その日彼は仕事が遅くなり、雨の降る深夜1時頃、家路につきました。
深夜のエレベーター
連日仕事の残業が深夜まで続き、疲れていた私は寝ぼけ顔で住んでいる団地のエレベーターを待っていました。
エレベーターが到着し乗ろうとした時、ドンとぶつかり、後ろでエレベーターを待っていた住人が、いつの間にか先に乗り込んでいたので。
「なんだよ、割り込みやがって・・・ぶつかったのに謝罪も無しかよ」と思いつつ、エレベーターの中では何か様子がおかしい。行先階ボタンを押したその人はボタンの前から離れず、黄色いレインコートを深く被ったまま俯き立っていたのです。
「すいません。7階お願いします。」
「・・・・・」
「あのー、7階のボタン押してください」
「・・・・・」
聞こえているのかいないのか?
返事もなくボタンも押す気配が無いため、仕方なく横から自分の行きたい階を押しました。
気味が悪いと思いながらも、連日の疲労で文句を言う気にもなれず、真っ直ぐ帰宅した後、すぐにお風呂に入って寝ました。
次の日の朝
「ちょっと!!大丈夫なの?!」
次の日の朝、母が慌てて部屋にやって来て、「怪我は?!病院行く?!」と聞いてきます。
「どこも悪くないけど、何で?」
「昨日あんたが着てた服、血まみれだよ」
「え?」
慌てて脱衣所へ確認に行くと、本当に服が血まみれになっていました。
身に覚えが無いのに?
そして間もなく、ピンポーンと呼び鈴がなりました。
「〇〇県警ですが。昨夜の事で息子さんにお話伺えますか?」
昨夜のエレベーターの防犯カメラを見た警察が尋ねてきてたのです。
住人の正体?
警察の話によると、昨夜エレベーターで一緒になった住人は上の階に住んでいる人で、昨夜遅くに自宅のベランダから飛び降り自殺をしたそう。
「自殺をした人が、何故僕と同じエレベーターに乗ってきたんですか?」
「それが、8階から飛び降りた際に1度自殺に失敗しているらしく、エレベーターで自宅まで戻ってからもう一度飛び降りたと考えられます。」
という事は、レインコートを深く被っていて気が付かなかったが、レインコートの中は・・・?
あの時、声をかけていれば何かが変わっていたのか?
1度自殺に失敗したとはいえ、果たして8階から落ちた人がエレベーターに乗ってもう一度飛び降りるまで動けたのか?
今でも何だったのか?と不思議に思うのです。
思った事を何でも!ネガティブOK!