座敷わらしに思うこと

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岩手県の妖怪といえば、やはり座敷わらしでしょう。
妖怪というと恐ろしい存在を連想しがちですが、座敷わらしは少し毛色が異なります。

見た者に幸運が訪れる、家が繁栄する、去ると没落する。
そんな言い伝えが広がり、今では会ってみたい妖怪の代表格となっています。

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座敷童の存在

座敷わらしの正体については諸説ありますが、幼くして亡くなった子どもの面影が、その姿に重ねられたとする説があります。
東北地方では、寒冷な気候や飢饉に加え、貧困による口減らしが行われたとされる時代もあり、多くの子どもたちが幼くして命を落としました。
そうした親たちの悲しみや罪悪感が、座敷わらしの伝承を生み出した一因ではないかと思っています。

ただ、座敷わらしを単純に亡くなった子どもの霊とするのも違う気がします。
伝承を見ていると、家に居着けば繁栄をもたらす一方で、突然いなくなることもある。貧乏だから残るとも限らず、裕福にらなったから去るとは限らない。
共通しているのは、去ってしまった後には、まるで何かが抜け落ちたように家運が傾いていく。
人間には理解できない判断基準で行動しているとしか言えません。

昔の人々は、座敷わらしを可愛い子どもの妖怪としてだけではなく、機嫌を損ねてはいけない存在として扱っていたのでしょう。子どもが喜びそうなお菓子や玩具を置き、座敷を整え、家に留まってもらおうとする。
そこには信仰というより、この家にいてくださいと、異形の存在への接待に近い感覚があります。
むしろ祟り神に近い性格が強く、人間側が都合よく扱える存在ではありません。

緑風荘の火災と座敷わらし

かなり昔になりますが、私は座敷わらしで有名な旅館「緑風荘」に泊まったことがあります。
当時から、座敷わらしが出る宿として有名でしたが半信半疑でした。
旅館の方に「座敷わらしはどこに出るんですか」と尋ねると、「この部屋のちょうどそこだよ」と、私が座っていた辺りだと聞かされて驚いた記憶があります。
多少はリップサービスもあったのかもしれませんが、雰囲気は十分にありました。

旅館では座敷わらしを見た人の他に、足音や笑い声が聞こえたり、おもちゃが勝手に動いたりと間接的な現象として体験される方がいます。そうした人は、後になにかしらの幸運が訪れたと言われています。
私も少しくらいは何か起きるのではないかと期待していたのですが、足音も気配もなく、拍子抜けするほど静かな夜でした。もちろんですが、その後もなにもありません。

むしろ驚いたのが、2009年、緑風荘は火災によって焼失してしまった事です。
電気のトラブルが原因で老朽化した木造建築に火災が起きた、それだけの話ですが、私はそうは思えないのです。

緑風荘は座敷わらしによって有名になり、多くの客が訪れ、宿は繁盛しました。
感じ方の問題ではありますが、私が宿泊した時の旅館の人の態度もぶっきらぼうだったように思えることから、天狗になったのではないか?
今までなにかの理由があった我慢していたのでしょうが、座敷わらしを祀る祠まで建てて土地へ縛り付けようとした結果、ついに嫌気が差して出ていってしまった。
そんな気がしてならないのです。

馬鹿げていると言えばそれまでですが、私が考えている「祟り神説」が妙に筋が通っているように思えます。

怖くないのに畏れられる存在

考えてみれば、日本の神や妖怪は昔からそういう存在でした。
利益を与えてくれるから信仰するのではなく、何を考えているかわからない力を持った存在だからこそ畏れ、祀る。
座敷わらしもまた、そういったモノなのでしょう。

現代では「幸運を呼ぶ妖怪」として紹介されることが増えましたが、本来の座敷わらしはもっと曖昧で、不気味な存在だったはずです。子どもの姿をしているのに、人間の価値観では動かない。
昨日まで家にいたのに突然消える。理由もわからないまま家が傾き没落する。
そんな理不尽さこそ、むしろ妖怪らしい性質なのかもしれません。

結局のところ、座敷わらしが本当に存在するのかはわかりません。
ただ、東北で、幼くして亡くなった子どもたちへの思いや、家を守り続けてほしいという願いが積み重なった結果として、あの妖怪が生まれたのだとすれば、単なる作り話とも言い切れない気がします。

私が泊まった時、座敷わらしは最後まで姿を見せてはくれませんでした。
どうやら私は、あまり気に入られなかったのですが、人間の都合で現れてくれるほど、あれは親切な存在ではないのでしょう。

※画像はイメージです。

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