学生時代というのは妙なもので、金もないのに夜中のドライブだけはやたらとしたくなる。
目的地はてきとう、ガソリンもギリギリ、それでも「なんとかなる」で走り出してしまう。
これは、そんな無計画な深夜ドライブの最中に体験した、ちょっと怖い話です。
深夜0時のドライブ
深夜0時過ぎ、突然思い立って、遊びに来た友人とボロボロの中古セダンで出発しました。
学生だった私たち、バイト暮らしのため、とにかく金がありません。
ガソリンメーターもかなり危ない位置を指しています。
「エンプティ点いてるけど大丈夫なのかこれ」
「まだ走るって。たぶん」
適当な会話をしながら、冗談を交わしながらの楽しいドライブ。
今思えば、若かったんでしょう。
事故も故障も、自分たちには関係ないと思っていました。
街灯の少ない道を延々と走り続け、気づけば周囲は森ばかり。
当時は、今のように便利なスマホもカーナビもなく、地図の本も載せてないので、全くどこにいるか解りません。
ある意味、危機的な状況なのにテンションが上がりまくって、妙に楽しい。
でも、22時を回る頃には疲れが出てきて、どこか車を停めて一休みできる場所を探し始めました。
そんな時です。
「なんか白い看板あるぞ」
助手席の友人が前方を指差すと、ヘッドライトの先に看板が見えます。
施設か、公園か、とにかく駐車できる場所があると思い、私たちは脇道へ入りました。
ですが、しばらく進んだ先は行き止まりでした。
「うわ、ハズレかよ」
「しゃーない、戻るべ」
問題は、異様に狭い道で不慣れなバック運転に加え、ボロい車であったため、まっすぐ後ろに進むのが至難の業。
そして案の定、左後輪が道路脇の溝に落ちました。
行き止まりの先にあったもの
「やっちまったよ」
車体は斜めに傾き、タイヤが空転します。
「おい、あれ見てみ!」
仕方なく車を降りてみると、暗闇の先に見えたのは墓地。
しかも平地に並んだ墓地のタイプではなく、山の急斜面に無数の墓石が段々状に並んでいたのです。
突然叫ぶ友人の声を聞いた瞬間、金縛りのような戦慄が走りました。
その直後、急に身体の左側だけが下へ引っ張られるような感覚に襲われました。
足元が崩れるような感覚で、実際には立っているのに、身体だけが斜面へ落ちていく。
重力の向きがおかしくなったような、不快な感覚です。
息が詰まり、声が出ません。
耳鳴りがして、視界もぼやけ始めます。
一方で友人は、そんな私をよそに必死で車を動かしています。前進、バック、前進と繰り返し、側溝から抜け出そうとしているのですが、タイヤが空転する音だけが、暗い山道に響いています。
まるで何かに引きずり込まれるような、それこそ「幽霊」か何かに引っ張られているような、あまりに恐ろしい感覚です。
本気で「ここにいたらまずい」と感じるのですが、恐怖で体は言うことを効かないので車を押すことできない。
もう駄目だ・・・そう感じた時です。
「うごいたぞー!」
私はその声で我に返り、慌てて車へ飛び乗り、逃げるようにその場を離れました。
それから
車内ではほとんど会話もありません。
とにかく早く、あの山道から出たかったんです。
そして、しばらく走った先で、私は思わず声を上げました。
「え?」
道路の入口に、バリケードが立っていたのです。
工事現場で見るような、ごく普通の封鎖用バリケードでした。
「いや、待て待て、こんなのあったか?」
もし最初から置かれていたなら、あの道には入れなかったはずです。
ですが、その時の私たちは確認しに戻る勇気もありませんでした。
そのまま無言で山を下り、街の明かりが見えた時には、2人ともようやく息を吐いていました。
あの時、なにが起きたのか、結局、今でも分かりません。
今でも解りませんが、学生時代の無計画なドライブのそのツケとしては、なかなか後味の悪い体験でした。
人間、若いうちは「自分だけは大丈夫」と思い込みますからね。
その手の慢心を潰すにはちょうどいい体験だと、説教じみて締めくくります。
※画像はイメージです。


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