412号室で何が起きている?

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私は今でも現役の「おばちゃん看護師」です。
これは昔々、有料老人ホームで働いていた頃に体験したちょっと不思議な話です。

目次

412号室の利用者さん

Aさんという男性が412号室に入居されていました。
スラリと背が高く、がっしりした体つき、なかなかのイケメン、施設の中で目立つ存在。
お元気そうに見えていたんですが、ある日「お腹の調子が悪い」と言い出し、念のためと大きな病院での検査すると、結果は「かなり進行した癌」だったのです。
療情報提供書を見たときは驚きが隠せなく、施設内の看護師たちが動揺したのを今でも覚えています。

最初のうちは気丈にふるまっていたAさんですが、日を追うごとに痩せていき、やがて食事もほとんど摂れなくなり、半年ほどで、ご家族に見守られながら静かに息を引き取ってしまったのです。
あまりにあっけない最後に言葉を失いました。

歌が聞こえる

Aさんが亡くなったあと、412号室はしばらく空室でしたが、いつしか夜勤の看護師の間で「空いてるはずの412号室から、歌声が聞こえた」という噂が広がりました。

あるとき、ひとりの看護師さんが見回りをしていると歌声のような声が聞こえて来たそうです。
彼女は幽霊なんか絶体信じないという現実主義者で、「どうせ他の入居者さんのテレビの音か、どこかの部屋の鼻歌じゃないの?」と思い、隣の部屋、その隣の部屋と、入居者に迷惑がかからないように回ったんですけど、どこからでもなかった。
でも声は聞こえてくるので、思い切って412号室のドアを開けて中を覗いたら、その瞬間にスッと声が止まったそうで、部屋の中を調べても誰もいないし、なんの音も聞こえず・・・その不気味な現象に身震いしたとか。

それからというもの、夜勤のスタッフから「昼間は明るくて普通なのに、夜になると雰囲気が変わる」、「パシッ、パシッとラップ音が聞こえる」と様々な話が聞こえてくるようになって、「夜の412号室には近づいてはいけない」と恐れられるようになったのでした。

真面目な顔をしてだれもが話すので、私も霊とかまったく信じていませんが、昼間だけの勤務でよかったとホッとしたものです。

412号室

その日は、予期せぬ事が沢山起きて定時で上がることができず、仕方なく19時ぐらいに412号室へ吸引機の消毒と片付けに向かう事になってしまいました。

日は沈み、廊下はもう薄暗くて何か気持ち悪い。
あの412号室へ行かなきゃならないと思うと、怖くて仕方ありません。
どこかに何かいるような、一刻も早く立ち去りたい衝動に駆られ、私はドアを開けっぱなしにして、ストッパーで固定して、部屋の電気を全部つけて作業しました。
普段なら電気を節約するのに、とにかく明るくしておきたかった。

ようやく仕事が終わる頃、どこからか歌声が聞こえてきました。
それも「夢芝居」・・・・Aさんは演歌が大好きだった。

驚いて辺りを見渡した瞬間、部屋の電気が一斉に切れ、何者かに目隠しされました。
腰を抜かしてその場にぺたりと座り込んでしまうと、後ろには入居者の一人のおじいちゃんがいました。
どうもこの部屋の噂を聞いて、やってくる看護師を時々驚かして遊んでいたそうなのです。

私はおじいちゃんにもう二度とこんな事はしないと約束させ、そそくさとその場を立ち去りました。
酷いいたずらです。生きた心地がしませんでした。

新しい入居者

そのうちに412号室には、新しい入居者がいらっしゃいました。
スラリと背が高くて筋肉質で、ハキハキと話をされる聡明な方で、金融関係の会社のCEOをされていたらしく、経営のことや社会情勢のことなど幅広い知識をお持ち。
とても意欲的で活動的な方で、上から目線でものを言われることが多く、一部の職員からはかなり反感を買っていました。
同じ部屋なのに、気さくで親しみやすいAさんとは大違いです。

時々ご自分でも居心地が悪くなるようで、突然お知り合いの先生がおられる大学病院に入院してはほとぼりが覚めた頃に退院して戻ってくる。何度かそんなことを繰り返しているうちに「お腹の調子が悪い」と言い出して、検査をしてもらうと悪性の腫瘍が見つかります。それもAさんを同じ場所に。
そして、あれよいう間にご逝去されてしまいました。

偶然なのか?

ご高齢の方が入居される施設なので、決して不思議なことではないのでしょう。
でも、こうも立て続けに同じ部屋で、お元気な方が入居されてしばらくしたら突然病気が見つかって、あっという間にご逝去されるということが続くと、やはり何かあると考えてしまいますよね。

ちなみにですが、このCEOさんは夜中に演歌を歌うなんて非常識だとクレームをちょくちょく入れたとか。
あの職員を脅かして遊んでいた、おじいちゃんは家族の都合で別の老人ホームに移ったのでいません。
・・・すると・・・Aさん?

私は退職してしまったのですが、そこの職員と話した際に聞いた話によると、次に入居された方も、お腹の調子が悪いと言われているそうです。

※画像はイメージです。

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