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サイコパスの植物は、本当にサイコパスなのか~ゴジアオイ

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ゴジアオイという植物は、自然発火によって周囲を焼き払い、自分の種子を日当たりの良い環境で育つようにする、サイコパスのような植物だという。

この文章の中に、2箇所ばかり引っかかる部分がある。
1つは、オカルト現象お馴染みの、自然発火である。

目次

自然発火とは

自然発火とは、火元からの延焼や、人間による着火がない状態で、物が燃える現象を表す。
オカルトでしばしば人体発火現象が語られるが、あれも自然発火を引き金にしていると考えられる。そうでなければ、ただの焼身自殺か事故である。
人体発火現象は今回は触れない。
問題は、植物体発火現象だ。

ゴジアオイにそんな性質があるとでも言うのだろうか?

古典的な方法で火起こしをしてみた人には分かるだろうが、点火は非常に難しい。
着火の理屈を理解し、一定の労力を使った上でなければ、火は熾らない。
一方、噴火や落雷、風により枯れ木がこすれ合う事による発火といった、自然発火は有り触れたものだ。
ならばゴジアオイが自然発火してもおかしくない――とは言えない。

自然発火に必要なもの

考えるべきは、エネルギーの量である。
噴火は既に発火点のマグマにそのまま触れるのだから、火種で火を点けるのと変わらない。

落雷は電圧が200万から10億ボルト、電流が1千から20万アンペア。これが、電気抵抗のある物質に流れれば、ジュール熱が発生する。
要するに電熱器と一緒だ。
100ボルト1アンペアで着火可能なので、一瞬の電流でも発火点に達するのは想像に難くない。

強風で枯れ木がこすれる摩擦熱というのは、僅かなエネルギーのようだが、そもそも風の力が強い。
しかも持続力があり、丸1日以上吹き続ける事もある。
発生する熱量が、発散する量より多いなら、やがて発火点に辿り着く。

これらは端的に言って、人間では到底及ばない大きなエネルギーが注ぎ込まれた上の発火である。
一方、一介の植物であるゴジアオイに、そんなエネルギーはない。
運動エネルギーで言えば、人間にすら遠く及ばない。

ゴジアオイとは

改めてゴジアオイのイメージを共有しよう。

ゴジアオイ(午時葵)とは、ハンニチバナ科ゴジアオイ属の常緑樹で、樹高は1m程の低木である。
刈り込まれたツツジ程度に考えておけば良い。
花は、アオイに似た形で、花色は淡い紅色だ。
「ゴジ(午時)」とは、正午を表し、開花の時間を表す。

原産地は、イベリア半島からフランス南部、アフリカ北西部、つまり地中海の西側の、乾燥した地域である。
「自然発火する」といわれているのは、幹から出る油脂で、揮発性であり、着火しやすい性質がある。
これが「35度に達すると自然発火する」という。

35度で燃えるという事

35度である。
体温より低い。
時々「わたし、平熱低くってぇ、34度ぐらいしかないの」とかいう人がいるが、話半分に聞いておいた方が良い。

ゴジアオイを人間がポケットに入れておくと燃え上がのか?
そんな恐ろしい物質が実在するとでも言うのだろうか?
実は、存在した。
そしてポケットに入れていたせいで、大火傷を負った事例がある。

19世紀のマッチ原料「黄燐」である。

現代はマッチ自体見なくなったかも知れないので、順を追って話そう。
ワンピースのサンジが煙草を吸う時使っていた、箱に入ったマッチが、「赤燐」のマッチである。
そして黄燐は、その前の世代のマッチに使われたものだ。着火が容易で、靴の踵などでこすっても火が点く。
それも当然のことで、黄燐の発火点は、微粉状で34度、固形で60度である。

消防法に定める「消防法危険物」において、黄燐は第三類の「自然発火性物質および禁水性物質・固体または液体」に該当する。
具体的性質としては「空気に曝されることにより自然に発火する危険性を有するもの、または水と接触して発火し、もしくは可燃性のガスを発生するもの」である。
同じ分類でよく知られたものとしてはナトリウムがある。
おいそれと、そこら辺に置いておけるような代物ではない。

この分類の中で「動植物」のワードが出て来るのは、第四類「引火性液体」の中で、「動植物油類」のみ。
これはつまり、菜種油とかラードのようなものである。

ユーカリも燃える パン屋「焼きたて名人」

ゴジアオイは危険物?

日本に存在しないから、法令に含まれないという可能性があるだろうか?
だが、ゴジアオイは決して禁輸物ではない。
検索すれば販売サイトにヒットする。
マイナーな植物という訳でもなく、ヨーロッパでは園芸品種もある。

そして、ネットをどう探しても「発火する」という情報はあっても、「発火した」という具体的な事例の情報も、公的機関の発表もない。
残念ながら自然発火説はガセネタと言わざるを得ない。

35度というのは、高いようで低い温度である。
今年は札幌でも計測された程だ。
気温が多少低くても、真夏の屋外に曝しておけば容易に到達する。
温度が最後に上がるのが空気だ。アスファルト路面を考えれば、固体がどれほど温度を吸収するか理解出来るだろう。
そこまでカジュアルに燃えるのであれば、ゴジアオイの生える地域は、夏になる度に山火事が起き、森も育たない。
そうなった時、発火性能は単に自分を燃やすだけの自爆にしかならず、繁殖のアドバンテージにならない。発火しない個体の方が、優勢になっていくだろう。

結局、ゴジアオイは、あくまで「燃えやすい」だけ、というのが結論だ。
周囲を焼き払えるように燃えやすくなっているという性質なら、コアラでお馴染みのユーカリも持っている。

みんなのあこがれサイコパス

もう1つの要素、「サイコパス」についても触れておこう。

中二病(派生系)憧れの精神病質であるが、彼らが期待するのは大体「飛影みたいなの」である。
もっと具体的に言うと、魔金太郎戦の時の戦い方と、武威と戦う直前の外見、それから表向きの言動である。

 一方、実際のサイコパスを診断する因子としては、
「口達者」
「病的な虚言」
「騙り騙す傾向/操作的」
「罪悪感の欠如」
「冷淡で共感性の秩序」
「現実的・長期的な目標の欠如」
「無責任」
などがある。
この要素の中で、子供の未来のために、周囲を燃やし尽くすというゴジアオイの伝説は、何に当たるだろうか。
「罪悪感の欠如」という一点が辛うじて当たる程度だろう。
むしろ、食うや食われるやの生存競争の自然界で、相手を日陰にして枯らすのも、燃やして消し去るのも、当然の姿勢だろう。

サイコパスを名乗るのなら、然るべき専門家の診断を受けてからにした方が良い。
さもないと、「創作的サイコパス風キャラに憧れる、なんか小中学生の頃の妄想から抜けられていない痛い人」という扱いをされるだけの事である。
結論としては、ゴジアオイをサイコパスと呼ぶのは間違っている。

サイコパスの植物が実在したなら

だがもしも、ゴジアオイが本当にサイコパス気質を持ち、自然発火能力を持つ進化した生物だとしたらどうだろう。

サイコパスなのだから、良い顔を見せて人を操る性格もある筈だ。
美しい花で自分を植えさせた後、その恩を一切省みず、燃やしてしまう。それならあり得るだろう。
そこまで知能があるなら、発火時期は当然調整出来る筈だ。
分泌物だといっても、コスプレイヤーは汗を止めるし、排尿も頑張れば我慢できる。

ゴジアオイが人間全てを魅了し、安心しきった時が、或いは発火の合図なのかも知れない。

※画像はイメージです。

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