地方都市にある大学に入学し、近くの高校で宿直のアルバイトをしていた時の話だ。
平日は複数人で当番だったが、休日は人手が足りず、校舎に一人で泊まることも珍しくなかった。
昼間と同じ建物で何も変わっていないのに、夜の学校は静かすぎて怖い。
しかし貧乏な学生にとって、いるだけでお金がもらえる、このバイトは天国のようなものだった。
夜の学校
蒸し暑い夏の夜、校舎を巡回てなんの異変もなかったので、宿直室で仮眠をとろうとしたときだった。
外からバシャバシャと水の音が聞こえてきた。おそらくプールからだ。
この学校はあまり程度が良くないので、プールに入り込んで泳ぐ生徒や、飲み屋街も近いので酔っ払いが侵入する事があった。事故でも起こされたら面倒な事になるので、放ってはおけない。
懐中電灯を片手に向かう途中、背後に誰かがいるような気配がして振り返るのだが誰もいない。
夜の学校ではよくある事で、気のせいだろう。慣れたつもりでも、どうしても慣れない。
気を取り直し、急いでプールのフェンスまで行くと、そこには誰もいない。
ゆらゆらとした月が水面に映っているだけだったが、たしかに音は聞いたので腑に落ちない。
人影が見えた
宿直室に戻ろうとしたときだった、校舎の窓に人の影が見えた。
おそらく酔っぱらいの侵入者だろう。
急いで校舎へ戻り、懐中電灯と窓からの月明かりだけが頼りに暗い廊下を進んでいた。
すると背丈の低い影が、曲がり角へ消えた。
酔っ払いではなく生徒だと追いかけていくと、すこし先にある教室のドアがゆっくりと閉まった。
「誰だ!」と叫んで部屋に入ると誰もいない。机が整然と並んでいるだけだ。
次の瞬間、「ヒュウヒュゥ」というかすかな呼吸音がしたと思うと、髪の長い水着を来た女の子が眼の前に立っている。
驚きながら懐中電灯の光を向けると、いなくなっていた。
気のせいだと自分に言い聞かせたが、段々と怖くなっていき宿直室に戻って鍵をかけて布団をかぶった。
深夜の見回りをする事ができなかった。
消えた生徒
翌朝、交代でやってきた用務員のおじさんに昨晩の事を報告した。
こんなバカげたことは信じないだろうと思ったが、彼は淡々と話し出す。
「昔プールで溺れて亡くなった生徒がおってな。夏の夜になると、たまに化けて出て自分の教室に帰るんだよ。」
どうやら、この学校で夜の宿直をする人は必ず体験するらしい。
用務員のおじさんも見たことがあり、恐ろしいから宿直はせずにバイトに任せているそうだ。
それから一週間ぐらいして、私と一緒の時期に始めたバイト仲間が辞める事になった。
理由を聞くと、彼は震える声でこう言った。
「夜中、びしょ濡れの女の子が笑いながら、消えていったんだ」
僕も辞める事にした。
※画像はイメージです。


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