沖縄のシャーマン、ユタとノロ。どうちがうの?歴史を交えて徹底解説

日本列島におけるスピリチュアルの本場、沖縄。
江戸幕府が続いた五百年の間、首里城を中心に琉球王国として自治を敷いていたここには、土着のシャーマニズムが根付いています。

そんな沖縄の歴史を語る上で欠かせないのがユタとノロ。
両方とも沖縄のシャーマンですが、その役割や性質は微妙に異なっています。

今回は沖縄の複雑な歴史や信仰を交え、ユタとノロの違いを説明していきます。

目次

ユタとノロ、最大の違いは交信する相手

まず簡単にざっくりいうと、ユタとノロ最大の違いは交信する対象です。

ユタが交信するのは霊と名前が付くもの、即ち死霊や神霊。いわゆる霊魂全般なので不浄なものも含みます。
死者の口寄せを生業とする東北のイタコを例にとればわかりやすいかもしれません。

対するノロが交信するのはニライカナイの神々やその土地の守護神。
こういってはなんですが、ユタが祀る死霊よりも位が高く神聖な信仰対象です。

同じスピリチュアルな通訳でもノロは神の依代と崇められ、ユタは民間のシャーマンとして頼られました。

ノロは集落の祭祀を司った古代の巫女たち

ノロのイメージに一番近いのは邪馬台国の女王、卑弥呼かもしれません。

琉球におけるノロは太古より祭祀を司り、豊穣の祈りを捧げてきました。
当時は稲作が主だったので、天候を左右するノロの祈祷が重視されてきたのです。

遥か昔の琉球では、集落を作る際にまず最初に御嶽が選定されました。御嶽は琉球人が神を祀る場所で、様々な冠婚葬祭とも関連しています。

御嶽に祀る神には諸説あります。
ニライカナイの神や祖先を祀ることもあれば、実在した偉人も拝まれたそうです。
ちなみにニライカナイとは琉球の人々が信じる、海底もしくは海のはての理想郷のこと。古今東西、海に面した土地によく見られる信仰形態です。

御嶽での祭祀を司ったのが集落の長たる女性たち、根神(ニーガミ)。ノロの前身です。

しかし小規模な共同体が群雄割拠する時代は終わり、やがて琉球王府が開かれました。
琉球王国第二尚氏王統、第3代国王の尚真王は根神の制度を刷新。新たに聞得大君を頂点とする三十三君体制を敷き、権力を集約します。

聞得大君とは国家の吉兆を占い、公式な祭事を取り仕切る祝女(ノロ)の最高位。
王の姉妹、または王女から任命されました。
この制度再編に伴って、それぞれの地域を統べる巫女たちもノロと呼ばれるようになりました。

早い話、ノロとは琉球王府公認のシャーマン。ユタが市井の霊障を解決して報酬を得る一方、ノロたちは国家から給料をもらっていました。
さらにノロは厳格な世襲制。一般に女性の方が霊感が強いといいますが、やはり特別視されていたのでしょうか。

■「ノロ」昭和初期
Unknown authorUnknown author, Public domain, via Wikimedia Commons

ユタは何でも屋を兼ねる民間のシャーマン

片やユタですが、彼女たちも古くから存在しています。国家公務員のノロに対し、こちらは民間の何でも屋。

依頼人が持ち込む様々な悩みや体の不具合をスピリチュアルな力を用いて処理し、見返りに相談料を受け取っていました。

ノロは神の力を借りて託宣を行いますが、ユタが力を借りるのは死霊や祖霊。
神道が亡者を穢れと見なすのを思い出してください。
亡魂を体に入れて過去と未来を見通すユタは、アドバイザーとして頼られる反面忌避されてもいたのです。

また、ノロは女性で構成されていますがユタには少数ながら男性が存在します。これは血筋よりも実用性を重んじたからでしょうか、興味深いですね。

王府に任命されたノロの中には地位に見合った力を持たず、民間人を失望させた者もいます。
彼女たちへの不信と政府への反感が、民間人とユタの結び付きを強める原動力となりました。

このような背景からユタは弾圧されてきましたが、現在でも沖縄の人々にとって近しい存在であり続けています。

■「ユタ」(祈祷 1955年頃)
English: Okinawa Times日本語: 沖縄タイムス社, Public domain, via Wikimedia Commons

神を身に宿すノロ、されど処女性は問わず

もう少し詳しくノロの実態を掘り下げていきます。

ノロは沖縄神道の概念、おなり神の産物。彼女たちは祭祀の期間、自らの身の内に神を宿すことで神と一体化します。その為「神人」(かみんちゅ)の別名で呼ばれました。
ノロを輩出する家系は「ノロ殿地」と称され、大半の場合において王府から任命されます。一度ノロに指名されたら死ぬまでやめられず、務めをまっとうしなければいけません。

ノロの霊格は三代後に引き継がれるとされ、沖縄の実話怪談を読んでいると、「ノロの祖母から霊能力を受け継いだ孫娘の体験談」が実例として多く登場します。

特筆すべきは処女か否かは然程重視されないこと。未婚か既婚か、年齢などは一応問われますがそれも形式的なものです。
ノロは神の依代となるべくして生きる器なので、処女性の重要度は世代を経て磨かれた血筋と能力の後に回されました。

ノロとユタは活動場所も異なる

ノロとユタは活動場所にも明確な違いがあります。
ノロは主として御嶽や城にこもり、御願所(ウグヮンジョ)や拝所(ハイショ)の司祭を担いました。

一方ユタは自らあちこちに出向き、依頼人や家族の運勢を占い、病気の治癒祈願を行います。

国家公務員であるノロの活動は色々と制限が課されますが、ユタはフットワーク軽く移動できるので、なんなら自分から売り込みに行く事も可能でした。

沖縄の怖い話でノロよりユタの登場回数の方が多いのは、この性質にも起因しています。
神の依代たるノロは出産時の血の穢れや死を忌み嫌いますが、ユタはむしろ積極的に関わり、遺族と共に供養を行いました。

ユタに依頼するのは恥ずかしい?相談は女性が代行

ノロとユタ……両者は役割こそ違えどシャーマニズムに通じ、古くから沖縄を支えてきた人々です。
とはいえ、沖縄の一部ではユタの存在を迷信とする風潮も根強く残っています。

特に男性はユタに頼るのを恥とし、何かトラブルが起きた際も自分で出向かず、主に妻や母を派遣しました。
ユタへの依頼者は身分の上下や貧富を問わず、実に幅広い層に渡っていたそうです。

ユタとノロを深く知る手引書、池上永一『テンペスト』

ここまで読んで沖縄の歴史やユタとノロに興味が出た方に、おすすめの一冊があります。
それが池上永一の小説『テンペスト』。

本作は聡明な少女・真鶴が兄の身代わりとなって王府に上がり、優れた機転と正しい心で出世していく波乱万丈な歴史小説。
本作のキーパーソンとして登場するのが王の実姉の聞得大君、真牛。ノロのトップです。

本作の舞台は幕末、黒船が来航した時代。
真牛は王府の弱体化を憂い、聞得大君の地位の回復に試行錯誤した挙句、遂には市井に放逐されて辛酸をなめました。
ノロを追放された真牛がユタに身を落とし、最後には遊女(ジュリ)となる遍歴を辿れば、残酷なまでの待遇の差が如実にわかります。

池上永一は本作の他にも沖縄を舞台にした作品を多く手がけており、そのどれもにユタやノロが登場するのでぜひ読み比べてください。

まとめ

以上、沖縄を代表するシャーマン、ユタとノロの違いをご紹介しました。
ノロは神の依代として共同体の安寧を祈り、ユタは霊を口寄せして個人の拠り所となります。

しかし単純にノロが格上とも決め付けられません。民間人の問題解決に奔走したのはむしろノロであり、沖縄の人々にとってはそちらの方がより身近な存在ともいえます。

あなたも沖縄に行ったらぜひ御嶽を巡り、琉球のシャーマニズムを支えたノロやシャーマンの痕跡を追ってみてください。

余談ですが島田秀平の「お怪談巡り」にて、お笑い芸人なすびの元相方・ルンルンキンジョウが語った話も、ノロとユタの違いを端的に知る上で役に立ちました。興味がある方はご覧ください。

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※一部の画像はイメージです。

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