河口湖の宿で体験した怪

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数年前、社員旅行で河口湖にある宿へ泊まった時の話です。
その宿は、会社の上役たちが酒を飲んで騒ぐことを優先して選んだような場所でした。
特別な高級旅館というわけでもなく、かといってビジネスホテルでもありません。何とも中途半端な印象の宿で、よくこんな場所を見つけてきたと思ったほどです。
おそらく宿泊費の安さが決め手だったのでしょう。
ただ、部屋から見える富士山だけは見事で、それだけはよく覚えています。

夕食の宴会では、酒が入った上司たちに散々付き合わされ、ようやく解放された私たちは、同室だった同期の4人で部屋へ戻り、愚痴を言い合いながら飲み直していました。

旅行中ということもあって酒はかなり進み、気付けば全員かなり酔ってしまい、深夜まで騒いでいた記憶はありますが、その後のことはほとんど覚えていません。
私は布団に入るなり眠ってしまい、朝まで一度も目を覚ましませんでした。

目次

夜中の出来事

異変を知ったのは翌朝でした。
目を覚ました私が見ると、同室だった3人の様子がどこかおかしいのです。
最初は飲み過ぎて具合でも悪いのだろうと思いました。しかし、そうではありませんでした。

理由を聞いてみると、夜中に妙なものを見たというのです。
話によると、誰かが部屋の前の廊下を何度も走り回っていたそうです。
最初は酔った宿泊客が騒いでいるだけだと思っていたものの、足音は何度も行き来し、しばらくして静かになったといいます。
そして、そのうちの一人が何気なく窓の外を見ると、庭に白いも変な何かが走っているのを見たそうです。

その話を聞いた私は驚きました。
私は朝までぐっすり眠っていて、そんな足音にも人影にも全く気付かなかったからです。

最初は酒のせいではないかとも思いました。
もし一人だけの話なら、酔った勢いの与太話だと思うでしょうが、その場にいた3人ともが、誰かが部屋の外を走り回り、最後は庭の方へ消えていったと話をするのです。
それで全員、気味が悪くなってしまい、ほとんど眠れなかったそうです。

話を聞いた途端、私まで妙に気味悪く感じられました。

思わぬ結末

朝食会場で、顔色の悪い社長が「昨夜は迷惑をかけて申し訳なかった」と周囲に頭を下げて回っていました。
後から聞いた話では、その社長は酒に酔った勢いで真っ裸になり、夜中に宿の庭を走り回っていたそうです。
さすがに放っておくわけにもいかなかったらしく、気付いた他の役員たちが慌てて追い掛け、取り押さえるような騒ぎになっていたのだとか。

その話を聞いた瞬間、私たちは顔を見合わせました。
昨夜、同室の3人が聞いたという足音。庭へ向かって走り去ったという正体不明の存在。
それが酔った社長だったと考えれば、すべて説明がつきます。
正直なところ、少し安心したというか、呆れたというか、何とも言えない気分になりました。
ところが、考えれば考えるほど腑に落ちない点もあります。

私たちの部屋は3階にあり、宴会場は1階でした。建物の構造からしても、部屋と宴会場は微妙に離れています。
酔った勢いだったとしても、わざわざ私たちの部屋の前まで来て走り回るものでしょうか?
しかも、3人の話では廊下を走る足音が聞こえた直後、窓の外に白いものが見えたといいます。
もしそれが社長だったのなら、いったいどれほどの速度で移動したことになるのでしょう?

さらに不思議なのは、その足音を聞いたのがどうやら私たちの部屋だけだったことです。
少なくとも後で聞いた限りでは、他の部屋から同じような話は出ませんでした。

ただ、もし足音の正体が幽霊だったとしても、真っ裸で庭園を全力疾走する還暦過ぎた社長以上に衝撃的な存在だったとは思えません。

※画像はイメージです。

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