敵機を模して味方機を徹底的に打ちのめす、それがアグレッサー部隊の役目です。
そしてアグレッサーとはなにか?
アグレッサー部隊の誕生
ミサイル万能論が横行し、ミサイルに頼り過ぎた戦術を採用していた米軍航空部隊の最新鋭機F4ファントムがベトナム戦争で北ベトナムのミグに予想外の苦戦をします。
つまり接近戦である空中戦で被撃墜件数が増えたのです。
当時のミサイルはまだ性能的に未熟で命中率が低く、レーダー誘導ミサイルでは発射してから命中するまで敵機を追尾する必要があったり、赤外線誘導ミサイルでは先ず敵機の背後の回り込むためにドッグファイトと同じ運動が不可欠でした。
結局は空中格闘戦を強いられることになった米軍パイロットは、しかし朝鮮戦争のベテランパイロットの退役とミサイル万能論によるパイロット人員の削減政策が重なって質量共に貧しくなっており、それが原因で実戦配備後の出撃3~5回までに撃墜される率が高くなっていました。
それなら実戦投入以前にその出撃回数分の空中戦を経験させればよい・・・と創設されたのがアグレッサー部隊でした。
従ってアグレッサー部隊はミグの性能や空戦技法などを研究修得し、それを使った実戦さながらの厳しい空中戦訓練で徹底的に味方を打ちのめすことで、自軍パイロットを鍛え上げることを任務としました。
飛行教導群
航空自衛隊のアグレッサー部隊は、飛行教導群の名で誕生しました。
それまで空自の戦技競技会では、空中曳航標的への射撃による命中率でパイロットの優劣を判定していましたが、1971年空自初のACM(空中戦闘機動)競技会が行われました。
この競技会では、空中戦途中の燃料切れや帰投中の空戦領域内で警戒不足による被撃墜など、単純な油断が問題として浮き彫りになります。
それは実戦では油断がそのまま死に直結するという現実感の希薄さでした。
負ければ死ぬという空戦の現実感を実弾を使わずにどう再現するのかが教導群の悩みでした。
基地パイロットに現実感と真剣さを持たせるために、教導群は模擬空戦で完膚なきまでに彼らを叩きのめします。
空自の中でもエリート中のエリートである戦闘機パイロットの誇りを泥まみれにし、その反骨心を煽りました。
ある時には負けたパイロットの自家用車を取り上げて勝手に乗り回すようなことまでしました。
惨めさを突き付けられたパイロット
自尊心を粉砕され敗者の惨めさを突き付けられたパイロットたちは、教導隊への恐れと共に、だからこそ湧き上がる憎しみともいえるほどの敵愾心を湧き上がらせます。
そこに実戦に、より近い真剣さが生まれるのを教導群は目指したのです。
しかし現在の教導群では指導方法も進化しました。
その目的は、任務を達成し「無事生還」できるパイロットを育成することで、そのためには周辺国や国内諸状況を考慮に入れた上での空自戦闘機としての戦い方と、それを可能とする、より高度で幅広い空技の指導が行われています。
そして指導のコツは、相手パイロットより少し強い敵役になることで、能力差が甚だしいと逆に指導効果が小さくなるとしています。
勝過ぎないでしかも確実に明確に勝つという難しい勝ち方に、教導群パイロットの技量の高さを見ることができます。
参照:
ブルーインパルス 武田頼政 著
最強の猛者たち livedoor NEWS
eyecatch source:WikiImagesによるPixabayからの画像
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