遺体保存、エンバーミングの動機と葬送との関わり

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以前各宗教の葬送についてまとめた際に少しだけ目にした『エンバーミング』。
日本ではまだ浸透途中の技術が各国含め求められる場面や効果を整理しつつ、各宗教がどのように扱い関わってきたかを仮説を立てて見ていく。

目次

エンバーミングとは

エンバーミングとは遺体に防腐処理を行うことで長期間の保存を可能とする技術である。日本では「遺体衛生保全」と呼ばれる。

遺体の見目を整える作業として「湯灌」や「エンゼルケア」があるが、それらとエンバーミングの明確な違いは、遺体の消毒後に小さい穴を開け管を通し、動脈から防腐剤を注入・静脈から血液を抜く、という遺体の腐敗に対する科学的処置の有無が大きいだろう。
人の遺体は環境にもよるが死後3日を経るとガスによる膨張などの現象が顕著になり始め10日辺りには腐敗による外見の変化が著しくなる。
そこでエンバーミングを施すと50日程は保存が可能となる。

エンバーミングを施す動機

エンバーミングを施す目的は『遺体の長期保存』ひいては『死後も長期間生前に近い姿を保つ』ことにあるが、それらを施す動機、すなわち「なぜ遺体を保存するのか」は時代や国、宗教など様々な背景が影響している。

偉人の遺体の保存

生前に偉業を成し遂げた偉人や政治指導者の遺体を展示保存するためにエンバーミング処置をするパターン。
一定の周期で処置を施すことで半永久的に遺体を保存でき、レーニンの他様々な著名人がエンバーミングされているが、中には処置に必要な予算や技術的な問題で断念したケースもある。

宗教的観点

海外に多い動機。
もっと詳しく記すと「死者の復活」の概念がある、土葬が主流である宗教が根付く国や地方ではエンバーミングは一般的に行われている。というのも、人間の身体は死後腐敗と共に人体に悪影響を及ぼす細菌や病原体が繁殖し悪臭や有害物質が発生する。

その状態の遺体をそのまま地中に埋葬すれば、公衆衛生的にも無論良くない。加えてアメリカなど国土の広い場所では遺体を葬儀場所へ輸送する場合日数がかかる。
現代では火葬を認めるとする宗教もあるが、『死者の復活といった宗教の教え』と『参列者・土壌の衛生面の安全』双方を守る手立てとして国でエンバーミングを義務付けしている所もある。

遺族のケア

上記の宗教的観点と比べ、火葬が主流で死後葬儀まであまり時間を空けない現代日本でエンバーミングが浸透した動機。1988年導入初期より処置を請け負う施設も増え1994年IFSA(一般社団法人日本遺体衛生保全協会)設立、2021年には年内件数は初期の約300倍の60,000件近くとなった。

「海外など葬儀を執り行う場所から遠い地方で亡くなり長時間の搬送が必要になった」「震災などで火葬を行う施設が不足した」など葬儀を行うまでに期間が空き腐敗が進む可能性がある場合。そして長期間の闘病・投薬による影響や不慮の事故で遺体の見目が著しく損壊してしまった場合などに、遺体を生前の状態へ修復・或いは保存するエンバーミング処置が行われる。

これは上記の『参列者・土壌の衛生面の安全』もあるが、一番は「損壊した遺体を見た遺族がこれ以上心を痛めないように」という遺族のメンタルケアを含めた配慮である。

エンバーミングと葬送の在り方

エンバーミングの今後の課題点としてよく「費用面」「公的な資格が整備されていない」に並び「遺体にメスを入れる必要がある」が挙げられる。

筆者はエンバーミングを調べる前、遺体の保存や科学的処置に対し『死者の尊厳』といった観点から各宗教からどのような印象を持たれているのだろうと思っていた。
死者の復活の概念があり遺体を傷つけるのに特に抵抗が強そうなキリスト教圏などでは忌避されているのではという仮説だったが、実際は土葬が主流な国ほど義務化や整備が進んでおり、他の各宗教や葬送にも必要とされていることがわかった。

遺体の腐敗は必ず起きる、ならばそれに対処しつつ宗教の教えに背くことなく弔われるための措置として、むしろエンバーミングは受け入れられ今後も望まれる技術で在り続けるだろう。

現在の日本ではエンバーミングの公的資格が未整備のため、処置はアメリカなど州資格を持つ外国人によって行われる事が多い。
エンバーミングを行う者…エンバーマーには医学に加え解剖学や公衆衛生学など専門知識が必要で養成の場を整えつつある段階だが、国内で故人・遺族共に安らかな気持ちで葬送の儀を行うためのエンバーミングが一般化する日もそう遠くないかもしれない。

※画像はイメージです。

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