5分前仮説というものがある。
世界は5分前に作られ、あなたはそれ以前の記憶が植え込まれただけである、という話である。
最近で分かりやすいなら、3億年ボタンでも良い。
オカルトや都市伝説でお馴染みの「本当は○○であるが、完璧に記憶が操作され気付かない」系の話は、これは実在し得る現象なのだろうか?
神の知覚
結論から言えば、実在しても意味がない。
世界が一人称でしか描写されていないというのは、各人が把握しているところだと思う。
「あなた」の感覚器を通してしか世界に接触する事は出来ない。
では、神の知覚力を持ったら、世界はどう見えるのか?
全知全能だからあらゆる電磁波が見える筈だ。陰になっただけで見えないのはおかしいから、生物はどんな部分も見えるし、見なくても知っている。一度に見ようとしたら、キュビズムの絵画のようになるかも知れない。
だが、あなたの脳はそれを処理出来ない。
当たり前だ、あなたの脳はちっぽけな感覚器を制御する程度の力しかない。
神が認知する「本当の世界」を、僅かに削り取って味わっているだけの事である。
敢えて神という言葉を使ったが、要はあなたではない誰かにとって世界は違う。結局世界を決めるのは観測でしかなく、そこに何かが介在したところで、介在した後のものが最終的な世界でしかない。
従って認知自体が操作されようがされまいが、認知された場所が現実でしかない。
そんな訳で、記憶操作に綻びがない5分前仮説にはさしたる感興が湧かないのだ。
5分前仮説の実在性についての仮説
と・・・その前提で、本当に5分前仮説が成立する場合、どうなるだろうか。
あらゆる手段でも綻びに気付けない以上、それが行えるのは全知全能の神である。
神は、あなたに記憶を吹き込むために、今までの時間の記憶を作り出す。
それを、あなたの頭に流し込む。
もう少し科学的に言うなら、それが記録された脳細胞を素粒子よりも更に小さい概念から破綻なく形成する。
その後、世界を作り始める。
タイムラグは存在しない。
全知全能だから。
世界は7日より巻きで作る。
全能だから本当は休みも時間も必要ないのだ。
一瞬もいらない。
世界がある。
これで出来上がりだ。舞台は完成し、あなたの時間は動き始める。
5分前よりも前の完璧な記憶を持ち、何の違和感もなく行動出来る。
何故違和感がないか。
全知全能の神がそう望んで作ったからだ。
さてさて。
4文字さんがクリエイトしたもの
その神は多分、自分を模して人を作った事があるタイプの存在だ。
光あれと言えば光を作れる筈だ。
別人だとしても、それが出来なければ、5分前世界にせよ、3億年の牢獄にせよ作れない。
そんな「彼」が想像し、あなたの頭に刻んだものは、果たして虚像と言って良いのだろうか。
クリーチャーとは神がクリエイトしたものを意味する言葉だ。
最初の世界を作った後に土をこねた時と、あなたの記憶を作ったのと、どこか違うだろうか。
何もないところから、さっとお手軽に7日で天地創造したのと、5分で急ぎで作ったものと、何か差があるだろうか。
手塚治虫が描いたブラックジャックと鉄腕アトム、どちらが本物だろうか?
何の違いもない。
どちらも本物に決まっている。
結局、五分前仮説を「バカらしい」と否定するのは神の天地創造を「バカらしい」と否定するのと全く同じになる。
神は、もう世界を作り直そうとしないという約束をした?
虹が証拠?
それが何の保証になると思う?
約束を破らずにもう一度天地創造が出来ないって、それ誰が言った?
出来るに決まっている。
全能なんだから。
そして彼以外には、5分前だろうが5兆年前だろうが、完璧な世界なんてものは作れっこない。
こういう循環にしかならんので、大変つまらない、説の体裁すら取っていない、オカルトにもならない詭弁の類だと思うのである。
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