すら聞こえないほどに。

「いや、これはマズいんじゃないの?」
僕自身頭の中でそう思い始めてきたところで、お札をはがしたE太がふらふら、と祠に近づくのが見えたんです。

開けてはならない

「何やってんだ。剥がしたんなら、もう戻ろう」
そう声をかけるも、E太はそのまま知らんぷりで聞こえてないかのように迷うことなく、祠の扉に手をかけようとした。
こりゃあまずい。なんでかはわからないけど、きっとよくないことが起こる。
何となく直感でそう思った僕は、E太を必死に羽交い絞めにするが、それでも扉を開けようとする。

自慢じゃあないんですが僕は小学校の頃、結構体格が良かった方なんです。E太に比べて、身長も体重も重かった。けど、止まらない。
「やばい、やばいやばいやばい!」
理由なんてわからないけど、その時は心臓がバクバクして汗が止まりませんでした。
あれを開けちまったらだめだ。あれが開いたら、何かが出てくる気がする。
その時には僕は確信をもって、祠を開けようとするE太を必死に止めていました。

そんな時、U助がE太の手元に気が付いたんです。そこには、さっき剥がしたお札がクシャクシャになるほどの力で握られていた。なるほど、これが原因か?そう思ったU助は何とかE太の手からお札を奪い取ろうとしますが、万力みたいな力で握られていて取れやしない。
このままじゃあ万事休すか、そう思ったときE太とのある場面がふと頭をよぎった。

僕はE太と教室でふざけあって遊んでいた時、ふざけた流れでE太の脇をくすぐったんですね。
そうしたら彼、遊びにならないほどに強く手を振り回し、僕は飛ばされて背中から転んでしまった。幸いけがしなかものの、「脇だけは弱いから触るな」と怒られてしまった事を。
僕はE太を羽交い絞めにしたまま、U助に彼の脇をくすぐるように頼みました。
U助も僕と彼のそのシーンを見ていたがために難色を示したものの、もうそんなことを言っている場合じゃない。
U助は意を決してE太の脇を、優しく両手でくすぐり始めました。

最初はそんなこと気にもしていなかったE太も、だんだんと体が震えだす。そして、耐えられなくなったのか暴れ始め、両腕を羽交い絞めにされてるもんで代わりに両足を必死にじたばた、じたばた。
その拍子にE太の手からお札が落ちた。

こりゃあチャンスとばかりに、僕はE太の体から離れるとお札をつかみ取り、そのまま祠の扉に張り付けたんです。
それで正解だったみたい。まるで水の中から出てきたかのように、だんだんと周囲に元の祭りの音が聞こえ始めてきた。
とはいえこのままここにいるのは恐ろしいってんで、まだ何のことかわかってないE太をU助と二人で立たせ、必死で元の祭りの屋台のとこまで戻りました。

祭りに戻ると、僕たちのことを探してたのかE太の父親がこっちに走ってきました。

僕たちの異変に気づいたんでしょう。
「どうした、何があった?」
いつもの優しい感じとは違い、詰問するようなその言葉に委縮しつつも、僕たちはぽつりぽつりとさっきまでのことを話しました。
するとE太の父親は神妙な顔つきで「わかった」とだけ言って、今日はもう帰ろうと僕らに促します。
「こんな気分じゃあ祭りなんて楽しめるもんじゃない」と思い、僕らは家路につきました。

祠の正体

次の日、「今日は何もする気にならないなぁ」なんて思ってゴロゴロとしていました。そしたらうちの母が、いきなり部屋に入ってきた。
「なんだ、どうしたんだ母さん?」なんていう暇もない速さで、母は僕をにらみつけるとこういいました。
「あんた、今日は家から出るんじゃないよ」って。

いきなり何のことかわからなかった僕は、なんでなのかを聞こうとしますが母はそれを遮るように、こういったのです。
「祠、触ったでしょ」
雷に打たれたかのように、その言葉に僕の体はピシッと止まる。「うん」と小さく声を漏らすことしかできない。
結局その日は一日中、僕はカーテンも閉めたままの部屋でぼーっと天井を見上げていました。

次の日、朝になって母に玄関に呼び出されました。
「祠、どうなった?」
恐る恐るそう聞いた僕に対し、母は安心させるかのように笑顔を浮かべました。
「ちゃんと縄も締めなおしたし、お札も張りなおしたってさ」
その言葉を聞いて、僕はひどく安心したのか体の力が抜けてへたり込んでしまいました。

しばらくし夏休みが終わり学校に行くと、E太とU助も無事だったようでほっと一安心。
そして、会話はあの日のことになったんです。

「E太、あの時なんで羽交い絞めにしてまで止めたのに祠開けようとしたんだよ」

僕はあの日からずっと疑問に思ってたことを彼に聞きました。
E太はお札をはがした時までの記憶しかなくて、その後はずっと子供の泣く声が聞こえていた・・・と。

後で聞いた話なんですが、あの祠は昔この土地で口減らしで間引かれた子供の供養のためにあったのだと。
親世代も祖父世代も、話には聞いていたものの面白いものでもないし、むやみに近づくこともない・・・つまりは土地のタブーだったようです。
話をしなければ、子供たちも好き好んであんなところまでいかないだろう。そう思って、私たちには話さなかったそうです。

もちろん私たちも悪かったんですが、それならむしろちゃんと言っておいてほしかったなぁ。
今になって、そう思いましたよ。

※画像はイメージです。

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